3.術式解放
魔法という概念が存在する世界「ウィルガルム」
クリーチャーや悪魔が生息し、魔術の知識を持った種族もいるという
この話は術師達の中の「神出鬼没の異端術師」と呼ばれる者達の話である。
二人は依頼を達成するために森林へ向かっている。今回受けた依頼内容は魔物討伐で、薬草に擬態して人を襲う食人植物を探して切り払えば依頼達成となる。食人植物は危険度1なので、魔法を使わずとも剣だけで倒せる強さだ。
「いよぉし、森に着いたぞぉ」
二人はとりあえずその魔物がいるだろう地点に向かってみることにした。
「しっかし薄暗くて気味わりぃなーこの森。人食い草以外も何か出そうだぜ…」
「エドはお化け信じてるの?」
「信じては無いけど雰囲気的に出てきそうだって話よ。そういうリズはどうなんだ? やっぱ怖いか?」
「そっ、そんなわけないじゃない!」
「そうかそうか怖いかぁ、まだ子供だもんなぁー?」
話をしていると討伐対象がいるだろう地点にたどり着いた。あたりには商店街で売られていた薬草がそこらかしこに生えている。
「ここが食人植物がでたって言ってた場所ね…まだいるかしら?」
「いてもらわなきゃ困るな、とりあえず探してみるとすっか」
とりあえず辺りを探索していると怪しい草を発見する。
「あれじゃね? あのツルとか人食い草のやつっぽいし」
「とりあえず切ってみればいいと思うわ」
「ま、それもそうだな」
腰から薄汚れた剣を手に取り、鞘をつけたまま草に振り下ろす。
ギュァアアオスギュァアアア
「うっしゃあったりぃー」
睨んだとおり食人植物、こっちに向かってツルで反撃これは想定内、付近に潜んでいた食人植物が襲ってくるのも想定内。ただし、そのうちの一体がとてつもなくでかかった、コレ予想外。
「うおぉおお!? なんだぁこいつぅ!?」
「エドのバカアァァアアアアア!!」
巨大なツルが地面を叩きぐらぐらと揺れ動く。粘液を垂らし子分を従えながら追ってくる様子はまさに恐怖そのものだ、おそらくこの食人植物群の長なのだろうと思わせる破壊力。二人をつかんで食べようとツルを伸ばして掴みかかってくるが寸でのところで回避する、これの繰り返し。これじゃ依頼達成なんてできたものではない。
「しゃあねぇ! 森から離れるしかねぇなっ!」
「剣があるんだからぶった切ればいいのよ!! ちょっとは考えなさい!」
「な、なるほど。それもそうだな」
サッと振り向き剣を抜き放つ。薄汚れた鞘とは裏腹に抜き放たれた剣そのものは全く刃こぼれしておらず輝きを失わず、うっすらと光を纏っている。剣を構えて群れに特攻を仕掛ける。
「 剣に宿りしその劫火今こそ力を解き放て! 強化解放! 」
剣が紅色に輝きそれは紅蓮の炎へと姿を変えてゆく――――。
「うらぁっ!」
わずか一閃。食人植物が剣に触れた先から炭片となり山を作る。親玉も例外ではなく触れたところから炎神の火が広がり瞬く間に燃え尽きる。
「あ、魔力調整ミスった」
食人植物を焼き尽くしても炎は消滅せずに緑を貪り続ける。森は管理されていないためツルは伸び放題、そのツルを伝い炎は燃え広がり手が付けられなくなる。
今にも森を食い荒らさんとしている炎に対してリズが魔法を放つ。
「 天の雫は槍の如く、降り注げ! 水槍雨! 」
すると空から槍のような雨が降り注ぎ付近の炎を封じ込める。
ジュゥゥゥゥウウ….
雨が炎を封じ込めると雨が自然と収まり雲も消滅した。
「……エドウィン・バルド」
少女が感情を抑えた声でエドを呼ぶ
「ど、どうした…?」
「どうしたじゃ無いわよどうしたじゃあ!! 何!? 私を焼き殺すつもり!?」
「い、いやぁ魔力調整ミスっちゃって…」
「エドの魔法は強化魔法の癖に精霊並みの破壊力なんだからいい加減魔法の
威力ぐらい考えなさいよ!! あなたそれでも魔術師なの!?」
「だってよぉ…あの群れを焼き払うにはアレしかなかったんだよぉ…」
「威力を考えなさいよ威力を! 魔力調節もできないのに魔法なんて使うのが
間違ってるのよ!!」
エドの適合魔法は強化魔法なのだが、少し特殊なのだ。強化魔法というのは耐久性やスピード強化といった魔法がメインなのだが、エドが扱う強化魔法は対象に精霊を埋め込む事によって強化が完成するのだ。その結果、剣の耐久力向上のために炎の精霊を封じ込めた事ところ剣に力が宿ったらしい。要するに強化魔法と精霊魔法のハイブリットといったところだろうか?
エドの魔法は異端魔法ではないものの例外のひとつだろう。
そしてリズの適合魔法は精霊魔法。
彼女の場合は魔力量が尋常ではなく、初級魔法でも中級魔法と同等レベルの威力にできる。魔力のコントロールも一流であることは間違いない。さっき放った水槍雨も雨になるように調整してあるので普通の雨になり被害は全く無い。技術も一流で魔法について研究・開発しているので新しく作った魔法もいくつか存在する。これはこれで例外と言えるかも知れない。
依頼を達成した二人は何とか町に戻り依頼を報告、人食い草の親分も倒したと自慢する、すると親分は親分で別の依頼だったらしく受けた依頼の3倍近くの報酬を手に入れることが出来た。二人は報酬で食料を手に入れ、魔術ギルドの宿泊所で一晩を過ごす事になった。買い込んだ食べ物をリズが調理して晩御飯を作る。見事な腕前で一流シェフ並みの料理が出来上がり、二人は口いっぱいに頬張る。
「あぁー…生き返るー…」
「久しくまともな食事にありつけたわね…」
「まぁ俺のおかげだな、感謝しろよぉ?」
「私が鎮火したおかげで森が消えずに済んだっていうのに…」
「魔力コントロール苦手なんだよなぁ、今度教えてくれね?」
「まったくもう…」
ゆっくりと食事を楽しんだ後、二人はベットに潜り
深い眠りへと誘われていった――――。
2日連続投稿の3話目となります。どうも狼兎です。
今回は魔法要素を少し入れてみたのですがどうでしょうか?
魔法詠唱とか考えてみると意外と難しくてびっくりしましたw
間違いや表現について意見をくださるとうれしいです。
次話は新キャラ登場!?