ロートル作家は行商人を迎え入れる
行商人の登場です。
そしてあと少しでナガラは新たな町へと旅立ちます。
ロートル作家は行商人を迎え入れる
明日という日がやってきた…。
毎朝のラジオ体操をやり、朝食を食べ、
ユーリやイルクやエルルと楽しく話をする。
話の内容は取りとめのない話をしている。
やれこの間の子猫がどうだとか、草むらでバッタを見つけたとか、
この間のあかずきんの続きは無いのか?とか…。
良い関係なのだなとふと思う。
正直言えば、互いに昨日の話の事などもあり、
すっきりわだかまらず、話せているかといわれると、
少々難しい部分はある。
それでも三人が気を使ってくれているのだろうな…、
と思うとどうしたものだかな…。
とくにイルクとエルルがなるべくニコニコしてくれているのは、
なんかこう、すまない!と本気で思う。
ステータスのことなんかもあるのだが、
正直言って今はこの三人との絆を深めることは、
意味のあるものだと、打算を抜きで思っている。
昼ごろになると、村の街道側のほうが騒がしくなる。
街道側で見張りをしている、若いケモノミミ族の子が、
オージのところにやってくる。
あ、はじめてケモノミミ族の人見たな…。
犬っぽい感じの子だな…。
「オージ様!行商人たちがやってきました」
「今回の人数は?」
「行商人が二人、旅人が二人です」
「む?今回は少ないの…」
「今回は少人数で移動をしているとのことです」
「そうか…わかった!では、迎えに行くとするかのぉ…」
ん?行商人くらいのもので、村長自ら出向くのか?
そういうものなのか?
それとも何か特別な意味などもあるのだろうか…。
村の端、街道側の方まで一緒についていく。
見張り小屋の側、村の出口には、白い布を頭に巻いて、
体の三倍はありそうな、大きな背負いかばんを持っている、
背の高いそれほど筋肉質には見えない男性。
もう一人は、フードを目深に被って、同じく自分の三倍くらいはありそうな、
体はあまり大きくない者のようだ。
旅人の方は、皮系の装備とマントを着けている、
RPGとかでよく見るような、冒険者風の男女が居た。
男の方は髪の毛は短く筋骨隆々で戦士なのだろうか…。
女の方は金色の長い髪の毛、特徴的な細工の施されたサーくレットをつけた、
多分アレだな…レンジャーとか狩人みたいなイメージだ。
「おぉ…ようこそ、一郎様、ハジメ村へ…」
「これはどうもオージ村長!今回も農作物ですとか、少し、
買わせていただきますね」
「どうぞどうぞ今年は豊作ですからのぉ」
「税の分を抜いても問題ないということですね…それはなによりですね」
様付け?偉い奴なのか?判断に困るな…。
それと、一郎といわれた、男の後ろで小さくなっている奴は誰なんだ?
俺の視線に気づいたのか、オージがそちらを見て、オージも気になったのだろう。
一郎へ質問をしてくれた。
「ところで、一郎様?本日はずいぶん少ない人数で、
皆様どうかなされたのかの?あと、そちらの方は見かけたことがありませんが?」
「あぁ、今回はちと意味が違う旅でね。この子の練習も兼ねているんだよ」
「この子…といいますと?」
「ほら、七郎、挨拶をするんだ!これからはお前一人で、
ここに来る可能性だってあるんだからな」
「あ…七郎…だ…よろしく頼む…」
「こら七郎!そんなことでは一人前の…」
「いやいや…一郎様、気になさらんで下さい。別に礼などこの村では、
無用ですからのぉ」
「いや…しかし…。あぁ、そうそう…こちらの二人は、都で雇いました旅人です」
二人が無言で頭を下げる。
「ほう…旅人ですか…最近では珍しいですな…。
遠路はるばるこんな辺鄙なところへようこそですのぉ。
何も無いところですが、滞在の間はゆっくりしてくだされ…」
オージが笑みを浮かべているのだが、
正直言って、あぁこれ意外に怖いな…という感想だ。
オージは俺のイメージでは、笑わないなと思ってたが、
笑わない方がいいかもしれない。
違った意味で、子供が泣きそうだ…。
七郎といわれた子は、背も小さく体の出来具合は、
着ているローブのような服のせいでよくわからないが
年齢的なところで言えば、正直今の俺とたいして変わらない気がするんだがな…。
一瞬七郎と目が会った気がしたので、軽く手を振ってみたが、
さっと目を伏せられて、隠れられてしまった…。
なんだ?シャイボーイなのか?
まぁそのうち機会もあるだろう、何せ俺はこの人たちについて、
次の町へ行くのだから。
オージが言うにはそういうことらしい。
その後、一通りの挨拶を簡単に済ませ、
立ち話もなんだ…ということで、みんなでオージの屋敷へと行くことになった…。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』35話です。
いよいよ外へ向かうまでカウントダウンです。
どうか次回もよろしくお願いします。
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