ロートル作家は更に編集+追記をする
書けば書くほど増える描写…可能な限り減らしたいが、もったいない。
担当と話をしていると、いつの間にか、そんな常態にいつの間にかなるものです。
それが担当と作家の関係ではないかな…そうであって欲しいものですね。
ロートル作家は更に編集+追記をする
「うおおおおお! 何か出来たあああ!」
俺の大声に後ろの可愛い子がビクッとする。
もう一回、こけている大猪を見ると、また、あの入力画面が出てくる。
【突然、大猪は、目の前にあった大きな石に躓き、盛大にこけた。
だいぶ足にきている。もしかしたら、足が折れたのではないだろうか。
ついてない。しかし、ここで諦めてはいけない!この舐めたガキに、
山のオキテを……】
おいおいおいおい、まだやる気満々かよ……。
なんかいい方法はないのか…?
出来れば殺すのは避けたいんだよな。
もしかしたら、こちらのほうが悪い者なのかもしれないのだから。
さてもう一回、今度は少し急いで書かなければ。
テキスト入力画面でまたもや点滅しているのは、先ほどのボタンだ。
無機質な女性の声が聞こえて編集ボタンが出る。
『編集しますか? YES/NO』
「だからYESだ! YES!」
背景が変化し文章が点滅する。
『残り時間30秒』
思ったよりも秒数が多いじゃないか! イケるか? イケとけよ…。
慌ててテキスト画面を読むと手を加えていく。
時間は短い早くしなければ…。
『大猪は、痛む足を引きずり、最後の特攻をかける。
しかし、それは無念にも、突然のアクシデントにより、避けられた。
そして、無念にも自ら大きな木にぶつかり、気絶することとなった…』
急げ急げ急げ! どうだ? どうだどうだ!!
ギリギリで書き終わりか? 字が汚くならないのはたいしたものだな。
『完了ボタン』を押す。
イケるか? イケるだろ? 殺してないし、趣旨はあってるよな?
頼むぜ神様、担当様……。あ、いま担当様の怖い顔が浮かんだ…おいおいおい!
没になるなよ…?! マジだマジでだ! …頼むぞ!
『文章の改変を許可します』
「よおおおおおっしゃあああああああ!」
「なに叫んでるの?! 怖くてちょっと変になったの??
そんなことしてる場合じゃないでしょ、
ほら早くあなたもこっちにこないと!」
可愛い女の子は、こちらを見て心配そうに叫ぶ。
どうやら、彼女に聞こえたのは、最後に上げた、俺の雄叫びだけだったようだ…。
自分を助けた相手が、死にでもしたら目も当てられない…。
そんな気持ちからだろうか、彼女は必死に叫ぶ。
何か失礼な物言いも混ざってたが、今はそんな時ではない。
今がチャンス! 今がチャンスゥだ! だが、おっさんとして、残念な子のように、
心配されるだけはダメだ!
美学が許さない。安心しろ乙女よ……おっさんは、今やれる気で一杯だ!
そんな彼女に大人として、サムズアップした状態で、
大丈夫だから安心して、と微笑みかける。
ふふふ……俺はいま猛烈に燃えているぞ。
「え? いや笑ってる?? だめ? だめなの?
やっぱりダメ?! 死を覚悟してるの??」
おや? なんだか意味が通じてないような……。
あまつさえ、なんか彼女の中で、俺は可愛そうな人になっている気がする。
天に召されそうな少年と、パ○ラッシュのような…。
そんな状態のようだが…まあいい。
誤解もすぐに解けるだろう。
問題なーし!
可愛い女の子が叫び、俺が少し余裕を取り戻した中。
大猪は、最後の力を振り絞り、精一杯に山の掟を教えようと、
俺に全力で向かってくる。
傍目には、もう、ダメな状態にしか見えないだろう…。
しかし、どういうわけだろうか、横から突然吹く強い風で、砂埃が舞う。
予定されていたかのように、大猪の目に砂埃が入るアクシデントが!
急に前が見えなくなった大猪は、目標が定まらずに、
進路を大きく変えた!
まるで…そこに向かうことは、初めから決まっていたかの如く。
最後は吸い込まれるように、その場所へと突っ込んでいく。
<ドゴオォォォォォ!!>
山に偶然! 生えていた大木! (大猪の巨体に耐えうる)に、
周辺を揺らす程の音でぶつかって、大猪は、見事に目を回すこととなった。
「あ、危なかった……。だが、完璧だ。完璧じゃないか」
完璧に自分の書いた通りに、(若干何かの補正があった気もするが…)実行された。
可愛い女の子は無傷、俺も無傷、大猪は気絶!
役目を終えたのだろうか…先ほどまで出ていたテキスト入力画面も消えている。
まさに完了したわけだ。
「勝った…」
俺は、大猪と俺たち(可愛い女の子含む)が出会い戦うこととなった、
この世界の小さいが、ひとつの物語を編集して追記し結果を変えた。
ようは、この世界の一部を改変した。
これが空想術か?これが技能なのか?!
そしてこれが、神器の能力か。なるほど……こりゃあヘビーだわ。
先ほどまで感じていた、焦りや震えが止まった。
だが、違う意味で今は震えている。恐怖を超える未知なる能力。
何だか分からないどころじゃない。ある意味すごいぞ、この神器。
ブラボオォだよ明智君!! 本当にな、って……それ誰だよ!
「あのぉ……あなた、大丈夫?」
一人ぼけ突っ込みを、自分の世界で展開していると、結構近づいてきていたようだ。
そして、目の前の少し残念な人へ心配するように声をかけてくるのであった。
いつも皆様読んで下さり、ありがとうございます。『ロートル作家とおとぎの異世界』12話目です。
ようやく書きたかった、異色バトル風景が書けました。
作家には作家の戦い方がるあるものなのですよ…。(フッ…)
まだまだこのペースが維持できるといいのですが、さてどうなるのでしょうか…(思うのは自由)
次回もぜひここでまたお会いしましょう…。
誤字脱字、感想は感想欄へ是非! この下にある評価もドウカ是非!
どうか、『ロートル作家とおとぎの異世界』のランクイン(入りたいと思うのは無謀?)に
清き一票をお願いします。
※
6/15
本文の訂正追加しました。




