4.不安と予感
魔法という概念が存在する世界「ウィルガルム」
クリーチャーや悪魔が生息し、魔術の知識を持った種族もいるという
この話は術師達の中の「神出鬼没の異端術師」と呼ばれる者達の話である。
リズリット・チェルハは夢を見ていた。
自分の部屋のベットで震えている。
部屋は暗くとても空気は冷たい、常に人の叫び声が聞こえリズを恐怖が襲う。
両親は私を助けるために…考えたくない。
体は寒さと恐怖で震え満足に歩く事もできない。
いきなり部屋に人が入ってきて、手をつかまれる。
必死で抵抗するも強い力によって拘束され枷をはめられて連れて行かれる。
連れて行かれる途中、目に入ったのは両親の変わり果てた姿だった。
意識が暗転する――。
なんだか周りが騒がしい。
目を開けるとエドがいた。うなされる私を心配してくれていたのだろうか?
「おい、起きろ。なんか外で面白い事やってるぜ?」
騒がしいと思ったのは外、今日は帝国誕生の日ということで
帝国のいたるところでお祭り状態らしい。
「そういうわけで沢山美味しいものが…グヘヘ」
「そう…お祭りね…」
「どうした、今日は元気が無いじゃないか? あそうか、昨日俺に説教したのを謝りたいんだな? そーかそーかついに改心したか! ならばお前を俺のグハッ」
「寝言は寝てから言いなさい、お馬鹿さん」
強烈なパンチを腹に食らわせるとさっさと起き上がって準備をする。
いつもと同じように活発なリズが戻った。
場所は変わって商店街へ
お祭り騒ぎの商店街では昨日はなかった食べ物がいっぱいあった
「うっひょー、どれもこれもうまそうじゃねぇか!」
食材売りの店だけでなく料理店も声を張って呼び込みをしている。
「巷で噂のヤギカツカレー今なら一皿800ルクスだよ!」
「人食い草を存分に使って作ったサラダだよ! 今日なら半額で食べられるよ!!」
「あんなののサラダなんて見たくねぇ…」
「私も二度とゴメンだわ…」
多種多様な種類の料理や食材を見て回っていると一軒だけ雰囲気の違う店があった。どうやら占いをするらしい。
「占いじゃない!私占いうけてみたかったのよねー! 行きましょうよ!」
「ま、一回ぐらいならいいと思うぞ」
怪しい雰囲気をかもし出すそのお店に入ると、中には魔除けがつるしてあったり不気味な人形が大事そうに飾ってあった。いかにも魔女の家という言葉が似合いそうなほどに。奥に占い師と思われる好青年が立っているのが見えた。
「ようこそいらっしゃいました。私は占い師のケルト・ルゾッテと申します」
占い師と名乗る好青年の肩には、不気味なハトが乗っていてジッとこっちを見ている。
「えーっと、リズを占ってもらいたいんだが」
「リズさん、ですね。それでは占いますのでこちらへ座ってください」
椅子に腰掛けたリズは妙な視線を感じる。ケルトの肩に乗っているハトのものだ。ケルトは何やら呪文を唱えるといきなり目を見開く。
「あなたたち…何者ですか…?」
「何者も何もただ遠くから旅をしてきた旅人ですけど…?」
「そうですか…」
数分静寂が続きケルトが占いは終わったと言う。
「これから先、大きな不幸…が訪れます。早くこの国を去ったほうがいいでしょう」
「えっ…不幸、ですか?」
「そうです。この国を去れば不幸にはならないでしょう」
再びの静寂。
エドは今まで気になっていたことを聞いてみることにした。
「その肩のハト…お前召喚魔法の使い手か?」
「……そうですが何か?」
「一体何を見た? お前だって未来を見ることは魔法では出来ない事ぐらい知ってるだろう」
魔法でできない事はいくつかある。まだ魔法が開発されていないからというものもあるが、普通の魔術師ではできない事。まず死者の蘇生だ。操ることはできても生き返らせる事はできない。次に寿命を延ばすことはできない、若返ったように見せるだけで延命は不可能だ。そして、自分や人の未来を見る事。未来を見る魔法は発見されておらず、研究結果として見る事はできないというのが常識である。ただし、未来を覗く事はできなくても記憶を覗く事は出来るのだ。
エドはその事について追求している。
「…エドさん。あなたは異端魔法というものを見た事はありますか?」
リズの記憶から名前を読んだのだろうケルトは問いかける。
「俺は何度か見た事がある。それがどうかしたか?」
「異端魔法というのは世界の常識を破る事ができるのですよ。
私のように過去も未来も覗ける人も存在するのです」
「異端魔法….だったか」
「私の話を信じていただけたのであれば早くこの国を去ることを勧めます」
「…..考えておく」
机に300ダクスを置いたエドはリズを連れて外へ出た。
外は相変わらずのお祭り騒ぎだが、二人の心境は入る前とは真逆だった。
「あの話本当だと思う…?」
「いくら異端魔法でも未来を覗く事はできないだろう…」
「でもすごくあの人いい人そうだったけど…」
「確かに何か確信を持ってしゃべっていたように見えたな」
その違和感に首をかしげながら二人は商店街を回る事にした。
占いを信じなかったわけではないが何となくケルトの言う不幸が気になったのだ。すると昨日と同じような視線を感じて振り向く、が怪しい影は無い。
「おいリズ、置いてくぞぉー」
駆け足でエドを追いかける。嫌な予感がした。
あの占い師の言葉は本当のような気がする。
そうリズは考えるようになっていった。
一気に書き上げました4話です! 新キャラのケルトはまだ謎ばかり
異端魔法が使えるといいますがエドは疑っています。
ケルトの登場のさせ方にすごい苦労しましたがいい感じに仕上がったかと思います!
間違いや表現について意見ありましたら言っていただけるとうれしいです。
5話では何かが起こる予感....?