ロートル作家は深夜遅くにちょっとした演出をする 1
ようやく涼しくなりました……。
ロートル作家は深夜遅くにちょっとした演出をする 1
草木も眠るなんとやら、夜の遅く遅くの深夜に俺はその部屋で静かに、
みんなが来るのを待っていた。
一回森の小屋に戻り風呂に入り、泉に映る自分の困った顔を眺め、
旅立つための荷物の整理をして、その場に臨んでいた。
俺には何でも入る超便利なボックスがあるので、荷物運びには何も困らなようになっている。今も結局旅の服装に、肩掛けのバックだけだからね。
深夜のひとさまの部屋、それも大事に大事に鍵を閉められていた部屋。時々誰かが掃除でもしているのだろう。部屋の中は彼女がいた時と同じままにしてあった。
案外少女趣味な部分もあったんだな……。
俺が心の中で部屋を見た感想を素直に述べる。
きっと恐らく今側にいるが姿を見せていないであろう、この部屋の主である、
その彼女は苦笑しているに違いない。
もしこのまま彼らが来なかったらまぁそれはそれだ。俺はそこまで考えなきゃいけないわけじゃない。タイミング、針が合うそれはそんな言葉でそれをよく言っていた。今このタイミングに居れなければ見れるものも見れず、手に入るべきものもはいらない。『間』というやつなのだ。彼らには十分その『間』を計るだけのだけの材料は上げたのだからね。
部屋の中で突っ立っているのはなんだか疲れるので、勢いで椅子とか作ってみた。
空想術は便利だ。久々に本物のほうを使ってみたが、木材は俺の編集を受けて、世界からはしっかりと受け入れられていた。座り心地も結構よい。ついでにこれから来るであろう、人数分椅子を作りそこに並べて置いておく。
自分用の椅子に座ってこれからの事を思案していると、後ろのほうから声が聞こえてきた。
「ねぇ……キミ……彼らは来ると思うかい?」
少年のような少女のようなその声はこの部屋の主であり、今回の主役の『ヨシノ』の声だ。病弱な身でありながら恋をして子供産んで、家族に看取られながらこの世を去った。去った当時は流石にここまで幼かったはずはないのだが、どうも女神様から頼まれたお使いをうまくやるためだかで、子供のころの姿にされている。
「どうだろうな……タイミングと針が合うなら、こんな絶好の機会を逃す人下はいないと思うけどね……」
俺は声のする方に向いて答える。そこにはうっすらと姿を見せているヨシノが居た。
「まぁ、なんだ……女神様にでも祈ったらどうだ? あれであの女神様は面倒見がいいからなんか手助けてしてくれるんじゃないかな?」
一瞬だが、ふんすと腕をまくってやる気を見せてきている、あの女神様が見えたような気がしたが、多分気のせいだろう。
それよりなんだろうな、お茶くらい用意したほうがいいか? いらんか……。
まぁいいか……。
しばらく沈黙に包まれる。沈黙は少し苦手な俺が、もう一度ヨシノに声をかけようと思ったとき、部屋の前に誰かが来た。
※
「あれ? 鍵が開いてます?」
どうやら一番最初に来たのはマーガレットと松のようだ。恐る恐る扉が開けられ、中を覗き込んできている。目が合ったので、手を軽く上げておいた。
「わぁ!?」
「え? どうしたんだい?! マーガレット?」
俺と目が合ってびっくりしたのか、マーガレットは少し驚いて声を上げている。
その後ろから松が声をかけてくる。同じように声を掛けたら松も少しびっくりしていたようだ。
そのあと少し遅れて、三人が合流する。どうやらなんとか無理矢理ハジメを連れてきてくれたようだ。
「やぁ、ナガラくん。約束通り来たよ」
「お……おじゃまします」
「ふん!」
ハジメは正直なところ、この部屋に勝手に俺に入られていることも含めて、良い気分ではないようだ
「来てくれて助かります。では、あとから来た人も含めてみんな、そこの椅子にどうぞ」
俺は、全員へ椅子に座る様に言った後、部屋の真ん中に行って、改めて部屋にいる者全員へ挨拶をした。
「ようこそ、今夜はこんな遅くの時間にありがとうございました。これからお約束通り皆さんには少し時の時間を借りて色々お話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いします」
暗いままにしてある部屋の中で、俺は恭しくわざとらしく大袈裟に道化っぽく一礼をする。こういうの雰囲気づくりが大切だ。さぁ……彼らに一夜だけの邂逅を楽しんでもらわなくてはね。
いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。
『ロートル作家とおとぎの異世界』105話になります。
だいぶお待たせてしまい、申し訳ありませんでした。
どうか次回もまたよろしくお願いします。
では次回で……。
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