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神出鬼没の異端術師  作者: 狼兎
エイドラ大陸編
6/16

6.謎解き

魔法という概念が存在する世界「ウィルガルム」

クリーチャーや悪魔が生息し、魔術の知識を持った種族もいるという。

この話は術師達の中の「神出鬼没の異端術師」と呼ばれ、伝説となった

いろいろな場所に突然現れるという魔術師たちのお話

 影との戦闘を終え、つかの間の休息も終える。

朝になると町に活気が戻り始めて賑やかになった。


 昼まで休んだ後、ケルトの店へ行った。もちろん、今朝捕まえた影使いに話を聞くためだ。店に着くと、前に店を訪ねた時と同じ場所にケルトが立っていた。

 「よぉ、ケルト。どうだ、あいつの様子はよ?」

 「奥の部屋でおとなしくしてますよ。それにしても、リズさんのバインドはすごいですね…魔力が薄れたりしてませんよ…」

 「そりゃあ拘束バインドの魔力量の最大で発動させたからね、私の魔法は一級品よ!」

ケルトに案内されて影使いがいる部屋に入る。

 「よぉ、影使いさんよ。調子はどうだい?」

エドの声掛けに対して、影使いはまったく動かない。

 「あなたの魔法はとても見事ね。闇魔法を使った召喚なんて高度な技術がいると思うの、誰かに教えてもらったのかしら? 命令されて私たちを襲ったのかしら?」

リズが問いかけても、男はピクリとも動かない。

 「…おい…どうした? 体調でも悪いのか…ちょっと待て、こいつ…生きてるのか…?」

エドが男の腕を触ってみると、とても冷たく何となく腐敗臭っぽい臭いがする。よくよく観察してみると、体全体がやけにだらけていて、まったく生気を感じることができない。


 すぐさまケルトが脈を測る。呼吸を確認。心音を確認。

 「…亡くなられています。この様子だと、おそらく数日前にはもう…」

影使いだった死体から手を放したケルトは、とても驚きを隠せない様子で言葉を続ける。

 「私が今朝、ここに運び込んだときにはとても激しく抵抗したのです。それはもう召喚獣で抑えないといけないほどに」

 「ということは捕らえられてから今までの間になんらかの理由で死んでたって事…?」

 「この死体の腐敗を見た限り、我々と戦う前からだと思われます…」

 「つまり俺達は昨日、既に死んだはずの魔術師と戦ってたってのか?」

 「それはあり得ないと思う…魔法で死体を操る事はできても、亡くなった当人の魔法は扱えないわ。死亡と同時に魔力は消滅するもの」


 魔力は人の精神力の強さに依存する。そのために精神が切れる事、つまり死亡すると完全に精神は消え失せて魔力は消滅すると言われている。精神を高めたり集中すると魔力が多く消費され、効力が強くなるのはこれが理由だ。ちなみに魔法を使う場合、魔法が届く・操れる範囲が決まっている。精霊魔法であれば最大で半径50m、召喚魔法となると半径25mと小さくなる。


 事実として今朝、エド達は、数日前に既に死亡しているはずの魔術師と戦っていた事は間違いない。しかし、それだと辻褄が合わないのである。

 「ということは本当の暗殺者はどこに居たのかしら…私の探索眼ウォッチャーでも捜せなかったわ」

 「リズ、精霊魔法の適合者で死体を操りながら影をも多数生み出して操り、なおかつ幻魔法を使う事は可能か?」

 「瞬間的なら可能だと思う、私でも10秒が限界よ。でもあの戦闘の間ずっとは無理だわね…」

 「そうか…じゃあ残る可能性は、リズを圧倒的に超えた魔力の持ち主という場合、それとあと一つ」

 「……異端魔法の可能性でしょうか?」

 「そういう事だろうな。おそらく死体に憑依やら何やらをして魔力を供給したと考えるのが妥当だろうな」

 「確かにあの男、私たちに向かって罵っていたものね…あれは死体を操って動かすだけでは不可能だわ」

それは三人が常に命を狙われている可能性があるという事を意味する。帝国の内外で暗殺者がどの死体に憑依してどういう方法で殺しに来るのか、まったく想像もできない。それらの事実がエド達3人をさらに不安へと誘う。

 「私達はとんでもない事件に足を踏み入れてしまったのではないでしょうか…?」

とりあえず男の死体を墓地に運び、丁重に埋葬する。運んでいる最中にもやましい事はないのだが、ついつい周りを警戒してしまう。

 「これからどうしましょうか…?」

 「とりあえず情報を集める。この帝国中の人たちに聞いて回れば、憑依魔法なんて稀有な魔法を知ってる奴がいたっておかしくないだろ?」

 「でもどうやって集めるの? 方法がないじゃない、ただの魔術師でしかない私達に集められるの?」

 「ギルドの依頼でも受けまくってたら自然と繋がりが増えて有名になれるんじゃねぇ?」

 「なるほど…依頼でつながりを増やして、情報を出来る限り集める、ですか…」

 「他に方法がないなら仕方ないわね…。それにしてもこの方法、とっても長い時間がかかりそうね…」

 「とにかく、やってみるっきゃねぇぜ!」

こうして3人の、長い長い情報収集が始まった。


 朝から晩まで依頼、依頼、依頼。

その間に知り合った人は数知れず、大商人や鍛冶屋に物知りおばさん等々から情報を得る。そしてこの国周辺の地理や歴史について学ぶ事になるのだが、これはまた別のお話。


 そして2ヶ月後、時は梅雨になり紫陽花がひっそりと花を咲かせるころ。事件はまた動き出し始める。その頃には、仕事や日々の生活で関わった帝国や他の国の人々から手に入れた、大量の情報が集まっていた。



若干迷走しております狼兎です。

今作は若干短い謎解き回となっております。

いろいろな方から意見を頂きましたのでそれを次に反映していこうかと思います!

次話は少し巻き戻って広報活動時の話になります。

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