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神出鬼没の異端術師  作者: 狼兎
エイドラ大陸編
16/16

14.絶望と希望

「何が何でもてめぇをぶっ潰して俺はあいつらの元に帰るッ!」

ジークはこの言葉を口にしたとき、なんだかんだ言いながらも、俺はあの学院が好きだったんだなと思った。そう思うと同時に帰らなければならないという思いも自然と強くなってゆく。隣にはジョージと互角の仲間であるエドがいる、そしてジョージにダメージを与えられる俺がいる。そう考えると勝てそうな気がした。


 「人間は哀れな生き物だね…。相手の強さも測れないなんて、ねぇ?」

 ジョージの額に青筋が浮かび、紅眼もさらに殺気を帯びて強くなったように思える。この男は一時的とはいえ魔族化している、想像を超えた事をしてくる可能性だって十分にあり得るのだ。最大限構えて、出来る限り相手の行動を予測して動かなきゃならない。そうジークが考えていると、エドがジョージに再度攻撃を仕掛ける。

 「お前も、俺の事を甘く見すぎてんじゃねぇか? さっきまでお前と戦ってたのは俺なんだぜ?」

ジョージとエドでは魔力にかなりの差がある、だがエドが使っている剣がその差を埋めているようにみえた。リズと作ったその剣はエドが飴から得た魔力をつぎ込み、劫火がより一層暴れだし、ジョージに少しずつ小さな火傷を負わせてゆく。一方エドも、ジョージの放つ刃や時々無詠唱で発動する魔法をさばき続けて、少しずつ傷が増えてきた。


 このままでは、人間のエドが負けると考えてしまうが、今回は俺がいる。学院長に認めてもらったこの力を使って人を、仲間を助けることができるのだ。今の俺にできる事なら、なんでもやってやるしかない。先程のように、かなりの魔力を使って破流波(ウェーブストリーク)を発動するのは良策ではない。今回はエドが常に戦っているし、それに連発しては自分の魔力が持たないからだ。だとすれば何をするべきなのか。考えた結果、自分が持ちうる魔力コントロール技術をすべて使って、エドにあたらないルートで鋭槍ランス系魔法を発動するのが一番いいだろう。考えるや否や、即座に実行に移す。先程の破流波ウェーブストリークを当てた時の感じだが、不意打ちに対する対応力が少ないのではないかと踏んで、小さくて消費魔力も少なく、比較的に狙いを定めやすい水槍アクアランスを発動する。

 「天の雫は槍の如く、貫け! 水槍アクアランス!」


 狙うはジョージの顔、一瞬でも水で視界が埋まればエドの剣が届くかもしれない。発動した水槍アクアランスを、持前のコントロールで正確かつ迅速に3連発。いくら小さいと言っても威力は相当なもので、ジョージといえども不意を衝いて高速で飛来した水槍アクアランスを避けることはできず、ジョージの顔面へ到達させる事に成功する。

 「うっ!?」「あぁ!?」

ジョージは急に顔へとぶつかってきた水槍アクアランスに驚き思わず攻撃の手が鈍る、狙い通りの行動だ。だがしかし、驚いたのはジョージだけではなく、エドもしっかりと反応をして行動が遅れた結果、剣をしっかりと受け止められてしまった。そして先程と同じく2人だけの戦いに戻ってしまう、変わったことといえばジョージの殺気が、自分にも向けられているという事だ。これでジークも警戒されて、不意打ちはできなくなってしまった。


 特に手出しができないまま、戦闘は続いている。エドに渡した飴も最後の一粒を食べていた、もう長くは持たないだろう。そう思っていた矢先、エドが巨大な何か(・・・・・)の一撃で後ろへ吹き飛ばされてしまう。エドは深刻なダメージを負い、治療をしなければ立つことすらままならず、放置すれば命に関わるだろう。駆け寄ろうとした


 その時、とてつもないプレッシャーを感じて足が動かなくなる。なんとかエドが吹き飛ばされた方に顔を動かすと、そこにいたのはジョージではなく、巨大でおぞましいオーラを放つ狼のような生物がいた。口からは血液を垂れ流し、爪には肉片がこびりついている。その生物の周りには巨大な狼型生物に比べると少し小柄な犬型生物が5匹、こちらの小柄な方はおそらく討伐対象であったガルムだろう。だが狼型の生物もいるとは聞いていない。

 「いやぁ、遅かったよ。フェンリル」

 「……フェンリル?」

 「おや、君はフェンリルを知らないのかい? 僕の相棒なんだよ。可愛いだろう?」

ジョージは愛犬と接しているようにフェンリルと接している、フェンリルの方も飼われている犬のように従順で主人であるジョージの事を信頼しているように見える。

 「僕だけだったらエド君といい勝負だったね。でも僕にはこの子達がいるから、負けることはなかったかな? そして何も知らない君たちの戦いぶり、面白かったよ」

 「…それがお前の切り札か」

 「切り札じゃないけれど、今回はそうなっちゃったかな。ああ、大丈夫。僕の命令がないと動かないように躾けてあるから安心してね」

 「ハッ…ガルムもフェンリルも全部、お前が動かしてたって訳か…」

 「ガルムはある方からの頂き物(・・・・・・・・・)だけどね。さぁ、僕は先に進まなきゃならないんだ、そこをどいてくれるかな。別に返事はいらないよ?」


 エドが倒れた今、ジョージの標的が完全に自分へと移った。このプレッシャーは今まで2人に向けていた殺意をすべてジークに向けた事によるものだろう。ゆっくりとジョージはこちらへ歩き始めた。それを見てジークは、カルガントロの2人の事が脳裏をよぎった。


 ジョージは、ある程度ジークに近づいたところで足を止め、今度は腕を上げた。あの斬撃が飛んできて、自分の体が引き裂かれる映像がジークの目に浮かんだ。まだ、まだだ。まだ俺はやれるはずだ……!!。とっさに何かを考えた結果、一番斬撃を防げる可能性のある魔法を詠唱してはどうかと思いつく。

その魔法は少し前に、エド達が影に襲われた際に使ったあの魔法だ。あの時は全方位に壁を作ったが、あのような芸当は相当な魔力量の持ち主のリズでなければ出来ない。無論、ジークもかなりの術者だがリズのような化け物じみた魔力は持ち合わせていない。だが、ジーク一人を隠せる大きさでそんなに大きなものでなければ、小さくとも頑強な壁を造りだすことも可能なのだ。壁をより強固なものとするために全部の魔力を注ぎ込み、ジョージに気づかれないようギリギリまで引き付ける。


 そしてついに、ジョージの手が真一文字を空に描く。そして風切り音、斬撃を放った音だ。ジークは溜めていた魔力を一気に詠唱として吐き出す。

「 我の守りは何人も寄せ付けぬ! 守護岩グランドウォール!」

一気に地面から土壁を引き上げて身を守る。間一髪、斬撃を防ぐことに成功するも、耐えた衝撃で岩壁が崩れる。崩れた土壁の奥に見えたのは、もう一度ジョージが腕を振る瞬間だった。今度は間に合わない、魔力を込めて造った壁が一撃で崩れ去ったのに、短時間で作成した壁なんて何枚造ったところで無意味だろう。

そして風切り音。ジークは思った、やれることはやりつくした頑張ったと、どれだけ逆らっても逃れられなかったこれは運命だろう、と。力が抜けて崩れ落ち地面に膝をつく。絶望という言葉が頭を(よぎ)る。

 「あーあ…皆無事に逃げ切れたかな……」

そっと、最後になるだろう独り言を呟いた。


 しかし、その独り言には答えが返ってきた。

 「おうよ! 俺ちゃん達がしっかり保護したぜッ!」

ジークへ迫っていた斬撃を背後から飛んできた小さな鎌が弾いて打ち消した。そしてその鎌はブーメランのように声がした方へ飛んでゆく、新たな乱入者の元へと――。


 「大丈夫かー! 生きてるかー!」

彼は、戦闘の最中ということを意に介さないような明るい声で、ジークの頬をペチペチと叩いてくる。全身の力が抜けて立てないし、今だ魔族化したジョージとの戦闘の真っ最中なのに、何故か彼を見ていると安心できた。少し目が潤んだ。

 「だ、大丈夫だよ…」

 「そーかそーか! いやぁーそれにしてもあんた学生だろ? よくやったなぁ!」

彼はそう言ってほめてくれるが、その間もジークの頬をペチペチと叩いている。思ったより力が強くて頬が痛い。だがそれよりも、ジークが全身全霊で魔力を込めて造った土壁を、それを一撃で破った斬撃を、たった一つの小さな鎌で弾き消したこの男はいったい何者なのか、と。その疑問について考えるより早く、別の声が聞こえた。

 「ああもう、何でウィルはいつも一人で走ってくの? いっつも私を置いて行って! …ってあれ? その子大丈夫? 手当てしようか?」

彼の事をウィンと呼ぶ声の主はリリアと同じぐらいか少し上の女性、そして手に真珠のようなものが先端に付いた杖を握っている。心配したような目でこちらを見つめて、いつの間にか顔にできていた切り傷へと手をかざして詠唱する。

 「 神の恵みよ、弱き者の傷を癒したまえ。 治癒ヒール

彼女の手から出たほのかな緑の光が、ジークの頬の傷を癒してゆく。そして彼女が回復魔法の適合者であることを知ると、バッと上半身を起こして頼む。

 「あんた、回復魔法の適合者ならあそこに倒れてる人を治療してやってくれっ! 頼むっ!」

先程、フェンリルから受けた攻撃によって大量に出血していたエドに治療を頼み込む。あの吹き飛びようを見た限り、おそらく骨も何本か折れているだろうし、命があるだけ奇跡だろうから必死で頼む。

 「…分かった。彼は私が責任を持って治療するから、あなたは安全なところにいてくださいね」

 「おうよ! あとはエリーと俺ちゃんに任せておけって、なっ!」

責任感の強い彼女と、不安なんて一つもないと言わんばかりの笑顔の彼を見て、すべてを委ねようと思った。

 「さぁて……あんただなぁ? 俺ちゃんのかわいい後輩ちゃんをいじめてくれたのはぁ」

 「まったく、次から次へと湧いてくるね…君たち人間っていうのは虫と同じかい?」

 「おうおう、言ってくれるじゃあねぇかぁ? あんたこそ、俺ちゃん達の楽しい日常を害する害虫なんじゃねぇかぁ?」

 「…口だけは達者なようだね? でも、その口もすぐに何も言えなくしてあげよう。…殺れ、フェンリル」


 ジョージの命令を受けて、エドを一撃で吹き飛ばした、狼型生物のフェンリルが唸りを上げて、鎌を持った彼に突撃する。それを少し遠くから心配そうに見つめるジークとエドを回復中のエリーがいた。ジークが見るに、あの魔族より強いかもしれない怪物を、彼がたった一人で倒せるとは想像できない。それに加えて周りには5体のガルムもいる、この状態をどうやって彼は切り抜けようというのだろうか。心配ではあるが、あの鎌の使い手についてもとても興味があった。

 「このわんころ躾けられてんなぁー、かわいいじゃんよぉ」

巨大でおぞましい狼型生物を前にしてもこのセリフ、並みの人間に言えることではない。相当自分の腕に自信があるか、もしくは命知らずの馬鹿か。彼の周りをガルムが囲み、フェンリルが血が滴る口を大きく広げ、彼を食い殺そうと近づいてゆく。その彼はまったく避けず、表情も変えない。そして、そのままフェンリルの口の中に地表の土ごと納まった――ように見えた。


 フェンリルに食べられたはずの彼は、フェンリルの真上に現れる。

 「おうおう! 俺ちゃんの幻影に騙されてることにも気づけないなんて、魔獣失格じゃん?」

空中に現れた彼は、そのままフェンリルの頭の上に降り立つと頭をなでる。かなりの余裕があるようだ。フェンリルが、頭の上で鋭い鉤爪を振り回して、ようやく彼は頭から飛び退く。

 「…何をやってる。さっさと食い殺せ!」

ジョージはフェンリルに向かって怒りをぶつけ、さらには斬撃を飛ばしてぶつける。

 「いくらご自慢のペットだって言ってもよ、魔獣に怒り散らして可哀想じゃねぇかぁ?」

 「黙りたまえ…僕が誰だかわかって言っているのかっ!」

 「どうせ魔族と人間の混血とかだろぉ? その紅眼の割に力を感じねぇからなぁ。まぁ魔族側としても使い捨て程度にしか思われてねぇと思うぜぇ、あんた」

この言葉にとても驚かされる、ジョージは魔族の中でも上位だと思っていた。だが、あっさりと混血であることを見抜き、力を感じないという理由と、魔族側の意図をも明確に考察する彼の実力は底知れない。

 「どうして君にそんなことが分かるっ! 人間程度に何が分かるんだっ!」

 「俺ちゃん本物の魔族と会ったことあるし、戦ったこともある。だから分かるんだよねぇ」

 「黙れっ! 何をやってるんだ、さっさと殺れフェンリル!」


 もう一度命令が下され、フェンリルが襲い掛かる。先程とは違ってむやみに噛み殺そうとせず、しっかりと彼を見据えて鉤爪で引き裂こうとする。その攻撃を即座に見切った彼は、鉤爪が届くギリギリで躱してフェンリルの頭上に跳びあがる。そして一撃。鎌を両手でクロスさせて、刃とは逆の方を首筋に叩き落す。するとフェンリルの体から力が抜け、白目をむきながら地に倒れた。即座に周りにいたガルムに向かって、両手の鎌を投げたと思うと、一瞬にして5匹全部を昏倒させた。人間離れしたその技は、彼の実力のほんの一部、そう思わせる何かが彼にはあった。


 自分の切り札でもあったフェンリルを、意図も容易く倒されて、そして相手は無傷。まったく状況を理解できない、どうしたらいいのかが分からない。とにかく頭にあるのは攻撃せねばという思考だけ、とにかく斬撃を飛ばしてあいつらを倒すしかない。そして腕を上げようとすると、腕が上がらない。そして気づく。腕に出来ている見覚えのない傷と、動かない腕の反対を通り過ぎて行った小さな鎌(・・・・)を。

 「なんだこれは…僕に何をした!!」

 「俺ちゃんの鎌にはさ、マンドラゴラの煮汁と食人植物の消化液を混ぜた麻痺毒が塗ってあるんだよねぇ。極少量だから、1回だけしか切れないんだけど、まぁあんたを捕まえるには必要だったからねぇ」


 マンドラゴラの煮汁は、食人植物の消化液と混ぜると、消化液の消化能力を無効化し、時間がかかる麻痺効果を、より強力で即座に効果が出るようにしてくれるらしい。麻痺毒は強力なものほど高価で、使用される素材もかなり入手難度が高いものや、作成に時間がかかるものなどを使用するため、簡単に手が出せる代物ではない。その代わり、召喚魔法の毒大蛇バシリスクよりも、少量の麻痺毒で強力な麻痺を起こすことができる。


 最初に麻痺したのは右腕だけだったが、徐々に足や左腕までもが麻痺してくる。段々と思考も麻痺しだし足元がふらふらする。そして意識が暗転する。ジョージの体から力が抜けて、後ろに倒れこむ。ジークやエド達が、あれだけ剣で切り込み魔法をぶつけて倒せなかった奴に、たった数回こ攻防で勝利する。彼らは一体何者なのか、そしてどういう方法でそのような力を身に着けたのか、という事にジークは興味を示さずにはいられなかった。


 そしていきなり、先程気絶させたはずのフェンリルが目を覚まし、ゆっくりと起き上った。彼も即座に反応して鎌を構える。しかしフェンリルは、戦いに負けて地面に倒れている飼い主(ジョージ)に、ゆっくりと歩いて近づいたと思うと、全身でジョージを囲って守るようにもう一度倒れこんだ。

 「…こんなにご主人を慕ってくれるわんころぐらい、しっかり守ってやれよなぁ…」

彼は誰にも聞こえないような声で、そっとつぶやいた。

 

 それからしばらくして、周辺諸国の討伐隊も集まり、ガルムとフェンリルの捕獲と裏で手を引いていた混血の人間(ジョージ)の事が知らされた。ガルムは周辺諸国に1匹ずつ引き取られ、フェンリルとジョージは帝国が引き受けることになった。このことは瞬く間に大陸中に知れ渡り、エド達の名前も、魔族の混血を抑えて勝利に貢献したとして、広く知られるようになった。そしてジークが気になっていたリリア達は、キースの怪我もあったため、転移した後いち早く学院に戻って治療をしているそうだ。とりあえず安心だろう。リズとケルトも同伴しているらしい。

 

 ***


 あの激戦の直後、エドは魔法によって回復し、彼に背負われて眠っていた。ジークは何とか歩けたので、肩を支えてもらいながら歩いて、帝国への帰路についていた。戦闘が終わったころにはすでに夜で、ジーク達は帰路の途中にある村に泊まらせてもらっていた。エドをベッドに寝かせた所で、ジークは二人に感謝の言葉を述べて、改めてお互いに自己紹介をすることになった。


 「えーっと、紹介が遅れたなぁ。俺っちはウィルってんだ、よろしくなぁ!」

 「私はエリーザ、回復魔術を専門にやらせてもらってるの。怪我した時はいつでも来てね」

片や空元気、片や女神スマイル。それをさらっと受け流して自己紹介。

 「俺はジーク、ファミルア学院の高等科4年だ」

二人は一流の魔術師だそうで、たまたまギルドに寄った時に、カルガントロの一人がフェンリルの存在を伝えたところ、この二人が臨時で派遣されたらしい。もちろん二人はジョージがいるなんて想像もしていなかっただろうが、即座に対応して事を収めた。その強さはいったいどこから来るのか。

 「ウィル…さんは何故そんなに強いんだ?」

 「俺ちゃんは2年間、アルヴ大陸で生活してたんだよ。だから魔法の技術と理解は一流だぜぇ? あと気軽にウィルって呼んでくれて構わないぜ」

 「んじゃウィル。あの鎌を使った技術はどこで学んだんだ?」

 「あれは我が家に代々伝わる家宝なんだよ、もちろん技術は自分で練習して身に着けたもんなんだが、この技術は亜人の武術が基礎になってるとか、そんなような事を聞いたことがあった気がするなぁ」

 「亜人…ってなんなんだ? 魔族とかエルフとは違うのかよ?」

 「あぁ、人間で亜人の存在を知ってる奴は、ほとんどいねぇんだったなぁ。亜人ってのはギリー大陸に住んでるって種族らしい」

 「ギリー大陸って、移動するってやつ?」

いつの間にか起きていたエドも、会話に参加する。まだ時々痛みが走るのか、苦悶に顔を歪めるとエリーがせっせと世話をしてくれている。この様子だと、すぐに歩ける程度まで回復する時も近いだろう。

 「実はギリー大陸っていうけどな、アレは一匹のでっかい亀の背中なんだぜぇ? もちろん、大陸亀だって生物なんだから移動するし、移動するおかげで人間が奥地まで踏み込まないから、ほとんどの人間に亜人は知られてないってぇわけよ」

 「ウィルは亜人に会ったことが?」

 「いんや、俺ちゃんは見たことも会った事も無いなぁ。出来れば会ってみたいもんだねぇ」


 夜遅くまで談話をした後、部屋を借りて眠った。翌朝になり村を出発して、ファミルア学院へと歩き出す。エリーの回復魔法がとても効いたのだろう、エドも少しであれば歩けるほどまで回復していた、予想以上だ。でも、やはりまだ怪我をした翌日のため、休憩をはさみながら数日かけて移動した。その間もいろいろな話を聞かせてもらい、質問した。おかげで知識量も増え、興味があるものも増えた。そして移動を開始して5日目、完全にエドの怪我も治り、ファミルア学院に到着した。


 1週間ぶりの学院が、何故かとても懐かしく感じた。そして出迎えてくれるリリアとルアンにシュミットとキースに、怪我が治ったミルド。彼らを見た瞬間に、思わず涙ぐんでしまうが、みんなに見られないようそっと拭った。エドもケルトとリズと合流し、リズが泣きながらエドに抱き着くというハプニングもあった。エド達が学院を去る時には、学院長も見送りに出てきてくれた。

 「学院の大事な生徒を、安全に帰れるようにしてくださったそうで本当にありがとうございます。とても感謝しきれません…」

 「いいってことよぉ! 俺ちゃんにかかれば万事解決OKってこったな!」

 「ウィルったらすぐに調子にのる…。あ、こちらこそ楽しい時間を頂きましてありがとうございます」

 「いえいえこちらこそ…」

学院長とエリーがお礼合戦を繰り広げている間、エドとジークが感謝の言葉を述べる。

 「俺が飛ばされたとき、治療してくれって頼んでくれたらしいな、本当にありがとうな」

 「いや、あんただって最後まで俺をあいつの斬撃から守ってくれたじゃないか、ありがとう」

 「へっ、なんか照れくさくていかんな…」


 そして互いに最後の別れを述べると、エド達3人とウィルとエリーは帝国へ向かって出発するのであった。


今回も8000字目標達成いたしました。どうも、狼兎です。

毎日コツコツと書き続けて書き終わりました14話となります、かなり更新頻度は落ちてしまっていますが、頑張って書いてます!(ちょっと考えながら書くようになりました)

今回までが戦闘回となります。新キャラのウィルとエリーザは、口調と性格にキャラの個性を考えて書いてみましたがどうでしょうか?しっかりと個性が出ていたら自分の狙いは成功なのですが…。

もうそろそろ、第1章の完結になるかなぁ…とか思いつつ書き進めますので、これからも応援等よろしくお願いします!

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