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ロートル作家は旅立つ

旅は道連れ世は情けなどといいますねぇ…。

ようやく旅に出れました。

さてどうなっていくのでしょうかねぇ…。

 ロートル作家は旅立つ






 奥の部屋から二人が出てくる。



「先程の件はよろしく頼みますの」

「はい、たしかに…それでは…。七郎!我々はいつもの小屋に行くぞ!」

「あい…」



 側にいた七郎は一郎に呼ばれたあとすぐに側へと行き

 、屋敷の入り口においてあった、あの馬鹿でかい荷物を背負う。


 一郎はオージに一礼すると、七郎を連れて屋敷の外へ出て行こうとする。

 その途中で俺を見かけると、少し足を止め声をかけてきた。



「あぁ…君がナガラくんだね。ここを出るのは2日後くらいになるので、

 またそのときにね。ちゃんと準備をしておいた方がいいからね。

 わかったかな?」



 一郎は恐らくオージに俺のことを頼まれたのだろう。


 一応、背格好から察するに、一郎は20を越えているように見える。

 だからだろうか、俺を少し年下の子として扱ったのは、

 まぁ当然といえば当然だろうな。



「お手数かけます…」



 俺はしっかりと頭を深く下げる。

 その様子を見て、一郎への印象が良くなったのか、

 ニコッと微笑んだ後、すぐに七郎とともに屋敷の外へと出て行った。



「あと二日かの…まぁそうしたら、色々準備もせねばの…」



 オージはそういうと、奥に戻り、何かの準備を始めだす。



「ナガラ…もうすぐなのね…」

「あぁ…短い間だったけど、ありがとう…な」

「そんなことないからね!?」



 礼を言われるようなことはしていない、むしろ命の恩人なのだから、

 足りないくらいだと、俺の言葉に慌ててユーリは大きく首を振る。



「いよいよか…そうか…」



 そこからの二日間は非常に早かった。

 あとでオージに聞いたのだが、いつもの小屋とは、

 行商人が一時的に店を出したり、寝泊りをする場所らしい。


 村長の家に泊まらないのは、彼らの商人としての線引きらしい。

 旅立つ前の数日は、一応、俺としては気になるところもあったので、

 何度か顔は出しておいた。

 最初の印象のよさも手伝ったのか、一郎とは幾分か打ち解けたが、

 七郎とはあまり進展しなかったな。


 オージの用意とは昔使っていたらしい、背負い袋。

 背負い袋の中には、日用品(タオルだの石鹸だのそういった類、

 新品の着替えなども入れてくれていた。)や保存食が入っている。

 他に、皮の胸当てや、マントなども用意してくれていた。

 色などからも恐らく昔オージが使っていたものなのだろうな。

 結構年季が入っているように見えるから。


「まぁコレで当座は大丈夫じゃろ…」

「オージさんありがとうございます」


「ふん、ハナの町まではまだしばらくある。

 お前の足にあわせたら、恐らく3日はかかろう…。

 行商人の皆さんは基本足で歩くことをもっとうとしておるからな、

 馬などもないが、お前がいなければもっと早く目的地へいけるだろうの。

 しかし、恐らくそこはあわせてくれるだろうからの。

 まぁ、世界を観てくるが良いわ。

 旅が落ち着いたら、またこの村に顔出すんじゃぞ…

 ふん!ライズくらいいくらでも食わせてやるからの!」


 オージのデレとでもいうのだろうか…顔は正面向いて話してはいなかったが、

 存分に気を使ってくれたようだ…ありがたい。

 最初はこのマッチョジジーはなんだ?!

 と思っていたが、蓋を開ければ結局オージもいい人だったわけだよな…。



「ありがとうございます!また必ず来ますのでそのときはよろしくお願いします」

「ふん!はよ行け!」


 オージに再度深く頭を下げたあと村の外れまで向かった。

 途中、イルクとエルクが俺のことを勇者様みたいだとか言っていたので、

 ちょっと照れくさくはあった。


 行商人と一郎と七郎、それに旅人の二人と俺を見送ってくれる。

 意外に多い見送りだな…。


 あ、この間猫を助けてあげた子や、腰が辛そうだった老人も…。

 それにアーズもいるな…。よくよく見れば俺がこの村で人助けした、

 された皆が結構集まってくれていた。

 なんか見送りすごいな…こういうのって、やっぱりありがたいのだろうな…。



「ナガラ…またね!私待ってるからね!約束忘れないでね!」

「お兄ちゃん…またお話聞かせてね!」

「聞かせてね!」



 ユーリとイルクとエルルが、俺の手をそれぞれ握って、別れを惜しんでくれる。

 ユーリは少し目が潤んでいる気もするな。

 本当申し訳ない…終わったら一回は絶対に寄るからさ…ごめんな…。



「おう!坊主!これ途中で皆で食えな…」

「アーズさんありがとう!」

 オグニルをいつものように一袋くれる。



「はは、ナガラさんは人気者ですね、自分たちの見送りの時より

 人が多いですよー」



 一郎の言葉は決して嫌味な感じはなく、純粋に俺がこの村で、

 どういう風に過ごしていたのか、どういう扱いをされていたのかを、

 評価してくれているのだろう。



「いいかい?七郎…。村や町を僕らが出るときはこうやって、

 惜んでもらえなければならないよ…。こうやって惜しんでもらえるくらい、

 僕らという存在を、しっかりと立ち寄った場所で、

 認めてもらうんだ…わかったな?」


「あい…わかった」



 一郎と七郎が何やら話をしていたようだ。

 村を出て暫くすると、 見送るひとたちのがたも見えなくなり、

 俺は一郎と七郎、そして旅人の二人とで、 

 雨の降る気配もない、綺麗な青空の下を、

 まずは街道へ向かって歩いていくことなるのであった…。



いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』37話です。

今日は本当危なかった…明日もちゃんと更新できるといいのですが…。

ではまた次回で会いましょう。



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