第13話 脅迫
「あぁ?何だ腰抜け!?何か用・・・」
グシャッ!!
スキンヘッドの男が俺を振り返った瞬間、俺は男の顔面に頭突きを食らわせた。
男は鼻と口から大量の血を流して崩れる。
床には歯が3本ほど落ちている。
「てめぇ!!」
グチャッ!!
スキンヘッドの連れの男が俺に殴り掛かって来たが、俺は手加減無しにその男の股間を蹴り潰した。
「ーーーーっ!!?」
殴り掛かって来た男は股間を潰され、声にならない叫びを上げて悶えて気絶した。
店内に居た男性客は皆目を逸らした。
男ならではの苦しみだ。
「お・・・俺の鼻が・・・!てめぇ・・・ぶっ殺してやる!!」
スキンヘッドの男は涙目で叫んだが、俺はうずくまる男の耳を指でつまみ、力任せに引き上げた。
ブチッ・・・
男の耳が根元から裂ける。
「ぎゃあああ!?てめぇ、離せ!!」
男は暴れるが、そのせいでさらに傷が広がる。
「おい・・・てめぇ今何やりやがった・・・?」
俺は男に怒りの篭った声で聞いたが、男は痛がって聞いていない。
俺はブーツの踵で男の爪先の骨を踏み砕いた。
ボキッ!!
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
男は足を潰されしゃがもうとしたが、耳を掴まれたままだったので更に傷が広がる。
「ギャーギャー喚くな。男だろ?それより、お前は彼女を殴ったよな?俺は自分が何を言われようと、何をされようと殆ど怒りはしない・・・だが、大切な人達を傷付けられたなら話は別だ・・・。彼女達は、故郷から遠く離れて不安に明け暮れていた俺を助け、家族として迎えてくれた・・・そんな彼女を殴った奴を許せると思うか?ふざけやがって・・・てめぇ、殺すぞ・・・!」
俺は叫ぶ男を無理矢理黙らせて脅した。
「すまねぇ!俺が悪かった!!頼むから手を離してくれ!!」
男は涙を流しながら懇願したが、俺はそれを無視し、骨の砕けた足を踏んだまま、更に耳を引っ張った。
男が絶叫する。
ラフィとクルーゼは俺が普段と違うのを見て、動揺し動けないでいる。
「てめぇ、何か勘違いしてないか?何で喧嘩売って来た奴が手打ちにしようとしてんだ?俺が買ったんだから、この喧嘩を手打ちに出来るのは、てめぇでもあそこの男でも無え、俺だけなんだよ!!もし喧嘩を売ったなら、相手が歯向かう気が起きなくなるまで痛め付けなきゃならねぇんだよ!売った奴は命乞いも負けを認める事も許されねぇ!殺されても文句は言えねぇんだよ!!」
俺が叫ぶと、店内はさらに静まりかえる。
物音一つしなくなった。
「おい、今までに何人に同じ様な事をして来た・・・?」
「それは・・・」
男は痛みを堪えているが、言葉に詰まった。
「聞かれた事には答えろ・・・!」
俺は更に耳を引っ張る。
男の耳は、既に半ばまで千切れかかっている。
「ぎゃぁっ!?覚えて無え!!多過ぎて分からねえ!!」
「俺はあまり我慢強く無いんだ・・・。痛い思いをしたくなければ、正直に答えろ・・・」
男は俺の言葉を聞いて、耳に負担がかからない様に小さく頷いた。
俺はそれを見て、ゆっくりと話を続けた。
「じゃあ、その人達はお前に許しを請わなかったか?助けてくれと言わなかったか?」
「言った!言われた!!」
「それをてめぇはどうした?許したか?助けてやったか?」
「それは・・・!」
男が再度言葉に詰まったのを見て、俺は怒鳴った。
「助けなかったんだろうが!!許しを請う相手を更に痛め付け、嘲笑ってたんだろう!?そんなてめぇが何故許しを請う!?何故助けてと言える!!?自分が同じ立場になったらヘタレるのか!?てめぇには許しを請う権利も助けを求める資格も無えんだよ!!」
男は絶句した。
痛みと恐怖で小便を漏らしている。
「返事が出来ないか?口が塞がってんなら、話しやすくしてやるよ・・・」
俺はテーブルの上のナイフを手に取り、男の口の中に差し込んだ。
「アキラ!それ以上はダメよ!!」
ラフィが叫んだ。
俺は彼女の叫びを聞いて手をおろした。
「大丈夫だよ・・・ただの脅しだよ・・・。おい、彼女に感謝しろ・・・今回は見逃すが、次は殺す・・・。例え地の果てまで逃げようと、絶対に追い詰めて必ず殺す・・・解ったか?」
男は涙を流しながら頷き、股間を潰されて気絶している男と、女を連れて逃げるように去って行った。
「アキラ・・・」
「ごめん、ラフィ・・・。怪我は大丈夫かい?」
「私は大丈夫だけど・・・」
彼女の左頬は赤くなっている。
俺は彼女の叫びに正気に戻り、店内を見て後悔した。
彼女が殴られてキレたとは言え、店にかなりの迷惑を掛けてしまった。
「クルーゼさん・・・お店の方々もすみませんでした・・・」
「いや・・・私自身、かなり混乱しているが・・・とにかく、ラフィの・・・娘のためにありがとう・・・!」
「えっと・・・気にしないでください!タチの悪い人達を追い出してくれて、マスターも感謝してますから・・・!」
クルーゼとララは俺に頭を下げた。
「クルーゼさん、ラフィ・・・すみませんけど、ちょっと疲れてしまったんで、先に宿に戻ってて良いかですか・・・?」
「あ・・・あぁ、そうしなさい!ラフィも傷を見ないといけないから、今日は帰りなさい。私は店にの片付けを手伝ってから戻るから、ゆっくりと休みなさい!アキラ君、娘の事本当にありがとう・・・!」
クルーゼとララは俺達を見送った。
店内に居たお客さんは、俺が帰るのを見て声を掛けてくれた。
俺とラフィは宿に帰り着き、すぐに部屋に篭った。
「ごめんねラフィ・・・俺・・・」
「何で貴方が謝るのよ・・・私の代わりにあの男を痛め付けてくれて清々したわよ・・・!でも、怒った貴方は少し怖かったわね・・・私のために怒ってくれたのに・・・」
俺が彼女の左頬を濡れた布で冷やしてあげていると、彼女は申し訳なさそうに俯いた。
「頬はどう?結構強く殴られてたけど・・・」
「咄嗟に首を捻ったから、そこまで痛くはないわよ」
心配する俺に、彼女は微笑んで答えた。
「私より貴方の方が酷いじゃない・・・。お酒臭いわよ?この宿には湯船があるから、先にお風呂に入ってきたら?」
彼女は苦笑しながら言った。
俺を気遣ってくれているのが解る。
「じゃあ、お言葉に甘えて先に入らせて貰うよ・・・」
俺は彼女に力なく微笑んで風呂場に向かった。




