ロートル作家は街道を歩く
人間打ち解けるというのは大事なことですよね?
ロートル作家は街道を歩く
明けて翌日の街道までもそこから先も、外は晴天だった。
天気が良いのは正直助かる。一見すると雨具がない様に見えるが、
やはりこれもどこかにあるのだろうか…。
そういえば、元の世界でインドア派の俺としては、
まぁよくも歩いているよと思うところもある。
しかも、どちらかというと、体を動かしたり、歩いたりしていることが
楽しく感じている。恐らくその理由のひとつとしては、
この世界に着てから、まだ筋肉痛らしい筋肉痛は、
味わっていないというのも、あるんだろうな。
昔の俺ならば、とっくの昔にギブしてただろう。
そう考える、と流石は転移系主人公の体だね。全く恐れ入ったものだ。
『閉!』
俺の言葉で、テントは形を変えていく。テントはいつの間にか、
また、小さな置物の様になっている。
しかしすごいものだ…俺の世界でコレが販売されたら、
一騒動だろうな…。
「あぁ、おはようナガラ、昨日は良く寝れたかい?」
「一郎さん、七郎さんおはようございます」
「あ…」
「ははは、おはよう」
七郎の方は相変わらずだが、一郎の方は、
そろそろ絆の一つも結べているんじゃなかろうかと、
思う程には話せるようになってきたな。
保存食で朝食を簡単に取り、次の野営地まで歩き出す。
昨日の場所から夕方近くになるともう街道を歩いていた。
街道は広く、若干だが整備もされている。
俺ら意外にも利用している人達がいて、人の行き交もある。
「大分歩いている人が増えてきましたね…」
「そうだね、このあたりはもう街道だからね、僕らが向かっているのは、
ハナサカの都の方なのだけど、中には森に抜けるルートに行く為に、
ここから向かう人もいるからね」
「そうなんですか…」
どうやらここから森へ向かうルートもあるらしい。
森には何しに行くんだろうな…薬草か?狩か?
相変わらず七郎は話には参加してこない。
静かに汗をかきながら、黙って重い背負い袋を担いで歩いている。
「そういえば一郎さん?」
「ん?どうしたのかな?ナガラ」
「あぁ…いや、その…七郎さん、暑くないのかな?っと想いまして…」
「ん?あぁ…そうか、心配してくれているのかい?ありがとうね」
「あ、いえ…話せないほどにきついのなら、
休憩した方がいいのかな…と思いまして」
「ありがとう、でも七郎は大丈夫だよ。これも修行みたいなものだからね。
そのうち七郎は一人でこの世界を歩いていかなければならないからさ」
「へぇそうなんですか…一人でってこの国には魔物とか獣とかでないんですか?」
「魔物?まぁ魔物は勇者様のおかげで、出なくなったと聞いてるから、
大丈夫だろうけどね、獣の方はたまにだけど出ることもあるかな」
じゃぁ危ないんじゃ?といっていると、後ろから声が聞こえてくる。
「獣なんか問題ない…私一人で倒せるから…」
あぁ、一人称は私なのか七郎は。
「ほら本人もそう言っているから大丈夫だろうさ」
「問題ない」
七郎はもう一度そういうとまた無言のまま歩くようになる。
俺はとりあえず、七郎が話したのを聞いて、少しだけ近づけたか?と
思い、そのあとは一郎と話をして、次の野営地まで向かって行った。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』39話になります。
よろしくお願いします。
では次回でまた…。
米




