第6話 性癖
「うーん・・・クルーゼさん、もう飲めませんよ・・・おぉ・・・肉まんがあるじゃないですか・・・!俺大好きなんですよ・・・!」
俺は肉まんに齧り付いた。
口に柔らかい感触がある。
「ん・・・?やけにリアルな感触だな・・・」
俺は疑問に思うと同時に意識を取り戻した。
夢を見ていたようだ。
昨夜はクルーゼに無理矢理酒を飲まされ、気絶した所までは覚えている。
「なんだこれ?」
俺は齧り付いていた物から口を離し、絶句した・・・。
目の前には白く柔らかそうな双丘があった。
それぞれの頂上付近には、綺麗なピンク色の突起がある・・・。
俺は恐る恐る顔を上げる・・・。
「キャーーーーーーーーッ!!?」
俺は悲鳴を上げた・・・。
「うーん・・・何よ五月蝿いわね!昨夜飲み過ぎて頭が割れそうなんだから、静かにしてよね・・・!」
ラフィだ。
俺は彼女の胸に顔を埋め、その柔らかい双丘に齧り付いていたのだ・・・。
気怠そうに起き上がる彼女は、一糸纏わぬ姿だった。
(あぁ・・・殺される・・・!最期に良い思いが出来ただけでも幸せだったと思おう!!)
「何青い顔してんのよ・・・そこにある服取ってくんない?」
(あれ・・・?怒ってない?まだ寝惚けてるのか・・・?)
俺は内心ハラハラしながら彼女の服を渡した。
「あの・・・ラフィさん?なんで貴女が此処に?俺、昨夜気を失ってからの記憶が無いんだけど・・・もしかして、俺ヤっちゃった・・・?」
俺が冷や汗を流しながら聞くと、彼女は不思議そうな顔をした。
「なんで此処にって言われても、私の部屋だから居て当然じゃない。貴方の部屋が遠かったから、取り敢えず昨夜は此処に寝させたのよ!感謝しなさい!?それより、ヤっちゃったって何よ?」
「いや・・・ラフィは裸だし・・・俺、酔った勢いで君と・・・その・・・」
俺は言葉を濁した・・・。
「あぁ、私と貴方がそう言う関係になったかって事なら、何も無かったわよ?私は寝る時はいつも裸なの!その証拠に貴方は服を着てるでしょ?」
(そうか!ラフィはエルフ族じゃなくて、裸族だったのか!?なるほどね!!)
俺は混乱する頭でくだらない事を考えていた・・・。
「あのさ・・・裸見られて恥ずかしく無いの?」
「何でよ?見られても減るわけじゃ無いでしょ?それに、見られても恥ずかしくない位には自分の身体に自信はあるわ!!」
彼女は胸を張っている・・・全裸で・・・。
大事な部分が丸見えだ・・・。
コン コン コン
部屋の扉がノックされる。
「ラフィ、何かあったのかい?アキラ君の叫び声が聞こえたけど・・・」
クルーゼが部屋に入って来た・・・。
(あっ・・・終わった・・・。俺の人生詰んだ・・・)
部屋に入って来たクルーゼを見て俺は死を覚悟した。
一人娘が全裸でいる部屋に、男がいるのだ。
誤解される要素が多過ぎる。
俺はジャンピング土下座をした。
ズサーッ!!
「ごめんなさい!まだ何もヤってないんです!だから、命だけは勘弁を!!」
彼は俺を見て顔を引きつらせた・・・。
「アキラ君・・・それは何のポーズだい?」
彼の声が震えている。
激おこだ・・・。
「俺の国の最上級の謝罪のポーズです!娘さんとは何もありませんでした!なので、どうか命ばかりは!!」
部屋に沈黙が流れる・・・。
「ぷっ・・・はははははっ!何だ、そんな事か!?大丈夫だよ!どうせ、ラフィが裸で寝てたから勘違いしたんだろう?この子は家で寝る時はいつも裸だからね!」
俺の心配をよそに、彼は爆笑している。
「怒らないんですか・・・?」
「怒るも何も、君の反応を見れば何も無かった事は解るよ・・・!私としては、何かあってくれた方が嬉しいけどね!この子はガサツだから、嫁の貰い手は居ないと思って、常日頃から心配してたんだよ・・・。だから、この子自身が嫌じゃ無ければ、迫られたら体を許せって言ってたんだよ・・・!」
(何ちゅう親父だ!一人娘に何吹き込んでんだよ!?ラフィも何か言ってやれ!!)
俺は爆笑しているクルーゼをジト目で睨んだ後、ラフィに目を向けた。
彼女は照れてはいるが、満更ではない表情をしている・・・。
(ダメだこの親子・・・)
俺は諦めた。
「それで、アキラ君から見てラフィはどうだい?父親の私から見ても、ラフィは良い身体をしてると思うよ!?ラフィもアキラ君の事どう思う!?」
「別に・・・嫌じゃないわよ・・・?」
「ほら!ラフィもあぁ言ってるよ!?アキラ君はどうなんだい!!?」
俺はキレた。
「君達・・・ちょっと其処に正座しなさい・・・」
「えっ・・?」
「何よいきなり・・・?」
「正座しなさい!!」
『はいっ!!?』
2人は俺の剣幕に圧倒され、飛び上がって床に正座をした。
「良いですか・・・?君達2人は、もっと慎み深さを覚えなさい・・・。父親が娘に体を許せなんて言ったらダメです!ラフィが美人でスタイルも良いのは分かります!ですが、身体で釣るなんて言語道断です!!そう言うのは、お互いの気持ちが大事なんですよ!解りますか!?」
「はい・・・すみません・・・」
クルーゼは項垂れて返事をした。
「次にラフィ!!」
「はいっ!?」
怒られている父親を見てニヤけていた彼女に話を切り替えた。
「別に裸で寝るなとは言わない・・・俺の居た世界でも、そう言う健康法があった・・・。だけど!いくら自分の身体に自信があっても、異性の前では恥じらいを持ちなさい!!君は美人でスタイルも良い・・・確かに、それだけなら魅力的だ!!でも、あまりにも開放的過ぎて、色気を感じない!!」
「な・・・何ですって・・・!?」
彼女は驚愕している。
「ちょっと恥ずかしげに隠す位が男心をくすぐるんだ!その証拠に、君の裸を見ても俺のムスコは全く反応していない!!解るか!?君は、自分の身体に自信を持ち過ぎて、そう言う所を疎かにしてるんだ!普段乱暴な君が、いざという時に見せる恥じらい・・・そこに男は惹かれるんだよ!!」
少し言い過ぎたかもしれない・・・。
彼女は項垂れて涙を浮かべている。
「ごめんよラフィ・・・キツい事を言ったけど、君を思っての事なんだ・・・。だから、許してくれ!!」
(決まった・・・!これで彼等も改心するだろう!!)
「アキラ様・・・言いたい事は解りますが、貴方の性癖が外に丸聞こえですよ?」
扉の外にルーカスが立っている。
彼は呆れたように俺に言ってきた。
「マジで・・・?」
彼は、俺の問いに無言で頷くと、窓の外を指差した。
「あぁ・・・俺の平穏な日々は、始まる前に終わってしまった・・・」
外には、多数の村人が見える。
彼等は、俺を見てニヤニヤと笑っていた・・・。