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追われ~ 追われて異世界へ




思わずバビルちゃんの体操着袋を小脇に抱えて逃走してしまったマサルさん、後ろからはポリスメン達が追って来るし、まるでマサルさんが犯罪者みたいではないか…………



 …………………… あらヤダ! マサルさんったら犯罪者じゃないの…………


 小脇に抱えた体操着袋を見つめながらそんな事を思うマサルさん、体操着袋は別に盗む気はなかったのだ体が自然と動き勝手に取ったのだ。


 だが! これではまるで普段からマサルさんが忌み嫌うロリっ子の敵そのものではなかろうか?


 今ならまだ間に合う、バビルちゃんの元へとおもむき体操着袋を返そう…………


 マサルさんはそう決めたのだ。


 常日頃からロリっ子達の平和の為に活動しているマサルさんにとっては当然の事である。


 バビルちゃんに体操着袋を返しキチンと謝罪するために。


 バビルちゃんに再び会うためには、まず後ろからゾロゾロと追って来るポリスメン達から逃げるのが先決だろう。


 マサルさんは走るスピードをもう一段階あげ飲み屋街のほうへと入って行った。


 マサルさんが八百屋の前を走り抜ける時に店員に小さくつぶやいた、【たのむ】と…………


 コクリと無言でうなずいた八百屋の店員が陳列してあったリンゴの入った箱を道にぶちまきポリスメン達の足を止めた。



「らっしゃーい!!」


「うわっ何だ? 足元にリンゴが??」



 マサルさんが走りながら後ろを見ると、八百屋の店員がリンゴを踏んだポリスメンの肩をドンっと押し絡んでる、【らっしゃーい!!】のおたけびを上げる男。


 さすがは後輩のイモゴリーラ! 頼れる奴である。


 マサルさんは、そのまま立ち飲み屋に飛び込みカウンターに千円札をバンっと叩き付け



「通るぞ…………」



「毎度~」



 立ち飲み屋の裏口のドアを開けてくぐり抜け外側から鍵をガチャリと閉める、この地域の飲み屋の特有の変わったドアだが、建物の内側からは鍵が掛けられないのである。


 そう、外側からしか鍵の掛けられない不思議な店が多々あるのだ。



 この辺りに住む住人ならガキでも知っている事だが、いわゆる逃走経路って奴だ、特定の国の外国人が経営している店にはこんな変わったドアがある。


 そもそもこんな迷宮みたいな飲み屋街に逃げ込んだ時には逃亡者の勝利は決まってる。


そのまま、中華料理店のドアをガラガラっと開けてまた通り抜けて細すぎる路地の迷宮をあちこちと抜ければ逃亡者マサルさんの大勝利です。


 そもそもこの地域に逃げ込んで捕まるバカはいないのだが。



 今は無き香港の九龍城砦はご存知の方も多いと思うが、旧日本軍が要塞として整地して建物を建てその後に有名なスラム街に変貌した場所なのだが。


 九龍城は一度入ったら出て来れないとまで言われた迷宮街であり。


 奇しくも、ここ赤羽も大戦中は軍都赤羽と呼ばれ様々な兵器工場や軍事基地があった場所のため旧日本軍の指導の元、雑多な建物、入り組んだ迷路のような作りになるように整地した歴史がある。


 下町とスラムは紙一重であり、その名残を残して現代の町並みも地元民以外はすんなり通れないような街になっている。


 それを不特定多数いる多国籍の少しアウトローな住人や反社会的な事を生業にしてる人々が重宝して迷宮飲み屋街は隠れ家や逃走経路のメッカになっている。


 この街で少年期を過ごした人間なら多少のヤンチャは誰もが経験する、はしか、みたいな物でマサルさんもガキの頃は良く利用した記憶がある。



 そんなこんなで逃げきったマサルさん、バビルちゃんに会うべく飲み屋街を抜けバビルちゃんが通う小学校の方に歩きながら、小脇に抱えた体操着袋を見つめる…………



着てみたい………………………………



 そう、バビルちゃんに返す前に一度体操服を着てみたい欲求に駆られたのだ、マサルさんは道の真ん中で苦悩しながら何かを決意した男の顔になり。


 そのまま着ている服を脱ぎ捨て体操服を着てみる…………


 短パンはパツパツになり、上着の体操服もへそが出てチビTみたいになっているが、これだけはハッキリと言える。



悪くない………………………………



 むしろイイ………… スゴクいいです 体中から全能感があふれ出しとても優しい気分になれる、世界中で起こる争いや不幸な事件、マサルさんはそれらに心を痛め思わず声がでた。



「どうして世界から戦争が無くならないのだろう…………」



「いたぞーー!! 服装は違うが間違いないあの容疑者だ! 確保しろーーー!!」



 何てこったいポリスメン達と目が合った、感が鈍っていた! ポリスメンから逃げた後は飲み屋街の迷宮で時間を潰してから移動しないとポリスメンと遭遇する危険があるのを忘れていた!


 ガキの頃に逃げたっきりだったからすっかり記憶から抜け落ちていた! マサルさんは声にならない悲鳴を上げつつ再び飲み屋街の迷宮に向かい走り出した。


 ピチピチの体操服は思いのほか走りづらい、とりあえず身元がバレるのが怖かった為とっさにスマホと財布だけは手に取ってから逃げ出したが。


 元々着ていた服は現場に置き去りだがしかたあるまいあきらめよう。


 しかしポリスメン達はしつこい、マサルさんが全力で走ってるのに段々と距離が縮まりつつある。


 このままでは、飲み屋街の迷宮に少し足を踏み入れた程度の場所でポリスメンに確保されてしまう。


 しかも複数ある飲み屋街の入口の北東にある入口近くは何やら、この世ではないような オカルティックな言い方は嫌いだが、本能に訴えかける様な何やらヤバい雰囲気がする場所なのだ。


 そんな、ただならぬ空気があるため飲み屋街のこの区画だけは、ゴーストタウンのようになっている、どんなアウトローもここだけは通り抜けない、バカな話と思う奴が多いと思うが。


 この街の歴史も因縁話も知らず、日本語を喋れない外国人達も口をそろえて言う。


 Что?(何かいる)………… 可怕(怖い)………… 무엇인가 있다(何かある)………… 通るべきじゃないと…………


 この街の雑居ビルの屋上にある神社、キャバクラの入口に設置しているお地蔵様、住宅街の道路にある鳥居、道の片隅にある祠。


 みんな何かしらの理由と事情があって設置しているものだ。


 この街に住む住人は、誰に言っても信じてもらえないような体験をした人が多くいる。


 団地の敷地内に入ったら半日から数日間敷地から出れずに遭難する、歩道橋を歩いてたら山の中にいた、旧日本軍の兵士が集団で飲み屋街歩きそのまま壁に吸い込まれるように消えるなど多種多様ある。


 神様は信じないが何かわからない超常現象は確かにあるのだ。


 ガキの頃からDNAレベルの刷り込みで近寄ってはイケナイ場所、そんな場所を通り抜けて逃げるなら、マサルさんは素直にポリスメンに捕まった方が良いとさえ思えた。


 だが現実問題を考えるとポリスメンに捕まるリスクを考えると、そうそう走る足を緩められない。


 捕まればまず嫁に迷惑がかかるであろうし嫁が心待ちにしている再就職も遠のくだろう。


 何が何でも捕まるわけにはいかないのだ、マサルさんは気合いを入れ直して不穏な空気がある飲み屋街の路地に足を踏み入れ走る。



「いい加減に止まらんかーー!」



「追ってこないでーー! 俺にも家族がいるのーーー!!」



「家族なら私にだっているぞーー!」



 まずい、あと数メートルも走る内に追いつかれる、捕まってしまう事案でタイーホされてしまう!



「こっちだよ…………」



 通りにある古びた祠を通り過ぎる時に、男か女かもわからない声の主に手を引っ張られ突然目の前の景色が変わった。



 「ここどこだよ?」

 


良く異世界に転移する時の描写がリアルでは無いとおっしゃる方もいますが、ファンタジーだからいいの! ファンタジーにリアルを求めないで、だってファンタジーは何でもありだから…………

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