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ロートル作家は怒られる

作家と担当…それは譲れないもののために激しい戦いを繰り返す。

しかしそれも互いの作品への愛のため…。

でもね…怒った担当さんは誰だって怖いんですよ…。

 ロートル作家は怒られる






「長良先生!!できてますか?できてますよね?できてます?書いて?」






 うん…無茶言ってるから、最後は命令形になっているな。


  長良と言うのは、超売れっ子作家時のペンネームだ。


 正確には『長良☆一』で、ナガラ・ホシカズと読む。





 うん…ちょっと、恥ずかしい…。





「聞こえてますか?聞こえてます?聞いてくれます?」




  鬼担当、25歳独身女性。『雛方 舞』は、完全に目を三角にした状態で、

 一歩一歩近づいてくる。


  肩の辺りでそろえてある黒髪はキューティクルをやや失い。

 目の下に大きな隈、化粧などする気もない。いや、する余裕などない。

 今まさに目の前にいる、うら若き乙女は阿修羅のようにたたずんでいる。




「ああ…雛方さん…今日はまた一段と…ワ、ワイルドだネェ…。

 ところで…その鍵はどうやって入手…したの…か、な?」




  薄く笑いを浮かべて、少し目をそらしつつも、良くない汗が大量に出て、

 阿修羅から目を離せない。春先の風が吹いただけにもかかわらず少し身震いする。




「えぇ…おかげさまで? 化粧も?お風呂も?睡眠も?ココのところ良く取れてませんからね! 

 あ、鍵?この間、合鍵を作っておきました。(ニコッ)

 先生、すぐ篭城されるので寝ている間にこっそりと…ね?」






「ああ…そりゃたいへんだねぇ…っ! て、それ許可とって?!」






「ウフフフ…先生? 何も無ければ、こんな『モノ』要りませんでしたよ?

 まあね?いいんですよ? 真面目にもうちょっと…? 作品を挙げてくれさえすればね!

 なにせあの! 超売れっ子の!長良☆一先生の!作品ですからね!それさえできれば、えぇ!!」



 ああこれは怖い、完全に怖いものを呼んでしまった。

 …さ○ことか○こを足して二乗したくらいには怖い…。


 どうやら俺はいつの間にかホラー回に紛れ込んだらしい。

 ところで…これどうやったら冥府に還ってくれるんでしょうかね!




「いやぁ…後ね?ちょっとなんだよ? 本当にね?後ちょっと…。

『最後のココ』ねココがね、埋まればできる…はず…」




  ここ数日、何とか形にし、『最後の一文』を入れるだけで完成する。


  実は…そこまでは…挙がっている。

 

 この『最後の一文』が曲者で、作品の全てを決めてしまう一言。

 だからこそ…安易に書けないでいる。



「どれどれ…? おぉ、確かに珍しく最後の手前まで書いてはありますね…。

 でもですね、出来ていなければ、意味は無いんですよ。完成こそが全てです」



  虚ろで有りながらも綺麗に、スッパリ唐竹が割れるが如く、切ってくるなぁ…。

  まぁ、彼女が最初来たときは、目の中に星がキラキラとしていたように見えたものなぁ…。



『私…その…先生の大ファンなんです!』 と…。



  あの頃は、もう限界を感じ初めていた頃だから…。

 現在進行形で、言われたときは、一瞬、目頭が…。



  まぁ、今は違う意味で涙がこぼれそうだけどね!



「この最後の数行が大事なんだよ…分かって…くれる?」



 実に、毎回の事なのだが、若かりし頃には息を吸う様に、簡単に書けた





『最後の数行』





  これこそが目下俺の悩みなのだ!



  最悪、途中まで書いた作品を自分で没にさせてしまうこともある。



 本当に悩ましい…。



「な?! 本当なんだよ(ニコリ) あと一言! 『最後の言葉』!

 これさえ出れば、物語は完成するんだよ!」


「じゃあ書いて? とっとと書いてくれますか?書け!ほら書け!!」



 若干、媚を売るように言ってみたのだが…阿修羅と化した雛方担当には通じなかった。

 その上に、振り出しに戻された…。



「おっしゃるのは簡単ですが書くのは、本当大変なんですよ?」


「ウフフ…いいから書いて?書けますよね?書いて…私に温かいお風呂に入る時間をください!!」




 担当の本音駄々漏れかよ!?




 目の下の隈が、今にも溶けて体を這いずり回りそうなほど色濃くなっている。

 雛方担当は、その最後の数行の部分に右手の人差し指をトントンと叩いて指し示す。



「もうちょっとね?時間を頂戴?ください?イヤホントマジデ!!」




 プライド?そんな子は知りませんね。




 思いきって、日本文化の最終奥義『DO☆GE☆ZA』を、オミマイする。




「…仕方ありませんね…後3時間…!で、上げてください!なら…なんとかします…」




 あぁ、マジなんだネェ…。

 もぅ…本当に…時間が無いんだネェ…。




 かくして、俺は残り3時間の猶予を、全力で後少しで完成させる為、

 ビビリまくった脳細胞にムチを入れるように作業机に向かった。




 3時間後、絶叫することも知らずに…。




一話だけではさすがに物足りないですよね?と、思ったので念の為、二話目も投下しました。


誤字脱字、感想などありましたら是非お願いします。あ、あと評価も是非頂ければ幸いです。


一応、週間ペースくらいで書ければいいなぁ…と、思っています。(既に日刊ペースですが…)

ゆっくりではありますが、是非お付き合い頂ければ幸いです。(どこまで続くかは不明)


かなり修正や追加が入りました。


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