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第26話 見えざる存在

  俺とラフィは家に入り、先にお風呂を済ませてから夕飯を作った。


  「今日も美味しそうだな!この夕飯も、あと10日もすればしばらくの間お預けと思うと残念だな・・・」


  クルーゼは、俺達の作った料理を見て、寂しそうに溜息を吐いた。

  

  「すみません・・・」


  「いや、君が謝る必要はないよ!私こそ無神経な発言をしてすまない・・・」


  俺とクルーゼは互いに頭を下げた。


  「2人して何してんのよ・・・」


  それを見ていたラフィが呆れたように行ってきた。


  「おっとすまない、折角の料理が冷めてしまうな!では、いただこうか!」


  俺とラフィは頷き、夕飯を食べ始めた。






  「クルーゼさん、この世界に来てから疑問に思ってた事があるんですが・・・」


  俺は夕食の後、リビングでくつろいでいるクルーゼに話し掛けた。


  「何だい?聞きたい事があるなら、遠慮なく言ってくれ。特に、旅に関する事なら必要な話だからね」


  彼は居住まいを正して、俺をソファーに座らせた。


  「この世界には、魔物は存在するんでしょうか・・・?まだこっちに来て半月くらいですけど、そう言った話は全く聞かないので・・・」


  彼は俺の言葉を聞いて思案し、ゆっくりと語り始めた。


  「ふむ、魔物か・・・。この世界には、昔は多くの魔物が存在していたと言われている・・・だが、今存在が確認されているのは、最上位種・・・それこそ魔神や高位の魔獣と言われているような者達だ。魔神や魔獣達は、神々や精霊同様姿を見せる事は殆ど無いよ。他の下位の魔物達は、500年ほど前に消えてしまった・・・。ある日突然神隠しにでもあったかの様にね・・・。私が産まれた頃には、すでに下位の魔物は存在していなかったよ」


  「何でですか?」


  「それは解っていないんだ・・・ただ、一つだけ言えるのは・・・魔物達が消えた時期と、精霊や神々が我々の前に殆ど姿を見せ無くなり、魔法が衰退し始めた時期とが重なっていると言う事だよ・・・」


  俺は彼の言葉に疑問を覚えた。

  何の根拠も無くそんな事が起こるだろうか?

  以前、クルーゼとルーカスはこの世界には神が居ると言っていた。

  そして、俺がこの世界に飛ばされた原因は強大な力を持った神の仕業である可能性があると・・・。

  ならば、魔物や精霊、他の神々が居なくなったのも、その強大な力を持った神の仕業ではないだろうか?


  「それって、何か別の力が働いてる感じがしますね・・・。それこそ、この世界に居た魔物や精霊、神々が居たら都合が悪いと考えた奴が居るかもしれませんね・・・。クルーゼさん、前に人間は増え続けていて、他の種族は減り始めているって言ってましたよね・・・もしかして、それも時期が重なってませんか?」


  彼は俺の言葉を聞いて考え込み、しばらくして苦々しく頷いた。


  「確かに時期が重なっているな・・・我々エルフは、元々子供が生まれにくい種族だが、その頃からさらに出生率が低くなった・・・。他の種族も同様だ。特に竜人族はすでに100人を下回っている・・・」


  「クルーゼさん・・・俺の前の転移者の記述って、いつ頃の物ですか?」


  彼は俺の言葉の意味に気付き、目を見開いた。


  「それも時期が重なっている・・・。思い返せば、その前の転移者が現れた時期にも何かしら起こっている・・・。もっとも大きな変化が有ったのは君の前だ・・・」


  彼は項垂れている。

  この世界の変化には、転移者が関わっている可能性が高い。

  それは、俺がこの世界に来た事でさらに何かしら変化が起きる可能性があると言う事だ。

  良い変化か悪い変化かは判らないが、前回の転移者の結果を考えれば、恐らくは後者だろう・・・。


  「クルーゼさん・・・俺や他の転移者は、この世界を変える為に連れてこられているのかもしれません・・・。誰がやっているかは分かりませんが、無理矢理世界の理を変えるなんて許される事じゃありません・・・。もしこの世界に悪い変化が起こりそうな時は、俺を・・・」


  「それ以上は言うな・・・!それは駄目だよ・・・。私は君のことが好きだ・・・友として・・・何より家族として君の事が好きだよ・・・。もし仮に悪い変化が起こりそうなら、君を向こうの世界に帰す為、全力で協力しよう!だから、悲しい事を言おうとするのは辞めてくれ・・・」


  彼は俺の言葉を遮り、諭した。


  「すみませんでした・・・。クルーゼさん・・・俺、旅の合間に色々と調べてみますよ・・・。俺、この世界が好きですから・・・ラフィやクルーゼさん、ルーカスさん達の居る今の世界が大好きです。だから、何としても俺を転移させた奴に会いに行きます・・・」

  

  俺が誓うと、彼は静かに力強く頷いた。

  



  


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