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第3話 まさかの拘束・・・

  チュンチュン  チチチチチチ!


  「ん・・・。何処だここ・・」


  俺は、鳥のさえずりで目が覚めた。


  「おはよう、アキラ!よく眠れたかしら?」


  目の前に居る美少女が笑顔で挨拶をしてきた。


  「何だ・・・夢か・・・」


  「何が夢よ!二度寝しないで起きなさいよ!!」



        ドゴッ!!



  「いってぇ!?何!?何があった!!?」


  俺は頭に衝撃を受けて飛び起きた。


  「おはようアキラ、目が覚めたかしら?」


  俺の目の前には、相変わらず美少女が立っている。

  その手には、太めの木の枝が握られていた。


  「おはよう、ラフィ・・・。出来れば優しく起こして欲しかったよ・・・」


  「優しくってどう言う風によ?」


  「例えば優しくハグとか、目覚めのキスとかさ・・・ごめんなさい、もう目が覚めました!」


  俺は言葉を止め、彼女を見て慌てて謝罪した。

  木の枝を振りかぶっていたのだ。


  「分かればよろしい!あまり馬鹿言ってると、本当に殴るわよ?」


  彼女の目は笑って無かった・・・。


  「さて、冗談はこのくらいにして、そろそろ行くわよ!」


  (あれが冗談?マジな顔してたじゃないか・・・)


  「何よ・・・何か言いたい事があるなら、ハッキリ言いなさい!?」


  「いえ!何でも無いです!ラフィは相変わらず美人だって思ってただけです!!」


  彼女の剣幕に恐れをなした俺は言い訳をしたが、照れた彼女に殴られた・・・。


  「行くも何も、道分かんの?」


  「大丈夫よ!これだけ明るければ目印を見落とす心配も無いしね!!」


  彼女はそう言うと、自信満々に歩き出した。


  「はぁ・・・心配だなぁ・・・」


  「えっ?何か言った?早くしないと置いて行くわよ!?」


  「いえ、何でも無いです!今行きます!!」


  俺は肩を竦めて彼女の後を追った。





  「あっちの方ね!間違い無いわ!!」


  彼女は迷い無く進んでいる。

  歩き始めて1時間、今の所問題無く進んでいる。

  俺が付けている目印は見てないので、同じ所をぐるぐると回っている心配はなさそうだ。


  「本当に大丈夫なの?村のある感じはしないけど・・・」


  「何よ・・・信用出来ないの?」


  「信用出来ないって訳じゃないけど、ずっと同じ風景だと不安になるんだよ・・・」


  俺がそう言うと、彼女は立ち止まった。


  「ひいっ!ごめんなさい!!俺が悪かったです!!」


  「何で怯えるのよ・・・別に殴ったりはしないわよ!ただ、貴方が疲れたかなって思ったから、休憩しようとしただけよ・・・」


  彼女は照れた様に言ってきた。


  「あぁ・・・ごめん・・・。確かに疲れたから、少し休憩出来たら嬉しいよ!」


  「分かったわ!そうしましょう!!」


  彼女は木の幹に背中を預けて座った。


  「何してんのよ?貴方も座りなさいよ・・・」


  彼女はそう言うと、自分の隣の地面を手で叩いた。


  「じゃあ、失礼します・・・」


  「んっ・・・」


  俺が隣に座ると、小さく頷いた。

  よく見ると顔が赤い・・・。


  「何よ・・・?私の顔に何か着いてる?」


  「いや、照れるなら隣に呼ばなきゃ良いのにって思ってさ・・・。俺は美人の隣で嬉しいけどね・・・」


  「馬鹿じゃないの・・・?」


  彼女は小さく呟き、俯いた。

  やはり顔が赤い・・・。

  俺は、素直じゃないなと思い、肩を竦めた。





  「そろそろ行くわよ!十分休めたでしょ?」


  「あぁ、ありがとう。じゃあ、行こうか!」



          タン!



  俺達が休憩を終え立ち上がると、地面に矢が突き刺さった。


  「そこを動くな!この場所は貴様等人間が足を踏み入れて良い場所では無い!早々に立ち去れ!さもなくば命は無いと思え!!」


  森の中に男の声が響く・・・。


  「この声・・・父様!?」


  俺は彼女の言葉に驚いた。


  「その声はラフィか!?何故お前が人間と一緒にいる!?」


  声の主は、慌てた様に森の奥から駆け寄って来た。

  他にも、弓を構えた男が4人出て来た。


  「父様!いきなり弓を射るとは酷いではないですか!もし私に当たったらどうするんですか!?」


  ラフィは凄い剣幕で怒っている。


  (俺に当たるのは良いのか?)


  俺は内心そう思い、ラフィを睨んだ。


  「すまなかった・・・木の枝が邪魔でお前だと気付かなかったのだ・・・。許してくれ・・・」


  父親はタジタジだ。

  どこの家庭も父親は娘に弱いのだろうか?


  「それで・・・何故お前が人間と一緒にいる?私は何度も人間には関わるなと言っていたはずだが・・・?」


  ラフィの父親は俺を睨んだ。

  周りの男達は俺を狙っている・・・。


  (俺・・・ここで死ぬのかな・・・?親父、母さん、ごめんな・・・俺、知らない土地で死ぬかもしれない・・・)


  「待ってください父様!この者は悪い人間ではありません!!」


  死を覚悟した俺を、ラフィが庇った。


  「お嬢様!何故人間を庇うのですか!?」


  俺に弓を構えている男達の1人が叫んだが、ラフィの父親はそれを手で制した。


  「何故悪い人間では無いと判る・・・?」


  「人柄です!私は昨夜、あの者と野宿をしました・・・村に連れて行くと約束したにも関わらず、私は道に迷いました・・・ですが、あの者は私を責めず、励まし、少ないながらも食料と飲み物を与えてくれました!寒がる私に真新しい上着を貸し、火まで起こしてくれました!もしあの者が父様の言う様な悪い人間ならば、何故そこまでしてくれましょう!?」


  彼女の言葉に、父親は絶句していた。

  他の男達も、弓を構えてはいるが、明らかに動揺している。

  こちらから彼女の顔は見えないが、声が震えていたので、涙を流しているのだろう。


  「分かった・・・お前の言葉を信じよう・・・。娘の恩人とは知らず、無礼を働き申し訳ない・・・」


  父親は俺に頭をさげ、周りの男達に弓を下ろすように指示をした。


  「いえ・・・謝らないでください・・・」


  俺はそう答えるだけで精一杯だった。


  「君にはすまないが、一応拘束させて貰いたい・・・娘はああ言ったが、我々はまだ君を完全には信用出来ていない・・・」


  「父様!?」


  「ラフィ!俺は大丈夫だから・・・。よろしくお願いします・・・」


  父親に掴みかかりそうな彼女を落ち着かせ、俺は大人しく拘束された。


  (うわーん!怖いよー!)


  俺は心で泣いた・・・。

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