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第27話 特殊な励まし方

      コン  コン  コン


  俺がクルーゼとの話を終えて部屋に戻り.ベッドに寝転んでいると、誰かに部屋の扉をノックされた。


  「どうぞー」


  「・・・」


  俺が入る様に促したが、なかなか入って来ない。


  「どちらさん・・・?って、何してんのラフィ・・・」


  俺はベッドから立ち上がり、部屋の扉を開けると、そこにはラフィが立っていた。


  「ちょっと良いかしら・・・」


  「立ち話もなんだし、部屋に入りなよ・・・」


  俺は、部屋の前で立ち尽くしている彼女を部屋に招き入れた。

  彼女は俯いたまま小さく頷き、トボトボと中に入った。


  (どうしたんだ一体・・・)


  俺が元気の無い彼女を目で追いながら部屋の扉を閉めると、彼女はベッドの上で膝を抱えて座った。


  「どうしたのラフィ・・・何かあった?」


  「・・・」


  彼女は沈黙したままだ・・・。

  俺が話し掛けても何も言ってこない。


  「何か言ってくれないと、何もわからないんだけど・・・」


  俺は堪りかねて彼女に聞いた。


  「アキラ・・・さっき父様と話してたのって本当の事なの?」


  彼女はゆっくりと口を開いた。


  「聞いてたのか・・・。俺の予想でしかないから、まだわからないよ・・・ただ、十分あり得るとは思うよ・・・。実際、転移者が現れた時は何かしらの変化が有ったのは事実だし、今回も何かが起きるかもしれない・・・」


  俺は少し気不味くなった。

  クルーゼと話をしていたのは、彼女が皿洗いをしている時だったので、まさか聞かれているとは思っていなかった。


  「最後に父様に何て言うつもりだったの・・・?まさか、この世界のために自分を犠牲にって考えてたの?」


  「もし帰る手段が見つからなかったなら、それも仕方無いよ・・・。だって、俺が居る事でこの世界が変わってしまうとしたら・・・それで、もしラフィ達に何かあったら・・・そんな事になってしまう位なら、俺は死んだって良い・・・。だって、君達の事が大好きだからさ・・・」


  俺は彼女の隣に腰を下ろして話した。

  彼女は俯いたまま沈黙している。


  「まだ何があるかはわからないよ・・・何も起こらないかも知れない・・・。でも、今のうちに何かあった時の事を考えておかないと、その時になって後悔しても遅いんだ・・・」


  「私は嫌よ・・・貴方を死なせてまでこの世界で生きていたくないわ・・・!誰かの犠牲の上に成り立ってる世界なんて嫌よ!しかも・・・この世界の住人じゃない貴方が死ぬなんて絶対に間違ってる・・・!」


  彼女は大粒の涙を流している。

  その表情は、怒りや悲しみ、悔しさなどいくつもの感情が複雑に入り混じっている様に見える。


  「ありがとうラフィ・・・俺もただで死ぬつもりは無いよ・・・。君を悲しませるような結果にならないように頑張るよ!だから、泣かないでよ・・・君はいつもみたいに、俺を殴り倒すぐらい元気な方が似合ってるよ!」


  俺は彼女を励ましたが、何故か睨まれてしまった。


  「そんなに殴って無いでしょ・・・?」


  「えっ・・・今日の昼にも、俺に見事なボディブローをお見舞いしたじゃ無いか・・・」


  「あれは貴方が悪いんじゃない!何よ卑猥な事をされるって・・・私はそんな事しないわよ!」


  「いつも全裸で俺を抱き枕にするじゃないか・・・エルフ族の皮を被った裸族のくせに!寝言は寝て言いなよ!」


  俺の言葉を聞いて彼女は絶句した。

  その代わり、彼女の右拳は握りしめられ、震えている・・・。



        ドゴッ!!



  俺の鳩尾に彼女の拳がめり込む・・・。

  肺の中の空気が一気に口から吹き出す。

  俺はベッドの上に崩れた。


  「見事なソーラープレキサスブローだ・・・それでこそラフィだよ・・・」


  俺はベッドに突っ伏したまま言葉を搾り出した。


  「馬鹿じゃないの・・・こんなやり方で私を励ますとか呆れるわ・・・」


  彼女は俯いて呟いた。


  「でも、元気は出ただろ?俺は悲しそうな君の顔より、多少怒ってても元気な君が好きだよ!」


  俺は痛む鳩尾をさすりながら彼女に言った。

  彼女に殴られる事に慣れたのか、ここ最近は立ち直りが早くなっている気がする。

  恐らく、物理耐性のスキルを取得したのかもしれない。


  「調子の良い事言ってんじゃないわよ・・・罰として、今日は一緒に寝なさい!久しぶりだし賭けも我慢してるんだから、その位は良いでしょ!?」


  「了解・・・でも、服は脱がないでね・・・。流石に今日は走り疲れたから、ゆっくり寝たいんだ・・・」


  俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに頷いた。


  「私は裸の方がゆっくり出来るんだけど・・・まぁ、そこは我慢するわ!」


  「やっぱり裸族じゃないか・・・」


  俺は小さな声で呟いた。


  「何か言った・・・?」


  それが聞こえていたらしく、彼女は凄まじい殺気のこもった目で睨み付けてくる。


  「たぶん幻聴じゃないかな!?俺は何も言ってないよ!!」


  俺は慌てて言い訳をしたが、彼女は睨んだままだ。


  「ふん!別に良いわよ!裸族でも何でも好きに言えば良いじゃない!!私の胸にかぶり付いてたのは誰だったかしら?私の事をとやかく言う前に、貴方の性癖もどうにかしたら!?何が恥ずかしがる姿が男心をくすぐるよ!村の皆んなに微妙な顔されてた貴方が私を馬鹿に出来るのかしら!?」


  「はい、すみません・・・。返す言葉も御座いません・・・」


  俺は涙目で項垂れ、ベッドの隅で小さくなった・・・。


  「わかったなら良いわよ・・・。おやすみアキラ・・・」

  

  「おやすみ、ラフィ・・・」


  俺達は挨拶を交わして眠りについた。

  


  


  

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