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第2話 結局野宿・・・

  俺はラフィの後を追って森を進む。


  「ラフィさん・・・何か、遠くない?」


  「さっきからしつこいわね!あと少しよ!」


  彼女は怒っている。

  俺が質問するのは、歩き始めて3度目だ・・・。

  だが、俺がしつこい訳ではないと言いたい!

  歩き始めて既に2時間は経っている。


  「ラフィさん・・・もしかして、迷った・・・?」


  「あと少しだって言ってんでしょ!?」


  ラフィは涙目になっている。


  (迷ったんだな・・・。自分の住んでる森で迷うってどんだけだよ・・・)


  「ラフィさん・・・ここ、さっきも通りましたよ?」


  「・・・何でわかんのよ?」


  彼女がゆっくりと振り向き、聞いてきた。


  「そこの樹に付いてる傷、俺が付けたやつですから・・・」


  俺が指差した樹を見て、彼女は崩れ落ちた・・・。


  「貴方の言う通りよ・・・迷ったわ・・・」


  彼女は四つん這いのまま項垂れた。





  「ごめんなさい・・・偉そうな事言っときながら迷っちゃって・・・」


  「いや、良いよ!村に案内してくれるって言ってくれただけでも嬉しかったからさ!」


  俺と彼女は、樹にもたれかかって休んでいる。

  辺りは夜の闇に包まれて真っ暗だ。


  「寒くなって来たわね・・・」


  「火があれば良いんだけど・・・あっ!ちょっと待ってて!」


  俺はポケットの中をまさぐり、ライターとタバコを取り出した。


  「何よそれ?」


  「まぁ見てなさい!」


  俺は枝を集めた後、タバコをバラしてライターで火を点けた。


  「えっ!今何やったのよ!?魔法!!?」


  「そんな大層な物じゃ無いよ・・・。これはライターって言って、火を点ける道具だよ!あと、こっちの葉っぱはタバコだよ」


  「タバコなんて高級品持ってるなんて・・・もしかして、あんた金持ちのボンボンなの?」


  呆れたように言われた・・・。


  「いやいや、普通の家庭の次男坊だよ!自分で稼いだお金で買ってるんだよ!」


  「タバコをそんな風に使うなんて、貴族連中が見たら気絶するわね!」


  彼女は微笑んでいた。

  焚火の柔らかい光に照らされた彼女の顔は、息を飲むほどに美しく見えた。


  「これなら夜を越えられそうね!助かったわ!後は、何か食べる物を探さないとね・・・」


  俺は彼女に見惚れていたが、食べ物と言う言葉に我に返った。


  「ほんの少しならあるよ!まぁ、腹の足しになるかは微妙だけどね・・・」


  俺は今日ショッピングモールで買った物の中から、チョコレートとお茶のペットボトルを出して、彼女に分け与えた。


  「これは何?」


  「チョコレートって言うお菓子と、お茶だよ!チョコレートは少しの量でも腹持ちが良いからある程度の足しにはなると思うよ!」


  「こっちの透明な容器に入ってるのはお茶って言ってたわよね?」


  「そうだよ。緑茶って言って、俺の住んでる国のお茶だよ!茶葉は紅茶と一緒だけど、乾燥させるか発酵させるかで違うんだよ」


  彼女はチョコレートを一口食べて美味しそうな顔をしたが、緑茶を飲んで顔をしかめた。


  「苦いわね・・・」


  「慣れると美味しいんだけどね・・・良い茶葉は、苦味の中にほのかな甘みがあって最高だよ!」


  「これがねぇ・・・まぁ、申し訳無いけど私には合いそうにないわね!でも、折角貴方がくれた物だし、ありがたく飲ませてもらうわ!」


  そう言ってもう一口飲んだ彼女は、やはり顔をしかめた。


  「あと、これを羽織れば少しは寒さをしのげるよ!」


  「ありがとう!気がきくわね!」


  俺は、今日買ったばかりの上着を彼女に渡した。

  触り心地が良いのか、しきりに服を撫でている。


  「気に入ってもらえて良かったよ!」


  俺がそう言うと、彼女ははにかんで頷いた。






  「貴方、全然怒らないのね・・・」


  野宿を決めてからしばらくして、彼女が呟く様に言ってきた。


  「怒る理由が無いしね・・・。確かに歩き回ったけど、それは君の親切が裏目に出ただけだし、俺は楽しいよ?だって、君と出会ってなければ1人だったし、今頃はあそこで泣き喚いてたと思うよ!」


  俺がそう言うと、彼女は微笑んだ。


  (やっぱり可愛いな・・・ちょっと乱暴だけど・・・。それに、呼び方があんたから貴方にランクアップしてる。好感度が上がったか?)


  「貴方は優しいわね・・・。他の人間も、貴方くらい良い人ばかりなら良いのにね・・・」


  彼女は少しだけ暗い表情をした。


  「迫害か何かされてるの?」


  「そこまで酷くは無いんだけどね・・・自分で言うのも何だけど・・・。私達エルフは見た目が整ったのが多いから、それ目当ての人間が拐ったりとかがあるのよ・・・」


  俺は彼女の言葉を聞いて憤りを覚えた。

  確かに、彼女は美しい・・・他のエルフの女性もそうなのだろう。

  だが、種族は違えど同じ心を持った人類に変わりはない。

  人には皆、自分の人生を生きる権利がある。

  それを踏みにじる事はあってはならないし、やってはいけない・・・。


  「何で貴方が怒ってるのよ・・・」


  俺の表情を見た彼女は、呆れた顔をしている。


  「いや、何だか許せなくてさ・・・。確かに、ラフィも美人だと思うけど、エルフの人達がどんなに美しくても、それを拐って我が物にしようなんて許せないよ・・・」

  

  「ふふっ!やっぱり貴方はおかしな人間ね!おかしくて優しい・・・。嫌いじゃないわ!」


  彼女は照れた様に赤面しながら言った。


  「そろそろ寝ましょう!歩き疲れたでしょうし、貴方はゆっくり休んでなさい。私が見張りをするわ」


  「わかった。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うよ!おやすみ、ラフィ・・・」


  「おやすみなさい、アキラ・・・」


  俺は彼女に挨拶し、眠りに就いた。

  

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