小話その1 ~兄のいつもの朝~
俺――上椋信成の朝は少し早い。
まず6時に起きて台所に立ち、朝食と妹の弁当を作る。なるべく冷凍食品を使わず、そして同じ物を使わないように考えるのは正直しんどい。だが、最近は献立を考えるのがちょっと楽しくなってきた。
朝食を机の上に並べ、出来上がった弁当の荒熱を取る間に先生を起こす。先生の部屋に行くと、先日片付けた筈の資料が崩れていた。その光景に呆れながらも、暢気に寝ている先生を起こす。
「朝やで先生、はよ起きぃ!!」
「……あと、5分…」
声を掛けると、毎度のことながらふざけたことをぬかすので布団を引っ剥がす。すると途端に寝惚け顔が引き締まり、むくりと起き上がる。
「おはよう」
「……はよぉ着替えて下さい。出来てんで」
相変わらずの変わりように呆れながらも、いつものように朝食を食べるように促し、リビングに戻る。
妹が朝食を半分食べ終わった頃、寝巻きから着替えた先生が姿を現す。先生が席について食べ始めるのを、いつものように仕事の準備をしながら眺めた。
妹は食べ終わると、身支度をして学校へ出かける。それを見送るために玄関へ行くと、妹は玄関の扉に手を掛けて出て行くところだった。
「気ぃつけてぇな」
「……うん」
妹はそう言って出て行く。見送った後茶の間に戻ると、先生が隠していた筈の栗金団を食べていた。思わずにやけ顔の先生の頭にフライパンを落とす。悶絶する先生の正面に座って栗金団を回収した。
「人のを食わんといてて何遍言ぅたら分かるんです?」
「隠しておく信たんが悪い」
「信たん言うな」
涙目の先生に分厚い辞書を落とす。しかしこれは避けられた。
「全く、どうしてこんなに暴力的になってしまったのやら」
「80パー先生のせいやろ」
泣き真似をしていた先生が舌打ちをする。そして話題を変えるためか、隣に置いていた資料を机の上に並べる。先生の顔はすっかり仕事モードだった。
「ってこれ3ヵ月後の仕事やろが!!」
俺の朝はこうやって過ぎていく。
この話を書く前、一度リア友に「かくかくしかじかな話を書いてみたいんやけど、どう?」と聞くと、「是非書け」と即答でした。しかも「兄は関西弁の予定やけど」と言うと、「京都弁を要求する!!」と言われました。頑張ってなけなしの知識とネット情報で書き上げました。京都在住の皆様、間違いがあった場合はご指摘よろしゅう頼みます。
これからもちょこちょこ更新しようと思うので、気が向いたら是非読んでやって下さい。
(※因みに、リア友との会話はうろ覚えです。某軍曹っぽいのは仕様です)