ロートル作家は首都ハナサカに到着する 1
ロートル作家は首都ハナサカに到着する 1
「よし、到着っと……」
どこぞの国境を越えた時に旅人たちがやるようなジャンプをして、俺はハナサカの街の入口に入った。
入口といったのは、ここは首都だけあって警備がうるさい。入口に入るための入り口、検問の場所になる。流石首都、今までの紙装甲みたいな警備じゃないってわけなのだろう。
ただ長い……かなりの行列だよこれ。
このままいくと夕方になったりしないだろうなぁ……。
だいぶ長い列の後ろにいる俺は軽くため息をついて列を眺めている。
※
結構長い時間がかかった。ここでいろ色聞かれたりするのも、返事を返すのもとても面倒だったので、いつものアレで、通行時の身分証の提示を空想術で書き換えておいた。大丈夫チョット書き加えただけ。オレワルイコトシナイ!
『この者の身分には一切の問題はなし』
必死に買いたさそりゃまだまだ、書き加える時間はそんなに増えてないからね……。
なにせ女神さまからのメールにも添付アイテムにも身分証はなかったからね。あとでちゃんと言っておかないとな。その前にメール読めよって怒られそうだ……まぁ……これでいいんだろうさ。うん。
「楽しい旅を~」
「へーい」
優しい門番のおっさんに見送られて俺は検問所をあとにする。手なんか軽く振っちゃって実にフレンドリー。オレワルイコトシテイナイ。
これを持ってようやく俺は首都『ハナサカ』へ本当の意味で到着をしたわけだ。
※
外から見たハナサカは元の世界の花見で有名な広い公園を思い出させた。ピンク色の花びらがたまに吹かれる風に揺れ、時折花びらを散らす。この桜の様な木はどうやら勇者の置き土産らしい。枯れることもなく、どれだけ花びらが散ろうとも、その花びらはなくならない。そんな異次元的な桜。
勇者の旅のすべてが終わった時、勇者はポチに一本のサクラの枝を与えて、これを植えて綺麗なサクラを咲かせてねと言ったらしい。その言葉を忠実に忠犬ポチは大事大事に何代にもわたって育ててサクラを増やしたらしい。
ポチが一生懸命増やしたのは勇者に言われたということもあったし、そのサクラが沢山咲くころになったらきっと勇者が戻ってきてくれると思っていたらしい。
まぁ結局勇者は帰ってきてないけどね。でも忠犬ポチらしいと言えるお話だなぁとは思う。ちなみにこの話は、この国では非常にポピュラーな話でよく聞かされる話らしい。
らしいといのはさっき並んでいるときに親子が話しているのを聞いたからなんだけどね。
※
厳重な警備(笑)な検問を突破した俺は、街の入り口で屋台を見つけて、どの屋台に行こうか悩んでいる……わけだが。
焼き肉? 串肉? 焼く系多いな。おかしみたいのはないんだな。流行んないのか?
「うーん」
「うーん」
腕くんで悩む。
とりあえず串焼き(何かの肉)の屋台に行く。
おっちゃんがこっちをみて声をかけてくる。
「お、あんちゃん、どうしたい? 買ってくれるんかい? 一本銅線1枚な」
腕毛の結構すごいガタイの良いおっさんが、景気よく大きな声でにやって笑いながら声をかけてくる。
焼く作業は疎かにしないままなところは流石だな。
んー一本100円か……まぁいいか、金ならたくさんあるしな。俺の懐は死ぬほど潤っている。メールと共にまるでダメな男に貢ぐように毎回この世界の通貨を入れてくれる。あのダメ……いや女神さまのおかげだが。
「あぁ、じゃあ3本ちょうだい」
「お、3本か! いいねぇ食い盛り、育ち盛りってやつかい? いいぜ直ぐ焼いてやるからな。ところでだそこの奴の分はどうすんだい? さっきの注文に含まれているのかい?」
「ん? そこの?」
「そこの?」
ほれそこの奴だよ、とおっさんが目で俺の横にいつの間にかいた子供を指してくる。
「ん?!」
「ぐぅううう」
そちらを向いたらちょっと汚れた感じの犬系の子供が首を傾けてよだれを垂らしながら立っていた。なおこちらへの返事は腹の音のようだ。
「お前誰?」
「え? ポチ……??」
「お、おう……なぜ疑問形よ」
よだれを垂らしながらポチと名乗るそれは、期待に満ちたまなざしで俺を、いや串焼き(何かの肉)を見ているようだ。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』108話になります。
随分ぶりのお久しぶりです。面倒な病にかかり執筆できませんでしたが、
ようやくなんとか書けるようになりました。
せめてこのシリーズはもうちょっと切りのいいところまで書きたい。
そんなことを考えていました。っというわけで再開です。
無理のないペースなので前のようには書けませんが、何卒宜しくお願いいたします。
ではまた次回で……。




