ロートル作家は両脇を拘束される
昔、宇宙人が両脇を抱えられて、連れ行かれる番組を見たことがあります。小さい宇宙人を、
大きな外国の男性が連れて行く。宇宙人はあのときどんな気分だったのだろうなと、
ふと、思ったりもします。
ロートル作家は両脇を拘束される
夕飯の後、エルルとイルクに捕まる。
席を立って、部屋か風呂にでもと思っていたら、左右から同時に腕をつかまれた。
「ナガラのお兄ちゃん…イルクにお話聞かせて?」
「エルルも聞きたいー」
掴むというより、ややぶら下るに近い。両脇に子供一人分ずつ重さが増える。
「お、おう…。いいけど、そうだな…お風呂入ってからでもいいかい?」
実際の所、今日は色々あって疲れてるし、風呂でも入ってすっきりしたい。
「お風呂のあと?うーん…どうする?」
「どうしよっか…」
二人は腕を組んで考えている…多分そういう仕草なのだろうな。
うん、しかし可愛いね。
子供というのは本当に無邪気で、行動の予測がつかず、
こうやって、狙っているのか居ないのかは知らないが、本当に可愛いものだ。
もちろん、中にはこまっしゃくれた子供居るので、それ限りではないのだけどね。
「うん、お風呂から上がったら、あまり長くは無理だろうけど、
何かお話しをしよう、それでいいかな?」
「うんわかったーイルクも一緒に入るー」
「あー!ずるい!エルルも入る!」
ん…?どうしてそうなった?本当に予測がつかない。
二人は両脇からぐっと力を入れて、俺の方を見ている。
いや…でも、どうなんだ?小さい子だし構わないのか?
様子を探るために、そっとメイリさんを見てみる。
メイリさんは気づいてくれたのか、こちらを見てにこっと笑う。
「あらあら、二人とも…?そんなにナガラさんとお風呂に入りたいの?」
「「はいりたいー!!」」
元気にお返事できたねぇー。いい返事だ。
「…ということですので、ナガラさん、よいかしら?」
「あ、はい…」
どうやらOKらしい。
まぁ5歳と4歳だからないいんだがな別に…。
でもこちらの世界じゃ事案になる可能性あるからな…念には念をだろ。
結果的に、俺の、ゆっくりお風呂はどうやら、難しくなったようだ。
、まぁそれならそれでな…後数日居れるか分からないしな。
この二人はユーリの次に今のところ、絆が高いからな。
あ…、ユーリがこっちを見ている…。いやいやさすがに、無理ですよ?
オージに殺されますよ?主に俺がね…。
とりあえずユーリには、にこっと微笑んでおいた。
「「おっふろ、おっふろーおっふーろー」」
二人は自作のお風呂の歌を歌いだす。
本当に嬉しそうだな…まぁ、喜んでもらえるならいいか。
それならいっそ風呂で温まりながら短い話をしてみるか。
一階の奥、オージの部屋よりは手前だが、お風呂場はある。
さぁ行くぞ!という段階でも、やはり俺は二人に両脇を固められていた。
「「お風呂いこー!!」
元気良く出発新興を合図するイルク、それに合わせるようにエルルも、
大きな声で言う。
「もう、二人とも…ナガラに迷惑かけちゃだめよ!」
「「メイワクカケマセンー」」
「ははは…」
スイッチの入った二人を諌めるように、ユーリが言うが、
二人はまるでどこ吹く風、急に片言っぽくなって、変顔などしている。
「ははは、ユーリ、俺は大丈夫だからさ」
「なら…いいんだけど…いっそ私も…」
おっと、危ない!先に牽制しておくか…。
「ははは、さすがにユーリも一緒にというわけには行かないけど、
出てきたら、俺の故郷に伝わる話をしてあげるよ」
「それは…無理なのは…。え?ナガラの故郷のはなし?うん、是非聞かせて!」
おうっ、食い気味だな…。
「お姉ちゃんはお留守番ですーエルルはナガラのお兄ちゃんとお風呂イッテキマスゥ」
「イルクもイッテキマスゥゥゥ」
ん?だから何で片言っぽいんだ?
「もう!二人とも!」
「「あはっ、ニゲロー」」
ユーリはちょっとイラッとしたのか、少し声を大きくして二人を叱るが、
二人をは俺を捕まえたまま、急いで走り出したので、
結果的に、俺も少し急ぐようになり、お風呂場へと向かった。
いつもご覧になって頂き、ありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』29話です。
よろしくお願いします。
では次回で…。
米




