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科学的な幻使い  作者: 雪 渓
序章
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第四話 入学式4



 入学式の会場は講義堂で行われる。また、クラス分けが式のあとで行われるということもあり、新入生は列を作って入場するということはない。よって、座席についての指示されていた内容は各自で時間を見て集合し適当な席に座っておくようにということだった。


 ベンチの上での(多少ヒートアップしていた)雑談を打ち切って、景介と直樹が会場へと足を運んだのは式の始まる20分ほど前だった。この時間になると数百席ある講義堂の椅子も、そのほとんどが埋められており、二人が一緒に入れる場所は少なくなっていた。


「ちょっと遅すぎたか」

「そうだね。あ、でも、あそこ空いてるよ」

「どこだ?」


 直樹の目線をたどっていくと、ばらばらと、まだいあている席があった。二つ続きで空いている席もいくつかある。なんでだ? と思ったが、その原因はその位置にあると景介は結論付けた。

 考えてみればすぐ分かることである。その場所はステージの目の前。しかも、教師や来賓。そしてステージから最もよく見える場所だったのだ。


 この高校が、いかにこのあたりの優等生ばかりが集まっているこの魔法科高校であっても、よほど自信のあるものや、アピールがしたくてたまらないという者以外は、それほど積極的な思想を持っているわけではない。逆に変に目立ってしまうことを恐れて式の出席者。ことさら主要人物の注目がどうしても言ってしまう「前方中程」の席にはあまり座ろうとはしない。


「んーまあ、いんじゃないか」


 だが、景介はそう言ってさっさと歩き始めてしまった。景介が少しはためらうと思い肩すかしを食らった直樹は、少ししてからそのあとを追った。


 ステージから見えやすいところに座ることは、景介にとって悪いことではなかった。代表挨拶をする日和ひよりには、既に「見ているから」と言いてしまっていたし、そう言わなくても彼女が自分の出来不出来を景介に聞くことは予想のできることだった。それならば、最初から見えやすい場所にいて「見ていますよ」とアピールしている方がいい。アピールの対象が教師や来賓などではなく友人というところが若干常識から離れているような気もするが景介はそれを考えないことにした。


 景介が前方の席を選ぶのにさほど戸惑いがなかったのは上記の通りであったが、彼は目的地へと近づくに連れてそれとなく違和感を感じるようになった。どうやらその違和感の根源わけは、席が空いているのはそこがステージから見えやすからという半端なことだけではなかったかららしい。


 席が近くなり、だいたいどんな人が座っているのかが分かるようになると、景介は違和感の正体をすぐに見つけた。席は、一人の少年を中心にして空いていたのだ。


 なぜ、そうなのか。


 景介は、その生徒から近寄りがたい印象を受けるかと言われるとそうは思わない。少なくとも、その後ろ姿からは得意なものを感じることもなかった。それどころかなぜか少しだけ懐かしい気さえする。


「ねえ、景介?」


 どうやら直樹も気づいていたらしく、彼もまた、あの少年の方を興味ありげに見ていた。


「あの隣に座らないか?」


 景介は試しに直樹に聞いてみた。どうしてか。不意に出てきた自分への疑問の答えは「なんとなく」という中途半端なものだった。普段の自分であれば絶対にないだろうと思われる行動をとろうとする自分に、景介は心で苦笑いをする。


 ただ、彼と話したくなったのだ。それは、周囲に人がいないからか。それとも、不意に感じたその懐かしさからなのかはわからない。ただ、なんとなく顔を合わせたかったのだ。

 そうしておいて、景介はもしあの少年がこれまでの自分の過去と接点がなかったとしても、式が始まるまでのあと十数分の時間を彼との会話で過ごすのも悪くないと思い直した。


 未だざわめく会場を二人はそくさくと歩いて行く。


「ねえ、景介。ここ女子ばっかりじゃない? 」

「え、ああ。そうだな」


 それがどうしたのだ。と思ったが、女子の割合は空席群に近づくにつれて高くなっていった。それから考えられる事象は何か?


(つまり、あの少年(あれ)がこの女性の陣(ハーレム)を築いている原因だと......)


 それに気づいたことで、若干気落ちした景介だったが今頃そんなことを考えてもしょうがないと思い、座ろうとしていたところ。例の少年の隣までくると、景介は彼に声をかけた。


「隣の席、いいですか」

「どうぞ」


 少年は、ゆっくりとこちらへ顔を向けてそう言った。その顔を見て、景介は自分の立てた推測が間違いでなかったことを確認する。

 その少年の顔はあまりにも秀麗だった。肌は白雪のように白く、細く鋭い瞳にはおぼろげな優しさと気品を兼ね備えている。その人とは思えないほどの美しさに、少女たちは魅了されていたのだ。

だがそれと同時に、景介は彼を始めて見たときの懐かしさがどこからきたのかがわかった。景介は彼を知っていた。それも、顔見知りのレベルではななった。






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