『残り香』
京都には[侘び、寂び]という言葉が似あいます。
これは日本独特の美意識を凝縮した表現で、
簡素の中にある静寂な美をあらわします。
二千年という 長きにわたり培われてきた流儀。
そこには無駄をそぎ落とした究極の引き算のしつらい
余白の生かし方、四季のみごとな調和があります。
その昔、香りは貴族の教養とたしなみのひとつでした。
女たちは、御簾越しに廊下を歩く公達の
仄かな香りに心ときめかせ恋が始まる。
平安時代流行した書物、「枕草子」や「源氏物語」でも
恋が仕事だといわれる貴族の男たちは、
自ら調合した薫物を使いこなして季節の風情を表現したといいます。
薫き染めた 衣の移り のこり香を
秋の夜長の 愉しみと知る
詩織♪
江戸時代になると、
豪族、武士階級の他に経済力をもった町人にも香文化が広まります。
「組香」の創作や、それを楽しむために多くの優れた香道具が作られ
香を鑑賞するための種々の作法が整えられ、
香は「道」として確立されていきます。
一方、中国からお線香の製造技術が伝わり、
庶民のあいだにもお線香の使用が浸透していきます。
山装う 景色に潜む 寂しさを
散りゆく花の 残り香にきく
詩織♪
南無妙の 願いの端の のこり香よ
帰らぬ人へ 合わす掌
詩織♪
人には 誰でも 想い出の香りがありますな~
これ、利くと過去に遡る、
そんな、香りがもの哀しい秋………。