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神出鬼没の異端術師  作者: 狼兎
エイドラ大陸編
9/16

8.盗賊団の頭領

 魔法という概念が存在する世界「ウィルガルム」

クリーチャーや悪魔が生息し、魔術の知識を持った種族もいるという。

この話は術師達の中の「神出鬼没の異端術師」と呼ばれ、伝説となった

いろいろな場所に突然現れるという魔術師たちのお話

 誰しもが一度は味わう「恐怖」という感情。その感情に長い間囚われてしまえば、恐怖はトラウマという「衝撃」に変わる。忘れていても何かの原因で突如として記憶に蘇る。思い出すとその時の恐怖が体に何らかの影響を及ぼすことがある。


 盗賊征伐に乗り出した三人は洞窟の前で足を止める。外からは中に人が居る事はまったくわからないようになっているらしい。

 「じゃ、行きましょうかねぇ」

 「まずは私の召還獣でどこまで通用するかやってみましょう」

 「ええ、よろしく頼みますわ」 

するとケルトはいつもと違う杖を掲げて詠唱を始めた。杖の上には怪しく光るコウモリの形をしているシンボルみたいなものが付いていた。

 「 蛇の王よ、総てを毒とし死を齎せ! 毒大蛇バシリスク召還! 」

詠唱が終わると大蛇が出現する。大きな牙を持ちその牙から毒が滴り、鱗は怪しく光っている。

 「毒大蛇バシリスク!洞窟の中にいる盗賊達を麻痺毒に浸らせてくれ!」

言葉を理解した大蛇はその巨体に見合わぬスピードで洞窟に滑り込むように入っていった。

 「すこし待ってから私たちも洞窟に入りましょう」

 数分後、ケルトに大蛇から反応があったらしい。

 「…毒大蛇バシリスクが倒されました。恐らく盗賊の頭まで到達したと思われます」

 「じゃ、行きますか。あの蛇がどんだけ倒せたか見に行こうかぁ」


洞窟内は静寂に包まれていた。洞窟に入って少し進むと明かりが見えて、その下に動けなくなっている男が三人。おそらく門番だと思われる三人は、目で三人を見ること以外は動けないようだ。しっかりと、毒大蛇バシリスクの麻痺毒が効いている証拠である。

 「やぁ門番さん、入らせてもらうぜぇ」

鉄の扉を押してはいると食堂らしき場所にでた。一人や二人ではない、恐ろしい数の人が倒れている。

 「わぁお、こんなに居たんだな」

 「普通に突っ込んでたらやられてたわね…」

盗賊達の間を抜けてたどり着いた扉、その奥からはただならないプレッシャーを感じる。

 「ここか、頭領の部屋は」

エドがゆっくりと扉を開ける。

 「ちっ、ザコ蛇の次はザコが三人かよ…ん、お前ら影を殺した奴か?」

 「その通りだ、お前を捕らえに来たんだよ」

 「ハイハイ無理難題ほざいてろ、つか地味にケルトまでいるじゃねぇか」

 「久しぶり、いつ以来かな?」

 「てめぇが前に団を抜けてからだろクソが」

 「ケルトお前元盗賊だったのか!?」


ケルトは元々この盗賊団の一員だったという。抜けた理由は盗賊団の頭領が死んだ事と頭領争いに失望した為だそうだ。


 「まぁそうですね、でもこの方が頭領になってたとは驚きです」

 「俺が頭領だぁ?まぁ悪ぃ気はしねぇからそれでいいがな」

 「あなたの魔法は死体憑き、私達は策がありますから雑魚同然です」

 「あ、こいつがこの前の影操ってた本人ってことかぁ?」

 「あらそう…思ったより早く帰れそうね」 

 「てめぇらナメてんのかおらぁ!!ぶっ殺すぞ!!」

なにやら手をクロスして何やらポーズを決める。

 「 さっさとくたばりやがれぇ!!憑き人形マリオネット


 何が起きるのかと思いきや、盗賊の頭領はそのまま倒れる。何をやっているのかと不思議に思っていると、上から何かが降ってきた。降ってきたのは人間、だが見た感じ生きてはいない。あの影使いと同じ現象、つまり憑依だ。

 「こいつ…操ってるって事か」

 「その通りだ、俺をナメたのがお前らの敗因だぁあああああ」

とんでもないスピードで切りかかってくる。

死体は具足と斬爪を装備している。恐らくあの装備には強化魔法の筋力強化がかかっている為に速さが尋常ではないのだ。エドは剣を引き抜くと、人形に向かって突撃する。が、相手のほうが速いために避けざるをえない。

 「うおっ、はっ速えぇ…剣があたらねぇ!」

エドは空を斬り、そして肩を浅く切り裂かれ血が流れる。

 「いくら速くても逃げ場をなくしてしまえばいいんじゃないかしら?」

リズが詠唱開始、同時に人形はケルトに狙いを定めた。ケルトは元々運動が得意ではないために反応が遅れる。たかが一瞬、されど一瞬。少しの隙が命取りとなる。斬爪がケルトを切り裂く寸前、それを跳ね返す何かがあった。右、左、右、右、左とすべてを弾き返し防ぎきる。

 「なっ!? な、なんだコイツは!」

 「はぁ…強化を施していただいててよかったです…」

爪を弾いたものは小さなコウモリ、ケルトの杖についていたコウモリだ。

 「実は、出発する前に新しく杖を新調したんですよ。それの杖を使ってエドさんに私の召還魔法を込めていただいたのです。どういう結果になるのかは想像できませんでしたが…」

恐らくケルトの召還魔法を込めた杖は、そのシンボルであるコウモリに守護召還獣と同じ役割を持っていたのだろう。そのために持ち主の危機に発動したと考えられる。


 そしてリズの詠唱が終了し、魔法が完成する。

 「逃げ回る者共を捕らえよ!鳥篭ゲージ!」

人形の周りの地面が円状の光を放ちながら瞬時に鳥篭が形成される。篭は魔力を帯びておりそう簡単には逃げ出せそうに無い。

 「ハハッ、こんなもので俺を捕まえられるわけねぇだろおぉおおおお」

盗賊が憑依した死体は、斬爪を叩きつけて篭を切断しようと試みる。

 「私の魔力に抗えるならやってみなさいよ、どうせ出来ないだろうけど」

 「お前忘れたか? 俺の能力を」

人形は魔法を発動させると精霊を爪に纏わせて布を裁つように切り払う。この男は憑いている死体の魔法も使うことが可能だ。

 「俺の技量を侮ったからお前はダメなんだぁぁあああああ」

 「いや、元々時間稼ぎ(・・・・・・)だから役に立ってるぜぇ」

 「本体確保しました。あなたも昔から変わらず詰めが甘いですね」

ケルトとエドは盗賊の本体に刃物を向けている、少し動かせば殺せる位置に。

 「あなたの魔法は昔から本体が手薄になることが改善点でした。もちろんあなたがそれを改善している可能性を考慮していろいろな策を考えたのですが….無駄手間だったようです」

 「てんめぇ…昔と同じように俺の邪魔をしやがってぇ…」

 「あれは私の目指す物とは違ったのです、だからあなたを捨てました」

 「まぁとにかくだな、少しでも動くと本体を切り刻むぞ。助けてほしかったら憑依を解除しろ」

 「チッ…しかたねぇな」

思ったよりあっさりと降伏した、もっと反抗すると思ったのに。盗賊の体を逃げられないように拘束バインドする。


 洞窟の外に向けて歩き出す。

 「これで一件落着よ! 特に苦戦もなく終わってうれしいわね」

 「そういえば!私まだマジックアイテム持ってたのを思い出しました」

そういうとケルトはポケットから札を取り出しエドの傷に当てる。すると薄緑の光を放ちながら傷が直っていくのがわかった。

 「それって回復魔法のアイテムか。便利なものもあったもんだな、即回復じゃんよ」

 「逆魔法ディスペルの札と一緒に購入したのをすっかり忘れてました…」

傷もすっかり回復するとそろそろ洞窟の出口に着く。外へ出ると夕日が見えて綺麗だった、空気も冷たくておいしい。

 「とても綺麗ね…持ち帰りたいぐらいに…」

とてもいい雰囲気の中、拘束した盗賊の言葉によってすべては崩れさる。

 「……そろそろ頭領、出番ですよ?」

三人は盗賊の男がしゃべったほうを見て硬直する。

 「やぁ、久しぶりだね。チェルちゃん(・・・・・・)?」



神出鬼没の異端術師を読んでいただきありがとうございます。狼兎です。

今回は建てに建てたフラグを回収させていただきました。

ルビの振り方にも慣れてきていい感じになってます。

未だに登場する魔法が少ないので、一気に紹介しようと画策中だったり....?

間違っている点や意見等ありましたら気軽にお寄せください。

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