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縁談相手と誤解

 なんやかんやとすったもんだがありつつ王子殿下とマルコ様は無事出発なさいました。

 レティツィア様は随分お疲れのご様子でお部屋に戻られました。お茶だけお出しして、そっとして差し上げた方がよさそうです。


 わたくしはこの隙に、ヘルベルトさんに頼まれていたお使いに出ることにしました。

 外はとてもいいお天気でした。初夏とはいえ日差しはまだそんなに強くなく、散歩がてらに歩くには気持ちのいい陽気です。

 そういえばレティツィア様お気に入りのお茶の葉がなくなりかけていたのでした。帰りに行きつけのお茶屋さんに寄ってみようかしらなどと考えながら、お屋敷の裏門をくぐります。


「あ、君」


 背後から呼び止められて振り返ったわたくしの目の前にいたのは、見知らぬ男性でした。

 栗色の髪は綺麗に撫でつけられ、中肉中背というこれと言って特徴のなさそうな体を仕立ての良さそうな服に包み、整ったお顔立ちで、はしばみ色の瞳を細めてなんだかわたくしをじっくりと見ていらっしゃいます。


「当家に何かご用でしょうか?」


 裏門で呼び止められているだけにその可能性は低いとは思いましたが、万が一王子殿下のお客様であった場合を考慮して、念のため丁寧におうかがいします。


「ああ、いえ。あの、あなたはダニエラさんですね? シェルツ家の」


 思いもよらず、わたくしの名前が出てきて驚きました。


「……どちら様ですか? なぜわたくしの名前を?」


 領地にいる頃ならまだしも、王都に出てきてからはこのお邸の関係者以外に知り合いなどひとりもおりません。一気に不信感を丸出しにして問いかけると、目の前の男性は慌てたように両手を体の前で振りました。


「えっと、違います、怪しい者ではありません! 私はロゲール・ブフナーと言います」


 その言葉に、わたくしの目は点になりました。

 何ということでしょう。噂の好色領主が現れました。


 ロゲール様は確か三十五歳とお聞き及びしています。対して、目の前の男性はどう見ても二十代後半くらいにしか見えません。

 ……いえ、問題は年齢の話ではありませんでした。わたくしとしたことが、どうやら少し取り乱しているようです。


 それにしても、聞いていたのとだいぶ違います。

 目の前の男性はえげつない噂を流されるほどの醜悪さなど一切感じさせず、それどころか爽やか好青年の趣すら醸し出しています。てっきり親父特有の緩みきった体形に厭らしい笑みを浮かべる顔面と脂ぎった頭部をのっけた視覚的な拷問道具とすら思えそうな外見をイメージしていましたのに。

 ……いえ、問題は外見の話でもありませんでした。わたくしとしたことが、どうやら割と取り乱しているようです。


「どうしてわたくしだとお分かりに?」


 一度も会ったこともないのに声をかけてくるなんて猛者の所業。それとも前もって探りでも入れておいたとでも言うのでしょうか。だとしたら残念ながら、そういう手口は最もわたくしの嫌うところです。

 きっと睨みつけたわたくしにへらりとした笑みを浮かべると、ロゲール様はぽっと頬を染めておっしゃいました。


「見事な赤毛だとお聞きしていましたので。……本当に美しい赤毛だ」


 母譲りの赤毛がこんなところで仇になるとは。まだ日差しもそう強くないしと帽子をかぶって来なかったことが、今さらながらに悔やまれました。

 この国では赤毛はあまりおらず、珍しいのです。国外から嫁いできた母方の祖母が赤毛でしたので、その血は母からわたくし達兄弟へ間違いなく受け継がれています。というか、ここまで血が薄まってもまだ赤毛だなんて、赤毛強すぎでしょう。


 そんな訳で、無意味に目立ってしまうこの赤毛がわたくしは好きではありません。ですがまあ、持って生まれたものですから仕方ないと諦めてこの年まで生きてまいりました。

 ただし、容易に個人を特定されてしまうので、あまりそういう情報は出すなと常々母にお願いしてきたはずなのですが、個人情報の重要性をあまり理解していない母の痛恨の一撃です。

 仕方がありません。その件に関しては母に手紙でクレームをつけるとして、さしあたりロゲール様に確認しなければなりますまい。


「ロゲール様、この度のお話は大変ありがたいことながら、今回はお断りしてくださいと母には申し上げたはずなのですが」


 わたくしの言葉に、ロゲール様は小首を傾げました。


「そうなのですか? 私はまだ何もうかがっていませんが」


 ちっと舌打ちをしそうになって、そう言えばその話をしたのは一昨日の夜だったことを思い出しました。昨日手紙を出したなら、ロゲール様の領地までまだ届いていない可能性もあります。


「私は昨日からこちらに用事で来ていますので、もしかしたら連絡が入れ違いになったのかもしれませんね」


 それならそれで、仕方ありません。顔を突き合わせていては大変言い難いのですが、今この時、この場で断るまでです。わたくしは背筋を伸ばしてロゲール様を見据えました。


「ロゲール様」


「は、はい」


 わたくしの改まった雰囲気に気圧されたのか、ロゲール様はぴしっと姿勢を正しました。


「今回のお申し出は大変ありがたいものとは存じておりますが、わたくし、あなたと結婚するつもりはございません。ですので、誠に申し訳ございませんが、このお話はなかったことにしていただけると」


「あ、あの!」


 立て板に水の如くお断りの口上を述べるわたくしを、ロゲール様は慌てたように遮りました。


「あの、やっぱり誤解をしていませんか」


「誤解?」


 小首を傾げて聞き返すと、彼は恥ずかしげに俯きました。


「はい。その、噂が……いろいろとありますので、心配になって」


 なるほど。好色領主にまつわる噂の数々を気にしていらっしゃるのですね。そりゃあまあ、あんな噂を聞いて気持ちよく嫁に行けるほど肝の据わった女性はなかなかいないでしょう。しかし、噂が事実ではないというのであれば、何かしら対策をとるのが当然ではないでしょうか。

 つまり、噂の流布を甘んじて受け止めているということは、何かしら後ろ暗いところがあるのではないかとわたくしは思うのです。火のないところに煙は立たぬと言いますし。

 何とも答えようがなくじっとりとした目つきで立ちつくすわたくしに、彼はしょんぼりと肩を落としました。


「やっぱり嫌ですよね。でも、弁解させてください。あの噂は仕方がなかったんです」


「……はあ。仕方がない、とは?」


 大の男がしょんぼりする風情がなんだか少しだけ可哀そうになって、わたくしは話だけでも聞いて差し上げることにいたしました。話の続きを促すわたくしの言葉に、彼は勢いよく顔を上げて話し始めます。


「私は今まで五回の離婚歴があります。世間の噂では私が新しい愛人にうつつを抜かして愛想を尽かされたとか、新しい妻を迎えるために飽きの来た妻を追い出したとか、私の暴力に耐えかねて家を飛び出したとか、ありとあらゆる噂がありますが、それは全部事実無根です。今までの妻達は全員……その、家を出て行ってしまって」


 眉尻をハの字に下げて情けなさそうに話す様は気弱そうで、なんとも憐れみを誘います。


「外に男をつくったのもいましたし、ただただ田舎での生活が嫌で出て行かれたこともありました。彼女たちが口をそろえて言うにはどうも私はその……つまらないんだそうで」


「……五人もいて、ですか?」


 五人もの女と結婚して皆が皆つまらないと出ていく。にわかには信じがたいお話です。そんなことありますか?


「はあ……どうも私が結婚したいと思う女性はその、活発な方ばかりで。私は王都と領地を行ったり来たりであまり構ってやることもできず……。領地は田舎で畑と山しかありませんし、王都から嫁いできた若い娘さんにはどうも退屈なようで」


 ふむ。都会育ちの娘が娯楽のない田舎暮らしに嫌気がさして嫁ぎ先を飛び出したということですね。

 それだけ聞けば何となくありそうな気もしますが、真相がそういうことならそんな不名誉なうわさは否定するなりなんなり対策をなさればよろしいのに。

 考えが顔に出ていたのでしょうか、ロゲール様は気まずそうにぽりぽりと後頭部をかきます。


「最初の妻は浮気相手の男と駆け落ち同然にいなくなったんです。彼女の気持ちをわかってやれなかった私にも非がありますし、不貞が世間的に明らかになると暮らしにくかろうと思い、どうしようかなあと思い悩んでいるうちに、あっという間に盛大に尾ひれのついた噂が広まってしまって。その後はどんなに否定しても噂が独り歩きしてしまって……」


 困ったように笑うその顔は、なんとも人がよさそうで、あんな生々しい噂が流れたのが不思議なほどでした。


「ということは、離婚の原因はロゲール様自身ではなく、女性側にあったということですわね?」


「そうなんです」


「その他にもあれやこれやあられもない噂がたくさんございますが」


「全部でたらめです!」


 おっと、すごい勢いで一歩前に出ました。近いです。


「お、落ち着いてください」


「あっ、すみません」


 おとなしく一歩下がって待ての体勢になります。何故だか犬をしつけている気分になりました。


「事情はわかりました」


 彼の目的は、自身の悪評の払拭です。それはよくわかりましたし、まあこうして実際にお目にかかってみると、そう悪い方ではなさそうにお見受けします。


「あの、では、考え直していただけますか」


 さて、それはどうでしょうか。確かにあの悪評は嫁入りするには高すぎるハードルでしたが、わたくしが結婚したくないのは相手がどうこうという訳ではないのです。母にも断ると言ったことですし、ここは自分の気持ちを正直にお話しすることにいたしましょう。


「残念ですが、わたくしは当分結婚する気はないのです。それはお相手があなただからという訳ではありません」


 わたくしがロゲール様の顔を見上げてそう答えると、わかりやすく落胆の表情を浮かべました。無理もありません。こんな行き後れのわたくしに断られるなど、屈辱以外の何物でもありませんでしょう。そう考えるとなんだか急に申し訳なくなって、わたくしは励ましの言葉を口にしました。


「噂をお聞きしている限りでは、どんなにえげ……、じゃなくて、いやら……、ごほん、えーとえーと、ひどいお方なのかと思っておりましたが、お話をおうかがいして印象は随分変わりましたし、外見的にも端正なお顔立ちでいらっしゃいますから、きっと他に嫁の候補がたくさんありますわ」


 ですからあまり気を落とさずに、と続けようとしたわたくしの手が何か温かいものに包まれました。視線を下に落とすと、わたくしの左手をロゲール様が握っておられます。

 えーと、話聞いていましたよね?


「ではもう少し時間を頂けないでしょうか。私の人となりをもっと知っていただければ、考えを変えてくださるかもしれませんし」


 ロゲール様はそうおっしゃって、じっとはしばみ色の瞳でわたくしの顔を覗き込みました。

 ああやめてください、捨てられた子犬のような目をするのは!


「あの、別にわたくしでなくともいいではないですか。今日の今日まで見も知らぬ他人だったのですから」


 ロゲール様のお家はお金持ちだと母が言っていましたし、もとより貧乏その日暮らしのような我が家に持参金を期待されているわけではありませんでしょう。王族ゆかりのお屋敷勤務で培った行儀作法がメリットだというのなら、それこそそんな条件を満たす(かつわたくしよりも若い)娘は王都には掃いて捨てるほどいます。

 つまり、わたくしでなくてはならない理由など何もないのです。ましてやわたくしは結婚などしないと初っ端から宣言いたしております。ロゲール様がわたくしにこだわる理由など、皆目見当もつきません。

 困惑しながらも、握られた手を振り払うこともできぬまま、わたくしはそう尋ねました。


「今日は誤解を解いておこうと思ってここへ来たのです。その上でお断りされるのならば、それも仕方がないと思っていました。……先程までは」


 こてんと小首を傾げたわたくしに、ぽっと頬を染めたロゲール様がはにかんだ微笑みを浮かべて口走ったひとことは、わたくしに衝撃を与えました。


「その、ひ、一目惚れ……してしまいました」


 * * * * * * * * *


 壁に耳あり、障子に目あり――遠い異国の言葉ではありますが、障子というのは鎧戸のようなものだとか。

 建物の内部でさえ、このように他人の耳目を気にしなければならない殺伐とした世の中です。それがお屋敷の裏とは言え、窓から丸見えである天下の往来での出来事となると、見咎められないはずがありません。

 お使いから帰ってきたわたくしを迎えたのは、ゴシップに飢えた同僚達の喜色満面の笑顔でした。


「さっきの方はどなたなんですか!?」


「とってもいい雰囲気でしたわ!」


「手を握られていたわね! ねえ、恋人なの?」


「イイ男らしいじゃない? アンタもすみにおけないのねえ!」


「あら、でも、ダニエラさんにはマルコ様がいらっしゃるのに」


 行き後れのわたくしよりも年下がそろったメイド仲間、同い年の洗濯婦(既婚・通い)、何故か年上のおネエのシェフまで混ざっています。

 というか誰ですか、マルコ様の名前を出したのは。わたくしとマルコ様の関係は今や、ただの仕事仲間から獲物と捕食者という大変デリケートな関係に変わっています。できればそっとしておいていただきたい。

 そんな脳内モノローグを繰り広げるわたくしを置き去りにして繰り広げられる喧騒に、頭痛を禁じ得ません。


「いい雰囲気も何も……。母が勝手に進めている縁談の相手よ」


 ここで相手が悪名高き好色領主だと知れようものなら、天地が揺らぐほどの騒ぎになるのは目に見えているため、わたくしは名前を伏せて答えることにしました。下手をすれば闇討ちなどといった王都の治安を揺るがす事態にさえなりかねません。

 こめかみをもみほぐしながらそう答えると、どよめきが巻き起こりました。


「ダニエラさん、お嫁に行っちゃうんですか!?」


「そんな! 困ります、これからマルコ様は誰が担当すればいいんですか!」


「アタシ、アンタは動けなくなるまでここでこまねずみのように働いているもんだと思ってたわ」


「ちょっと、あたし聞いてないわよ、そんな面白そうな話!」


 同僚達は口々に好き放題言っています。

 ああ何故でしょう、目眩がしてきました。泣いてませんよ、泣いてませんとも。


「落ち着いて頂戴。わたくしは嫁には行かないし、マルコ様担当になった覚えもないわ。こまねずみなんていう小動物に仕事ができるのかどうかははなはだ疑問だけど、面白そうな話を提供する役目には絶対向いていないと思うの」


 そんなことないわよ、あんたの天然武勇伝はこの世に比類のない程面白いんだからとなんだか良くわからないことを喚き立てる洗濯婦、マリーはさらりと無視します。


「でも、お話が進んでいるのでは?」


 まあるい瞳をくるりと揺らして不安そうにそう言ったのは一番年下のメイド、ヨハンナです。まあ今でさえこのお屋敷はぎりぎりの人数で回していますから、働き手が減るとなると心もとないのでしょう。


「うーん、お断りしたんだけれど……」


 正直、わたくしの気持ちが変わることはないと思いますし、であれば、無駄でしかないその時間をもっと有益なことに使った方がいいのではないかと提案したのですが、とにかく断るのならもう少し自分を知ってからにしてくれと泣き付かれたのでした。

 まあ、こちらとしてはしばらくあとでもう一度やっぱり無理ですと言えばいいだけのこと。別に引き延ばしたのはこちらではありませんので、弄んだということにもなりませんし、文句をつけられる筋合いはありません。仕方がないので、少しだけ実態のない猶予を差し上げることにしたのです。


「でもそれはそれで少しもったいないですわね。遠目からしか見ていませんが、身なりもよろしかったし何よりお顔が整っていらしたもの」


 嫁に行って欲しいのか行って欲しくないのかよくわからない上に、堂々と面食い発言をかましたのはわたくしより五つ年下のメイド仲間、カルラです。


「あなたは顔が良ければそれでいいの?」


 呆れてそう言ってやると彼女はぷっと頬を膨らませてみせました。


「でも、家柄からいけばやっぱりマルコ様には敵わないんじゃないかしら?」


 おネエのシェフ、アンディさんが買いものでもしている主婦のように小首を傾げながら頬に片手を当ててそう言いました。

 何でもかんでもマルコ様につなげてしまうのは正直勘弁していただきたいのですが、お家柄が良いのは純然たる事実でございます。マルコ様は伯爵家の三男。本当であれば、わたくし達のような者とは接点などそうそうないような身分のお方なのです。


「そうよね。それに、あの無表情はちょっといただけないけれど、もともと端正なお顔立ちをなさっていらっしゃいますもの。身長も高いし、体形もすらっとしていらして」


「王子殿下付きの侍従を務めるからにはお仕事だってお出来になるんでしょう?」


「そう考えると、マルコ様ってかなりの優良物件よね」


「あの威圧感に耐えられたら……の話ですけれど」


「………………」


「……私には無理です」


「……ハードルが高すぎるわ」


 がくりと肩を落とす独身ふたりと何故かそれに参加しているおネエを眺めながら、そんなに怖いひとではないわよ、という言葉をどうにかこうにか飲みこみました。

 ほらね、みたいな生ぬるい目で見られるのも嫌でしたし、何よりマルコ様に関して怖ろしい新事実が明らかになったばかり――立派に怖ろしいひとになってしまったのです。今は何故かわたくしが捕食対象になっているようですが、それもいつ覆るかわかりません。被害が他に及ばないよう、身を守る術のない者は近づかない方がよろしいでしょう。そう考えると、今のこの無闇に怖がられている状況は悪いものではないのかもしれないとも思います。


 これは現状維持でよいでしょう。

 そう結論付けて、この不毛な会合を終わらせるべくわたくしはごほんと咳払いをいたしました。


「それはさておき皆さん、仕事は大丈夫なの? そろそろ夕食の下拵えを始める時間ではありませんか、アンディさん」


「まったくアンタは口うるさい母親みたいな女ねえ」


「あ、今の話は王子殿下と妃殿下にはご内密に!」


 やれやれと肩をすくめながらも厨房へ戻っていくアンディさんとそれぞれの持ち場に戻る同僚達の背中に念押しして、わたくしはふうと息をつきました。

 断るつもりの縁談を、わざわざお耳に入れる必要もないでしょう。知られたらそれはそれでまたなんだかいろいろと面倒くさそうです。

 王子殿下の半笑いが脳裏をよぎりました。……我ながら途方もなく嫌なものを想像してしまったものです。


 マルコ様にまつわるあれこれと、縁談相手の好色領主(濡れ衣)など、どうしてこうもいろんなことが同時に起こるのでしょうか。わたくしは平穏無事に淡々と日々を過ごしていきたいだけだというのに。

 まあ、考えても仕方ありません。

 縁談は断る方向ですし、マルコ様の件についてもふたりきりなどという極めて危険な状況にさえならなければきっと支障はありませんでしょう。

 ならば、これ以上考えても無駄なこと。

 大きく伸びをして、わたくしは深呼吸で気分を切り替えます。


「さて、仕事仕事」


 まずはレティツィア様に午後のお茶、でしょうか。

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