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ロートル作家は戦闘中 7

なんと100話です。驚きです。あと暑くて熱中症で倒れました。

皆さんは十分に気を付けてくださいね。

 ロートル作家は戦闘中 7






 松に誘い込まれるように、誘いに乗るようにハジメは泥の中へと沈んでいく。泥にしたとはいえそこまで派手にはしてない。あまりやりすぎれば俺自身の能力のことが必要以上に前に出てしまうかもしれないしな。……とはいえ、思い切って膝位までは一晩で浸かれるようにはしておいた。


 そのぬかるんだ状態で右に左にとハジメを揺らす。


「ぬぬぬ……」

「どうですか? お義父さん?」

「ぬかせ!」


 揺らしながら当然風船花を狙う。それを触れさせない様にしつつ、ハジメも押さば押せ引かば押せと押してくる。のらりくらりと松はそれを捌きながら、その場に留めさせる。


 元が良いのもあったけど、かなり上手くやれてるじゃないか。

 思った以上に健闘している松を見て俺も嬉しくなる。


 柔道、どちらかというと柔術? 合気? のようなそれを教えるのは、俺も初めはためらった。理由としては、俺自身格闘とか苦手なのもあるが、この短期間でものになるものなのか? という懸念もあったからだが。だから教える前に念を押したし、時間を使うことに対して、意気込みも聞いた。


「松? 教えるのは構わないけど俺のはあくまで知識だぞ? 実践はほとんどしたこと無いんだ」

「でも、その知識を体現できるだけの能力はあるんだよね?」

「いや、まぁ確かにその能力はあると思うよ」

「なら、頼むよナガラ!」


 確かに今の俺なら、大抵のこの世界の人間ならどうにでもできるとは思う。そのぐらい俺が女神様(苦笑)からもらった力はすごいからね。


「でもなんで急に自分がハジメと戦うと言い出したんだ?」

「んー、難しいことは無いよ。ただマーガレットと一緒に居ることを選ぶなら、ハジメさんとのことは、避けて通れない気がしたんだよ。僕はマーガレットが好きだ、むしろ愛してる。それは今までの長い年月の互いの積み重ねの結果なんだ。単純な昔からの恋心だけではなく、なぜなら彼女が笑って言った、僕らの未来のことを、僕も気に入ったからなんだ」


「ほう、ずいぶん長いことしゃべったな。例のハナとウエキの未来のことか?」

「そう、それだよ! 僕は本当に小さかったんだよね、そこに関しては父さんと一緒だった。でも彼女は違っていた。『別に喧嘩とかはいいんだけど、仲良くなっちゃいけないってことないでしょ? 花咲いて、木が植えられてて、両方みれたら得だと思わない?』 彼女は楽しそうにニコニコ笑いながら、言ったんだよね。なんでかなぁ……僕はそれに心奪われたんだ」

「ははは、ごちそうさまだよ」

「ははは、それにマーガレットはとても可愛いんだ」

「わかったわかった、ならこっから先は本気だ。怪我しないように気をつけてくれな?」


 強く頷いた松の目にはいい光が差していた。

 頑張ったものなぁ……勝てよ……。


 揺れては落とし、揺れては落とす、ハジメを泥の中につける様に、直線で来る力を下へ右へ左へと方向を変えていく。

 柔道というよりはなんか合気みたいだよな。さすがに付け焼刃のものでは、投げるまでには至らないようだが。


<<パン、パン>>


 松とハジメの側から風船花の割れた音が二つ聞こえる。


 ※

 松とハジメの花風船が割れる少し前。

 観客席となっているハナ側の壁。少し周囲から見えづらいところの時間が一瞬止まる。

 時間の止まったまま周囲の空間が少しだけ歪むと二つの影が現れた。 

 一つは、影のまま、もう一つは次第に、人の形になっていき、少女の姿になった。


「ありがとうございます、こんな無茶なお願いを聞いてくださって」

「いえいえ、今回は私のお仕事のお手伝いということですし」

「でもこんなことって、実際起きてはいけないんでしょ?」

「今回は私のお仕事の手伝い出来てもらっているわけですし、構わないですよ」


 少女は嬉しい反面、申し訳なさそうな顔をしつつ、影のままのソレに話しかける。


「時間も大変短いですし、たった一日だけですからね」

「ですが、本当は僕は……」

「まぁまぁ気にせず、あの方の世界ではお盆というものもあるそうですから、いいのじゃないでしょうか。

 それより、頼んでいたこと、よろしくお願いしますね。きっとあの方のことだから、メッセージも碌に見ていないでしょうから」


「わかりました! それを見るように伝え、そろそろ次の町にいってもらうのが、今回の僕の役目ですね」

「えぇ、よろしくお願いしますね」

「わかりました! それが今回の条件ですからね」

「では頼みましたよ。時間は一日だけですからね。その代わり、そのお仕事さえ終わったら、時間までは好きにしていていいですからね」

「はい! ありがとうございます」

「それでは、頼みましたよ」


 そういうと影であったものは消えて、止まっていたような世界は動き出した。あとには少女が一人


「あぁ、なんか久しぶりだな~。さぁてお仕事お仕事……」


 少女は何食わぬ顔で、観客席へと向かっていき、側の男に話しかけてみる。


「え? 勝負決まったの?」

「いやまだだ、両者が一つずつ割れただけだ」

「よかった~間に合ったみたいで」

「あぁ、いいところで来たね~むしろこれからがクライマックスだろうさ」

「今のところどっちが優勢なの?」

「あぁ、坊やは来たばっかだったか。そうだなどちらかといえばマーガレット側の方が優勢だな。ただハジメ様のほうもまだまだ負けたわけじゃない」

「へぇ……そうなんだ……。ありがとうお兄さん。あ、あと僕はこれでも女の子だよ? じゃあね(ボソボソ)」


 観戦しているやじ馬は一瞬、え? という顔をしたが、少女が何かを言ったあと、急に目の前の殊に興味を失くしたようになり、すぐに目の前の戦いのほうへ集中しだした。


 丁度、松とハジメが交互に残り一つずつの風船花になったところだ。

 そして一瞬違和感を感じて男性がつぶやく。

「あれ? 今ここに誰かいたような気がしたんだけどな……。ん?! おぉ、そんなことはどうでもいい、いけぇええ松~! 頑張れハジメ様~~!」


いつもご覧になって頂き、誠にありがとうございます。

『ロートル作家とおとぎの異世界』100話です。

なんだかずいぶん遠くに来た気がします。

まぁ今後もどうかよろしくお願いします。


では次回へ






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