表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

コトダマ

久々の昼食を食べてから、私は失敗をした事に気がついた。

午後の授業を受けようにも、教師は全員死んだのだった。

堂々とサボれるなぁ、とかどうでもいい事を考えつつ私は校舎を歩きまわった。

ところどころ死体が落ちていたので、私は踏まないように気をつけて歩いた。

多少鉄臭かったが、まあこの位は仕方ない。

ついでに、制服が嫌な臭いだったので、その辺の生徒と交換した。

これでじっとりした嫌な感じが無くなった。

そして私は職員室から鍵を拝借し、屋上へ登った。

「……気持ちいい風、だなぁ」

まだ風が冷たいが、日差しが暖かい。もうじき、春が来るのだろう。

春になれば、私も高校2年生だ。

でも、もう私を虐める人はいない。

なんせ、みんな死んでしまったのだから。

「お昼寝、しようかな」

ここなら、血の臭いもしない。

私はごろんと横になり、初めて屋上で眠った。



「ん……」

少し寒くなって、目が覚める。

夕焼けが真っ赤で、屋上から見る景色はとても綺麗だった。

「……ちょっと、寝過ぎちゃったかな」

私はあくびをしながら、軽く屈伸する。

「帰ろう」

私はぼんやりとしたまま、鞄も忘れて自宅へ向かった。


家に帰ると、珍しく明かりがついていた。

「ただい……」

そして響く、父の怒鳴り声と母の甲高い泣き声。

どうしてこうタイミングが悪いのか。

2人共今日は仕事が早い日だったと知っていればもっと早く帰って、2階で眠っていたのに。

失敗したなぁ……。

「誰のおかげで飯が食えると思っているんだ! クソアマが!」

「わ、わたしだって最近は働いて……」

「ただのパートだろ? お前の給料と俺の給料の差を考えろや。ああ、俺はお前みたいな女と結婚した事が人生の中で最大の間違いだった!」

「そんな、酷いわ! わたしだって一生懸命やっているのに! 子育てだって、あなたがいない分頑張って……」

「お前の教育が間違ってたから、あんなに何考えてるかわかんねーガキになったんだろ!」

「わたしの責任じゃないわ! わたしだって、月子なんて産まなきゃ良かったって思ってるもの!」

「だったら捨てて来いよ!」

「できるならとっくにそうしてるわよ!」

「……」

ああ。

「あ……月子、帰ってたの? お、おかえりなさい……えっと、2階に行っててもらえるかしら?」

「いや、お前も座れ月子! 大体お前はいつも死んだような顔しやがって、ああ腹が立つ……」

「……お母さん、お父さん」

もう、いいです。

「二人共、死んじゃえばいいのに」

私は、少し笑いながら言いました。

毎晩、近所迷惑になる程うるさかった我が家は、とってもとっても静かなお家になりました。



私はお父さんの分だったはずのご飯を食べながら、つまらないバラエティ番組を観ていました。

そしてお風呂を沸かして、ゆっくり浸かりました。

なんとなく静か過ぎる気もしたので、好きなアーティストのCDを流してみました。

少し、賑やかになった気がします。今度、アルバムも買ってみたいと思いました。

そしてまた、対して面白くもないテレビを観ていたら、時計の針が進んでいきました。

ふと、私は横にある、倒れたまま動かないお母さんとお父さんとを見ました。

死体が2体と、私が1人。

私は1人。

ひとり。

独り。

「……あ、れ?」

まわりの人は、みんな死んだ。

違う。

私が殺したのです。

言霊で。

こんな使い方しか出来なかったのでしょうか。

もっと、上手く使えたらみんなで幸せになれたのではないのでしょうか。

「私は……間違えてしまったの、ですか?」

私は神様に、問いかけました。

答えは、返って来ませんでした。

私は、おかしくなっていたのでしょうか。

急に、事の重さを理解しました。

「い……いや……」

私は急に現実が怖くなりました。

私は、大量殺人犯です。

私は、親すら殺しました。

私は、独りぼっちです。

「あ……あああ……あああああああああああぁ!ああああああああああああああああぁあぁ!!」


私は、叫びました。

そして、家を飛び出しました。

夜だとか、年齢とか、目的だとか、そういうのは関係無くただ泣き叫びながら駆けて行き。

道路に突っ込んでいきました。

するとどうでしょう。

クラクションを鳴らされ、気づいた時には既には私の体は宙に浮かんでいました。

車が私を撥ねてくれたのでしょう。

ああ、良かった。

「私なんて……死んじゃえば……いいのに……」


私の願いは、

叶いませんでした。



私は、死ねませんでした。

これはあくまで予想なのですが、夜の12時を過ぎてしまったのだと思います。

そして事故で大きな障害を伴ってしまい、自力で動くことも、喋ることもできなくなってしまいました。

もう、あの忌まわしい口癖を声に出すことすらできないのです。

お医者さんは、よく私に言います。

「君は、悪夢を見ていたんだ」

これが、ただの夢だったらどんなに良かったことか、と思います。

お母さんも、お父さんも、学校の先生も、クラスメイトもお見舞いに来ません。

みんな、私が殺したからでしょう。

そして私は、一生病院から出る事はありませんでした。

これで、私の物語は、おしまいです。



最後に、1つだけ気になることがあります。

私にあの力くれたのは一体誰だったんでしょう。

私は、それすら思い出せなくなっていました。

もう何も残されてない私は、口を動かしました。

多分私は、「あなたはだれ」と言った気がします。

すると、狂った私に一つ言葉が聞こえてきました。

「    」



END


読んでいただきありがとうございました。

本当にこんな力があったら便利ですね。何でもし放題。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ