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科学的な幻使い  作者: 雪 渓
序章
7/21

第六話 入学式6


 圧巻だったハヤトのあいさつ、さらには日和のあいさつも無事終わり。式は新入生の退場によって幕を閉じた。


 ちなみに、日和の新入生代表挨拶はどうだったのかというと、何の不足もない大盛況であった。初めから終わりまで振りまかれていた自然な笑顔や、動きの端々に伺える女の子らしい仕草が異性だけでなく同性までもを虜にしたのであった。

 この事実は日和にとっては想定外かつあまり喜ばしくない出来事であったが、良くも悪くも彼女の持っている偉大な素質が周囲に認識されたのであった。


 さて、入学式を終えた生徒たちは講義室jとはまた別の武道場へと集められた。ここでクラスの発表が行われるためである。発表は武道場に入る際に配布された生徒手帳を兼ねた小型情報端末に、時間ピッタリに情報が発信されることで行われた。


「お、来たな」


 景介はポケットの中で震える端末を取り出して画面を見る。一緒にいた直樹と創夜も大方同じような反応をした。


「創夜はどこだった?」

「えっと、E組ですね」

「よし、一緒だな。直樹は?」

「あ、ぼくもE組だよ」


 そんなことを言っている間に、日和ひよりが遅れて入ってきた。


「ごめんね。遅れちゃった............って。な、何でアンタがここにいるのよ............」


 しかし、創夜の顔を見つけるとツカツカと歩み寄り、いきなり喰いかかっていった。しかし、その表情は動揺を隠すためのもののようで、日和の目には怒りと嬉しさの両方が写っていた。そんな彼女に対して、創夜は初めに景介に見せたように感情の無いというか、なにも見えていないような目で答える。


「どうしてって、日和に会いに来るために決まっているでしょ」

「ちょ、ちょっと! な、なにいってるのよ! 」

「え、聞かれたことに答えただけだけど? それに、僕が日和の前に出てくるのは君に会いたいときだけだよ」


 日和の頬がだんだんと赤くなっていくのを見て、景介がため息をつく。先ほど男女関係なく生徒の心を鷲掴みにした彼女が赤面する姿はこの人口密集地ではあまりにも目立ちすぎた。そして彼はそれを望んでいない。


「創夜、そのくらいにしておけ。で、日和はどこだったんだ? 」

「どこって、何が......」


 日和はほのかに赤みを帯びる頬をしたままで、少し機嫌悪げに景介に尋ねる。会話の内容を知らない周囲の人たちからの視線を気にしながら......というか、出来る限り受け流しながら景介は答える。


「組分けのことだよ。日和は何組だったんだ」

「んっと~。A組だよ。け......景介は、どうだったの? 」


 景介の少し困ったような顔に聞きづらそうにするも恐る恐る言葉を続けた。しかし、やはり返ってくる言葉は予想通りで、景介はおろか創夜も、ついでに直樹までもが違うクラスであるという日和には好ましくないものであった。


「まあ、そうがっかりするなよ日和」

「そうだよ、ガードの方はなんとかするからさ」

「............」


 三人がそれぞれに声をかける。前二人が冗談ぎみなのは気のせいではないだろう。ちなみに、最後のなにも言えなかったのは直樹である。


「はあ、もういいわよ。それじゃ、私は予定が入ってるからもういくからね」


 呆れた日和はため息をつくとすぐにいってしまった。


「よかったの?」

「大丈夫だろ」


 尋ねたのは直樹。答えたのは景介。


「あいつはあいつで何とかするさ。こっちはこっちで何とかしないとダメなことがあるから。なあ、創夜」

「そうですね。まったく、世話の焼ける子だよ」

「いや、まずはお前がここにいる理由からだろ」

「え、それはあのときに解決したのではないのですか?」

「お前の言うその時のが、俺が諦めて席に座ったことならそれは解決には至ってない」


 創夜が言葉を失っているうちに、景介は顔に笑みを浮かべて彼の肩をたたいた。


「今はもう聞かないけど......帰ったら、覚えときなよ?」


 そう言って武道場を出ていく景介。後には、項垂れる創夜と何もできずにソワソワしている直樹が残ったのだった。



 



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