11.新たな依頼
2/26 グループをユニオンに変更
魔術師が集まってできたグループの事をユニオンとしています。
装備を整えて明日の朝に出発しようとしていたその時、三人の下に召集がかかった。魔術ギルドからの召集である。三人は情報収集の為にギルドの依頼を大量にこなしていたので、その依頼達成速度から実力者だと認められていた様だ。
三人が魔術ギルドの扉をくぐると中は異様な雰囲気で包まれていた。おそらく実力派の魔術師ユニオンが三つ集まっているようで、他のユニオンを警戒している。八人のユニオンが二つと五人のユニオンがひとつ。
しばらくして二回からギルド長らしき人物が降りてくると魔術師達の視線はその人物へ向いた。
「魔術師諸君、急な呼びかけにも集まってくれてありがとう。私は魔術ギルド帝国支部長のゾラン・ガラドアだ、以後よろしく頼む」
ギルド長直々に姿を現した事に驚く魔術師達を見る限り、ギルド長が人前に出ることはほとんど無いということが分かる。
「今回集まってもらったメンバーは実力のある者達だけに絞らせてもらっている、何せ緊急事態だからな」
ギルド長の緊急事態という言葉に一層空気が張り詰める。
「グリント共和国にあるギルド本部から要請があって、我々帝国支部からも四組出すことになった。要請内容は捕獲、というか討伐なんだが....普通じゃない。共和国周辺の村のひとつが一夜にして全滅しているのが発見された。その村人達を全滅させた魔物を探し出して可能ならば捕獲、無理ならば殺せという内容だ」
グリント共和国は、平和主義者が政治をしており、大陸内でも一番国民の生活が安定している国だ。戦争しない国なので商業の中心となっており、周辺の国々から商人が集まってくる。そのために共和国と戦争をしてしまえば他の国とも戦争になりかねないので、共和国には戦争を仕掛ける国は無いと考えられている。それで今回の依頼は全ギルドに要請されていて、なおかつ人ではない可能性が大きい。
「今回は周辺諸国と協力して他の村の安全確認をして欲しい、グルフィンズとファールン術団、カルガントロとその三人で組んでもらう。そうすればもしその魔物を見つけた場合は最低二ユニオンで攻撃を開始してくれ。以上だが質問は?」
グルフィンズと呼ばれたユニオンのリーダーらしき人物が手を上げる。
「村をひとつ破壊されたぐらいで何故こんなに大規模作戦を取るんだ?それも周辺諸国と組むなんて相当なことが無い限りありえないと思うんだが、何があったのか教えてもらえないか?」
彼の言い分も当然だろう。村ひとつを破壊されたぐらいで戦争しているはずの国々が協力し合ってある魔物を討伐する。そんなことは実際皆無に等しいため、何か裏があるのではないかと踏んだ故の言葉だ。
「....しかたない、お前達には本当のことを話そう。村を襲ったと思われるのは....ガルム五頭だ」
ガルムという言葉を聞いた瞬間、魔術師達がざわめき出す。
【ガルム】は犬型の魔物で主にフェルド大陸に住んでいて、魔族のペットとして飼われてていることが多い。が、人類は一噛みされれば命は無いという強さの猛獣であり、フェルド大陸に初上陸した際に何人も首を噛まれ千切らら地獄送りになったという実話が残されているほどだ。殺されたのはアルヴ大陸を超えた船乗りだったために、相当な手練れを一瞬にして噛み殺した猛犬は恐れられている。
「そ、そんな....ガルムが五頭...!?一体そんなにどっから来たんだよ!?」
「我々ギルドも総力を上げてどこからやってきたのかを探しているんだが....魔族がこの大陸にやってきている可能性も否定しきれんのだ、だからこの大規模作戦というわけだ」
魔族、ガルムと嫌な単語ばかりが耳に入る。今回の依頼は一筋縄では行かないようだ。
「では、グルフィンズとファールン術団はグリントへ、カルガントロと三人は途中で魔術学院の精鋭隊と合流した後に共和国周辺の村を探索に向かってくれ。それでは諸君、幸運を祈る」
かくしてギルド会議は終わり解散するが、皆の顔は沈んでいる。何にしろ一撃即死の怪物を討伐または捕獲しろと言われているのだから仕方ないといえば仕方ない。ギルドから出てしばらくすると一緒に行動することになったカルガントロの八人の内の一人が話しかけてきた。
「お互い厄介な事に巻き込まれてしまいましたな。どうも、私はカルガントロのリーダー、ジョージ・フランクだ。以後お見知りおきを」
「どーも、俺はエドウィン、気軽にエドって呼んでくれたらいいぜ。俺たちはまだまだ若輩者だから先導よろしくお願いしますよっと」
「承知したよエド君。ところで君さ、ガルムって見たことあるかい?」
「いや、俺は話に聞いた事があるぐらいだな。第一俺達はそこまで旅をしてきた訳じゃないんだよな、帝国北東にある森林の向こう側にある小さな町の出身なんだわ、だからまだまだ何にも知らねぇんだ」
「ガルムは見たことないか....。ん、それじゃ仲間に呼ばれたからまた後で」
ジョージは仲間に呼ばれてカルガントロのユニオンに戻っていった。
「カルガントロか....リズ、あいつどう思う?俺少し気になることがあったんだが...」
「んー、特に何かあるわけでもないし、取っ付きやすい人っぽかったけどそれがどうかしたのかしら?」
「なんかジョージと話してるとき違和感があったんだよな、まぁ大丈夫だろうから何でもいいんだが」
エドはさっきのジョージとの会話になんとなく違和感を感じていたが、別の気配を感じただけだろうと思うことにした。
翌日、三人はカルガントロのメンバーと一緒に被害にあった村へと出発する。
その村へ向かう道中にある村の安全確認と聞き込みも忘れずに行っていると、ある村の少年が犬の群れを見たと言った。その少年の話によると、夜中にふと目が覚めて窓の外を見ると目が紅く光った犬の群れと一匹の巨大な何かを発見し、その目にとてつもない殺意が込められている事に気付くと、恐怖で体が動かなくなったらしい。ガルムは赤黒い体毛と恐怖を埋め込む紅い目が特徴で、恐らく少年の見た犬の群れというのはガルムの群れだったと推測できる。その群れは村から少し離れたところを通り過ぎていったという。
少年から得た情報を元にガルムが歩いた跡を辿って別の村へ、その村でもあの少年と同じような証言がとれると、段々と皆の緊張も高まってゆくのが分かる。日が沈む頃、ついに一番の証拠である足跡を発見する、その足跡は村の少年から聞いていたガルムと思われる足跡数体と、その四倍はあろうかという大きさの足跡だった。それを見てカルガントロの一人が声を上げる。
「おい...大型の魔物でガルムを従えるって言ったら皆思い当たるのがいねぇか....?」
エドとリズを含む四人ほどはポカンとしているが、他のメンバーには思い当たることがあるようで口々に呟いている。「フェンリルなのか...?」と。
【フェンリル】はフェルド大陸に生息する大型の犬のような風貌をした魔物。
その強さは人類の国ひとつを一体で軽々と破壊しつくすことが出来ると言われていて、使役するにしても魔族の貴族(魔族は強さに応じて位が授けられる)が数人でやっと成し遂げられるという強さだ。
それが人類の住む大陸へ上陸していれば被害が出ているはずであり、それがないという事は使役されている事はほぼ確定と言っていいだろう。つまり魔族がエイドラ大陸に上陸してきているという他ならない証拠だった。
カルガントロの一人がギルドに連絡を取るため、召喚した馬で帝国へ引き返していった、残ったメンバーは皆生きた心地がしないという顔をしていて血の気が無い、ただ一人を除いて。
「そろそろ....頃合いかな...?」
ふと誰かがそう呟くが気付いた者はいない。
これから先に不安しか感じられなかった。
すると突然、カルガントロのリーダー、ジョージ・フランクが歩き出した。
「ねぇ、君たちってさ、魔族って見たことあるかい?」
さっと振り向いた彼の目は夕焼けの空より紅く光っていた。
どうも、突然の新キャラ登場させました狼兎です。
前回、投稿時間を大体決めて書き始めたのですが、新キャラ登場とネーミングセンス皆無のおかげで時間がかかってしまいました....。
改めて小説を書くことの難しさを実感しています(笑)
かなりの急展開というか理解できてない方も多いと思うので
恐らく後で修正入れると思います。
意見や指摘等ありましたら勉強のため、お願いします。