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ロートル作家は人助けをする~チックルとミィ~

人助けというのは巡り巡って、自分へと還って来るものだと思っています。

小さいことからコツコツと積み重ねていけば、きっと大輪の花を咲かすんじゃないでしょうか。

 ロートル作家は人助けをする~チックルとミィ~






 アーズに荷物を無事に届けたことを伝えると、

 お駄賃代わりということで、リンゴのようなものを一袋もらった。



「はいよ、コレは駄賃代わりな。皆で仲良くだぞ!」

「「はーい、アーズさん、ありがとうー」」



 エルルとイルクが元気良くお返事だ。

 どうやらオグニルの実というものらしい。

 聞いたところによると味も大凡リンゴと同じらしい。


 もちろん俺もユーリもちゃんとお礼は言った。

 アーズは子供好きらしく、二人のことも、自分子供と同じように、

 大事にしてくれるとユーリが言っていた。


 アーズと別れ、村の真ん中を通る道をゆっくり歩いていく。

 途中にある井戸で、話をしている女性たちに、俺のことで何やら、

 ユーリがからかわれたようだ。


「あら、ユーリちゃん!その子はボーイフレンドかい?」

「え…あ、いや、そうじゃないのそうじゃないの…」

「あらあら、満更じゃないようじゃないか」

「男は胃袋よ、ユーリちゃん」

「もう!みんなして!」

「お姉さまたち、あまりユーリさんを困らせないで上げてくださいね」


「「「「あーら、お姉様だなんて、お上手な子ねー」」」」


「ははは、では失礼します」


 ユーリが散々からかわれて、こちらに助け舟を求めているようだったので、

 途中で入って、お姉様方へ軽く微笑みながら、先へ急ぐようにする。


 コレも娯楽なのだろうな…。

 そういえばユーリとの絆はその後どうなっているのだろうか…。

 後で見てみるかな。


 井戸を越えて村の真ん中から先へ行くと、若干畑や水田も増えてくる。

 結構、背の高い木などもあって、のどかさをよりいっそう引き立てている。

 老後は、こういうところで、暮らしたいものだな…。

 そういえば、老後の暮らしに関しては、一番いいのは都会だとか言っていたな。

 福祉的な意味で正直都会の方が良いとか、言う話だが。

 まぁ足腰立たなくなってから、不便な生活してもな。

 難しい所だよな…。


 そんなことを考えていると、結構大きめな木の下で、

 何やら子供たちが集まって、木の上の方を見ている所に出る。



「おや?アレはどうしたのだろう?」



 俺が不思議そうに見て言ると、その中に見知った顔でもあったのか、

 イルクが俺の手を離して、木に向かって走っていく。



「あっ!イルク!?走ったら危ないわよ!」



 ユーリが慌てて、イルクの後をついて走っていく。


 俺は残ったエルルと顔を見合わせて、とりあえず一緒に、

 手を繋いだまま、木の方へと向っていくことにした。



 俺とエルルが、到着すると、子供たちの中にいた黒髪の、

 イルクと同じくらいの年の子が、イルクと話をしていた。



「あのねイルくん、ミィちゃんが木の上から、

 降りてコレなくなっちゃったの…」

「えぇ?! チックルちゃん、ミィちゃんは大丈夫?」



 ユーリがチックルの話を聞いて、上を見ながら驚いている。


 結構大きな木だな…上の方に家とか造れるんじゃないか?


 どうやら愛猫のミィが、木に登ったのはいいが、

 降りてこれなくなったらしい。


 なるほどコレが今回のミッションか…。

 ピコーンという電子音が聞こえかと思ったら、ミッションが発動した。




『ミッション、子猫のミィを救え!!』




 ほらな…?思った通りだよ。


 予想は地図を見て咲きに、十分に出来ていたので、

 とりあえず子猫のいる辺りを探す。


 ああ…居た居た…。

 結構上に上っちゃってるな。


 確かにここに居る子供たちでは、あそこまでは、

 なかなか難しいだろうな。

 今の俺になら出来ないことはないだろう…なんとなくいけそうな気もしている。


 技能で言えば、登攀とかになるんだろうかね?

 まぁ、持っていないけどいけるだろうさ。


 俺のステータスから考えれば、難しいこともないのではないだろしな。

 とりあえず今にも泣き出しそうな、チックルに声をかけることにする。



「チックルちゃん、はじめまして。俺はナガラだよ、よろしくね。

 さて、チックルちゃんの助けたいのは、あの子かな?」



 ミィちゃんがいる辺りを指で示す。



「うん、ミィちゃんが困ってるの…」



 チックルちゃんもそりゃ困ってるよな。

 確かに地図上の、今、居る部分に、困った顔が出ている。

 しかも二つね。



「お兄ちゃん、ミィちゃん助けてくれる?」

「できるかわからないけど、やってはみるよ」



 俺はチックルちゃんの頭をポンポンと撫でて、まずは状況の確認と、

 どうやったら助けられそうか考える。結果いくつか案が出る。



 1、木を登って助ける。

 2、こちらから呼びかけて、こっちまできてもらう

 3、空想術でこちらまで持ってきてしまう。



 2は意味がないな…まず却下としよう。

 3は、最後の手段だな。いくらなんでも人が多すぎる。

 この世界の空想術がまだ、どのくらいメジャーなのか分からない。


 だから、いまここで短絡的に選択するのは危険だ。

 ということは…1ということになるかな…。


 昔も含めて、木登りなんてまともにしたことないだがな…。

 よっこらっせっと…。


 とりあえず、足をかけられそうなところを探して、ゆっくり登っていく。

 幹をぐっと掴み、わずかしかない足場へ置く。

 置いた足へ壊さない程度に、力を込めていく。


「お、意外にいけそうだな」

「ナガラ…大丈夫?落ちないでよね」


 ユーリが心配そうにしている。イルクやエルルは応援をしてくれているようだ。

 まぁ、子供にとってはすごいことだろうしな。

 それにしても、この二人の応援は、ちょっと元気が出るから不思議だ。

 身長に登ること数分ようやく、太い枝が分かれる地点までたどり着く。

 さて問題はこの先…子猫の居るのは大分、枝の細くなり始めている部分だ。

 普通に考えたら折れたり、落ちたり猫じゃないからね、十分危ないところだしな。


 じっくりと…刺激しないように…それこそなんだったら、

『もてます』でこちらを気に入ってくれるといいんだがな…。


 少しずつだが、子猫の近づく俺に、子供達は、

 手に汗を握って応援をしている。


 でこぼこした太い幹から、少しずつ少しずつ、上へと登る。

 ゆっくり…ゆっくり…。

 お、ミィちゃんが見えてきたぞ。


「ミィちゃん、おいでー。下でチックルちゃんも待ってるよ」


 ミィちゃんはこっちに気づいて、ミャーミャーと鳴いている。


「よしよし、おいでーそうそうゆっくりね…ゆーっくり」


 ミィちゃんが、ゆっくりゆっくりとこっちへ寄ってくる。

 よしよし、いいぞ…っとミィちゃんを見ていると、


 不意に電子音が鳴った。




<ピコーン>




『子猫のミィと絆を結びますか?Y/N』




 おっと…絆システムか…。

 このままでも捕まえられそうだが、今のところ、数少ない絆だからな…。

 折角だし、まぁ結んでおくことにしようか。




『イエスだ…』




『子猫のミィと絆を結びました』





「ミャア~」




 いい反応をしてミィちゃんは鳴く。

 そして、俺の方によってきて頭をスリスリとしてくる。

 おお、良い反応だな。



「よしよし…いい子だいい子だ」



 静かになったミィちゃんを、俺の懐に入れて、ゆっくりと木を降りていく。

 降りてくる俺を見て子供たちが、大歓声を上はじめる。



 数分後…。



「ただいま」

「ナガラ!おかえりなさい、大丈夫だった?ケガしていない?」

「「なさいー大丈夫?」」

「兄ちゃんスゲー!!」



 無事に下まで降りた、俺はユーリとイルクとエルル、

 それに他の子供たちにも勇者のように、歓声で迎えられた。


 すぐに、泣きそうだった、チックルちゃんのそばに行き、

 懐から、すっかり懐いてしまっているミィちゃんを、

 チックルちゃんへ返しておく。



「お兄ちゃんありがとう!ミィちゃん良かったね…うぅぅ」


 あぁ、結局泣かせてしまったかな…?

 まぁ嬉しくて安心して泣いている様だから、問題ないだろう。


 それが証拠に、さっきまで困った顔のマークだったものが、

 いつの間にか消えてニコッとした顔のマークになっている。


 おや?そういやアーズの居たところにも同じようなマークが、

 ついているな…。


 ちょっとチェックしてみるか?


 ニコっとした顔のマークを意識で、タップして…っと…。




<ピコーン>




 電子音がまたする…そして、頭の中に、お礼の声が聞こえてきた。



『ありがとうな!』

『お兄ちゃんありがとう!』



 見えなかった空欄にまた何か文字が出てきた。






『ありがとうの気持ち:ハジメの村:参 』






 これか…女神様の言っていた、感謝の気持ちって奴は…。

 なるほどな…コレを集めろということか…。


 まぁ…なんだ…。

 人助けすればなんだか、こう、気持ちもいいしな…。


 絆もあるし、ありがとうの数も貯めないといけないしな。


 俺はなんだかちょっといい気持ちになって、

 普段の自分と少し違うなぁと…言い訳しつつ、皆のお礼をかみ締めていた…。









いつもご覧になって頂きまして、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』23話でございます。

何とか毎日更新出来ているようで、自分を褒めてやりたいです。


感想、評価、誤字脱字、色々是非よろしくお願いします。

また次回で会いましょう



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