2.アルラード帝国へ
魔法という概念が存在する世界「ウィルガルム」
クリーチャーや悪魔が生息し、魔術の知識を持った種族もいるという
この話は術師達の中の「神出鬼没の異端術師」と呼ばれる者達の話である。
ここはウィルガルムにある国のひとつ、アルラード帝国近郊の森林。
この森は昔から魔物が出るため人が寄り付かず不穏な雰囲気を漂わせていた。
森の中道にポツンと2人の人影が見える。一人はマイペースに口笛を吹いて歩く20代後半に見える背の高い青年魔術師が着るローブ(ボロボロ)に麻の袋と薄汚れた鞘の剣を腰に付けている。これが今作の主人公、彼の名前はエドウィン・バルドという。呼称はエド。
「ここは一体どこなんだぁ?どこだと思うよ、リズゥ」
「私に聞かないでよ、あと口笛うるさいから静かにして」
リズと呼ばれた少女は10代前半に見える、昔からエドと一緒にいる冷静な少女。名前はリズリット・チェルハ。呼称はリズ。
「相変わらず冷たいなぁリズはよぉ」
「最近ずっとよ、それより前見て。森が開けるわ」
リズの言うとおり森の向こう側が見えてきた、とても明るい。
「おぉっ!これはすげぇ!」
見渡す限りの草原と奥に見える巨大な城に城下町らしきものが見えて思わず足を止めて見入ってしまう。
とてもきれいでピクニックをしたくなるような気分にさせられる。
「こっからどこいくよ?ピクニックでもしてっか?」
「食料が無いから城下町に行くしかないでしょ?まったくもう…」
この二人の持ち物はエドが持つ麻袋と薄汚れた剣だけで、その麻袋も中に食べ物が入っているようには見えない。
「あぁそういえばここんところ何も食ってなかったなぁ…」
グウゥー…と唸る腹をさすりながらトボトボと歩きだす。
思ったほど遠くなかったようで歩くこと数十分、アルラード帝国門前へ到着。
「おぉ、やっぱ遠くから見るより近くで見たほうが迫力あるな!」
巨大で頑丈そうな門を護衛兵に質問攻めにされながらも何とか抜けた先にはとても賑やかで活気にあふれる商店街が広がっていた。
肉屋に八百屋に鍛冶屋まで多種多様な商店が立ち並び食べ物のいい香りが商店街中からしてくる、ダラリと垂れそうな涎を飲み込んで走り出す。
「いよぉし!食料を買いにいっくぞぉ!」
勢いよく走り出すエドの足をつかむリズ、おかげで顔から地面に倒れこむ
「お金がないから何も買えないよ」
「お金無いからって言ってももっと方法があるだろうよぉ…」
痛みで悶絶するエドに対して冷静なリズ、どうやらコレが二人の普通のようだ。
「お金がねぇって言ってもよぉ、売るものは無いじゃん?
それにギルド無いじゃん? どこで稼ぐよ?」
ギルドとは魔術ギルドとよばれる組合の事だ。魔術師に対して依頼を出し、達成すれば報酬をくれる場所で、主な依頼内容は魔物退治やマジックアイテム等の納品だ。依頼者は一般人だったりギルドからだったりといろいろ。
「さっきギルドの隣を通り過ぎたはず、エドの目は節穴なの?」
「えぇっ、どの建物だよぉ?黄色い旗だぞぉ?」
「違うよ、国ごとに変わるから看板を見て探す必要があるの」
いろいろ喋っているうちに魔術ギルドに着いたようだ。 魔術ギルドについた二人は、これからの仕事になる依頼を受けるべく依頼掲示板へ。ギルドではたくさんの冒険者達がいろいろな話をしていた
「この前洞窟でお宝みつけちまってよぉ!大儲けだぜぇ!!」とか
「噂の研究中魔法って知ってるか?なんでも異端魔法をアイテムで使えるらしいんだ、十中八九嘘だろうが本当だったら――」なんて面白い話も。
その多様な話にまったく興味を示さずに掲示板へ一直線。
リズはふと視線を感じて後ろを振り向くが何も無く、また掲示板へ歩き出す。
二人は依頼掲示板で納品依頼やお手伝いを探したのだが、生憎モンスター討伐依頼しかなく、報酬で食料品が買えてなおかつ簡単な雑魚い魔物の依頼を受けることにした。
依頼内容は帝国近郊の(さっき通った)森に潜み薬草採取の邪魔をする擬態型の魔物を退治して欲しいということだった。依頼をカウンターへ持ち込み正式に受諾するとギルドの外へと出る。
「せめて何か食いたかったなぁ…肉とか肉とか肉とか」
「どれだけお肉が食べたいのよ…お金が無いのはエドの無計画が原因なんだから、私が付いてきてあげてるだけでも感謝して欲しいわね?」
「ご、ごめんなさい…」
リズの説教を聞きながらも門を抜けて大草原を歩き出す二人は、どこか親子のようだった。
やっとの思いで2話書きました狼兎です。小説書くのって簡単じゃないと実感....
2話では人物紹介をメインに書いたつもりですがどうでしょうか?
3話ではエドとリズの戦闘を書けたらなと思います。
今は全然知られていない「神出鬼没の異端術師」ですが、
いつかはある程度有名になれたらいいなーなんて思います(笑)
これからも書き続けますのでよろしくお願いします!