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ロートル作家は行商人の話を聞く

一つの所に長く居るもよし、新しい風に吹かれるのもよし…。

世界は広く無限に広がっているものです。

  ロートル作家は行商人の話を聞く






 草が風にそよいでいる…。

 うーん…狐か何かに化かされたようなそんな感覚だな…。


 ただ、先ほどまでのことが嘘や幻でないことは、

 脇に抱えている本が物語っている。




『空想術のススメ 入門編』




 俺の技能にある空想術…。

 コレがどれほどのメジャーなものなのか、実際に気にはなっていた…。

 万が一にでも、下手な見せ方でもして、魔女狩りにでもあったら最悪だからだ。

 ユーリとであったときのアレ、本当気づかれてなくって良かった。


 人は知らないことを恐れずに、知らないモノを恐れる。

 己と同じでないモノをただひたすらに恐れる。

 人っていうのは、そんなイキモノだと俺は知っている。

 ずいぶん昔のことが今更になって浮かんできたので、

 もう一度、意識の奥へ沈める。


 うん…少しセンチになった…多少の反省くらいならしてもいいかもしれないな。

 とはいえだ…もう一度、その場所を見る。

 ドルシーは居ない…あの家もいない…今はただの小さな空き地になっている。

 思ったよりも茂っている草が、やはり何も言わないで風に揺れている。


 どうにもスッパリいかない…。

 ふむ…なるほど…多少なりとも心に、ダメージを受けているのかもしれないな。

 この世界で無い、どこかの世界…ややもすれば、

 それは、同郷の人間であったかも知れないのだからな…。

 まぁ、いいや…取り合えず戻るとするか…この村の村長の屋敷まで。


 来た道を、あの時と同じように、ただ戻るだけ。

 アーズの見張り小屋の側を通る。

 顔を出していたアーズに、軽く挨拶をしたら、またオグニルをくれた。

 ほいっと、投げてよこしたので、慌ててキャッチすると、妙に嬉しそうだった。

 アーズは基本的に子供を構いたい派なのだろうな。

 俺の元の世界でそんなことしたら、防犯ブザーで脅されるぞ…。

 本当に、異世界で良かったなアーズ。


 さて…本当にどうしたものか…。

 俺は戻る途中で色々考えていた。


 恐らく、もうここには基本的には用はないはずだ。

 もちろん、絆を作るという点では、大事な拠点なんだが…。


 ただ、その気になれば、恐らく何度もここには来れる気がする。

 だからとはいえ、すぐに出るにはまだ情報が足りないんだよな。


 この先を行けば、次の村か町があるくらいしか分からない。

 それが、ここからどのくらいの距離なのかも、まだ聞いていないからな。


 とりあえず、ジジーことオージにでも聞いてみるかな。

 村長だしこの辺りの事も含めて詳しいだろうしな…。


 屋敷に着くと馬小屋の前辺りでエルルとイルクが遊んでいた。

 何をしているかはわからないが、何かの、ごっこ遊びのように見える。


「「あ、ナガラのお兄ちゃん」」


 二人が仲良くハモる。本当に仲の良い二人だな。


「ただいま、イルク、エルル」

「「おかえりなさーい」」


 この二人を見ていると何だかほっこりとして、いい気分になる。

 ついでに、ジジーに会った後にでも、

 二人が何の遊びをしていたのか、聞いてみるかな。


 屋敷の玄関を抜け、奥にいるオージの部屋へと思っていると、

 丁度いいタイミングでオージがムキムキの体に、

 半纏のようなものを着て、出てくる。




「あ、おーじさん、少々聞きたいことがありまして…」

「ん?なんじゃナガラさんか…ん?あぁ、そろそろというところかの?」


「え?…えぇ…そろそろ次の村か町へと考えてます」

「まぁそうじゃろうな…まぁ、そうしたら、後二日ほど待てばよい」

「二日経つと何かが?」


「うむ…行商人たちが来るからの、それと一緒に出ればよかろう?

 あやつらは、到着してから数日経つと、また、ハナサカに戻るからの。

 まぁ…それまでは、孫たちのこともあるしな…、

 ゆっくりしていればよかろう?」



 コレは渡りに船…ありがたい!

 オージの話しだと、どうも行商人たちが数ヶ月に一回、数人で来て、

 ライズや他の食料品を手に入れると、また首都ハナサカへ戻っていくらしい。

 それで、オージの口利きで、一番近い所にでも、

 連れて行ってもらえ、ということらしい。

 最後のは、恐らく…、ちゃんと行くなら行くで、

 三人にはちゃんと言いなさいよ、 ということなのだろうな。



「ありがとうございます」



 俺は頭を下げて、しっかりとお礼を言う。



「別にお前のためだけというわけではないからの…」



 オージはそういうと、また、屋敷の奥へと戻っていった。


 厳しい部分の多い老人だが、村長には村長たる気の使い方があるということだろうか。ありがたいものだ…。

 とりあえず、ジジーと心の中で呼ぶことは、今後止めよう。


 あと数日か…どうやって三人に言えばいいだろうな…。


いつもご覧になって頂きありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』27話です。

いよいよ外へ出るときが来ました。この後、ナガラはいったいどうなるのでしょう。

では…また次回で会いましょう。


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