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君のようなひと、僕のようなひと
剣を握ることを選んだ僕は剣を一週間で手放すことになる。
「先輩、すいません」
僕は謝ることしか出来なかった。
入部して一週間でまさか剣が握れなくなると思わなかった。
まさか…剣道がトラウマになっていたとは…
「いいよ。しょうがないよ。勇気持って入ってきてくれてありがとう!ちょっとずつ慣らしていこう!
無理せずに一緒に頑張ろうね!」
そう笑って頭を撫でた。
なんでこんなに先輩は優しいの?
僕はいつの間にか君のようなひとになりたい…
そう思っていた。
これを"憧れ"というんだっけ?
でもそもそも僕らしいって何なんだろう…
僕は"僕"というものがないことに気づいた。
僕はまず僕らしいひとになることにした。