ロートル作家はユーリとの絆を確かめる
人と人の絆…。幼い頃は逆に純粋にそれを信じている部分がありましたが、
大人になるにつれ打算や裏を読むようになってきた気がします。
それを大人になったとは言いたくはないのですが、無駄な抵抗かもしれませんね。
ロートル作家はユーリとの絆を確かめる
たいした時間じゃない…。
出会ってからまだ数週間すら経っていない。
出会いは非常に印象的ではあったが、恋愛対象として見れるのか?
と言われれば、正直答えはNOに近い。
俺の実年齢はなにせ、40才だ…。
それからみたらお子様にしか見えない年齢なのだから、仕方ない。
あの化け物みたいな村長の孫というカードは、何をおいても評価に値する。
だから、別にこの村を去る、先へ進むとなった時も、
まぁそうだろうな…利を考えたらな…くらいのつもりだった。
ところが実際はどうだろう…。
この世界…いや、もしかしたらこの村だけかも知れないが、
ここに居る人たちは、今、この条件下では少なくとも、温かく優しかった。
俺たちの世界では稀に近いレアパターンばかりだ。
俺の中にある人間像というのは、大概にして悪よりとしか思えていないからな。
人の優しさなんて裏の在るもので、ここはそれからみたら、
優しさ大バーゲンで裏がない。なんとも奇妙な感覚だなぁ…。
勇者もこんな感じだったのだろうか…。
ここは、ここ数日わずかしか居ないはずなのに、
本当に離れがたい気持ちにさせる。
目の端に出したステータス画面。
絆システム、先日見たときは既に、ユーリは70だった。
じゃあ今は?はい、85でした。状態は運命の人:85だ。
今、俺の横でトキメキ全開、寂しさ倍速の顔でユーリは、じっと黙っている。
俺が何か言うのを待っているそんな感じだ。大分時間が経った気がした。
「あぁ…そのなんだな…もうすぐ俺はここを出ることになるんだ」
「うん」
「俺は旅人でちょっとやることがあって、ここへきたんだよ」
「うん」
「だから、アレだな…」
「うん」
これを言ってどうなるんだろうな…。
ただ何だかこのまま、この子の顔がこのままは気分が良くない。
きっとそれだけだと思うが…。
「またここには必ず戻ってくるよ…
イルクもエルルも待っていると言っていたし、
ユーリも待っていてくれるんだろ?」
「あ…うん!」
「じゃあ、ちゃんと帰ってくるよ…約束する」
「本当?」
「あれ?信用できないと?」
「え?いや…でも、もしかしたらってことも…」
「じゃあ仕方ないな、指切りするか…」
「指切り?」
「あぁ、知らないのか…こうやってね、小指と小指を絡めて…」
「え?ひゃぁ…」
「いくぞ?俺が今から言うことを一緒に言ってね」
「指きりげんまん」
「ゆびきりげんまん」
「嘘ついたら」
「嘘ついたら」
「はりせんぼんのーます」
「はりせんぼんのーます…って、えぇぇぇ!!」
「指切った!」
指きりの途中での内容に驚くユーリ。
流石に針千本どころか、一本だってダメだと真面目に、
受け答えをしているのが面白かったが、
まぁ、字面で言えばそうだよな。
「そうだよ、だから約束は破れないんだよ?」
「だからって…」
「ははは、安心しただろ?コレでいくらなんでも約束破るとは思えないだろ?」
俺が楽しげに笑っているのを見て、困ったような嬉しいような、
複雑な表情のユーリ。
今の窓からこの世界の月が見える。
この世界も俺の世界と世界としてはたいして変わらない。
目に見える文明レベルだってそう変わらない。
電気はないが魔法のようなものはある。
むしろそちらの方がわかりやすいのかもしれない。
取り留めなくそんなことを考えていたら、ユーリが少し眠そうだ。
まぁいいか…今はそうだな…部屋に戻ることにしようか。
「ユーリ…そろそろいい時間だから、続きはまた明日だね」
「あ…うん…おやすみナガラ」
「あぁ…おやすみユーリ」
それじゃぁと二階の踊場で別れ、俺たちはそれぞれの部屋へと戻っていった。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』33話です。
次回を過ぎると少し外へ出て行くようになります。
ではまた次回でお会いしましょう。
米




