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科学的な幻使い  作者: 雪 渓
序章
1/21

プロローグ

 作者の事情により、未完のまま完結させております。ご了承ください。

 気がつくと、そこは闇の中だった。


 いつ誰が、どんな目的で、彼をここに連れてきたのか。そのようなことは全くわからない。


 地面が冷たい。


 少しずつ覚醒していく意識のなかで......歳は十歳ほどであろう、その少年はそんなことを考えていた。


 闇に目が慣れてくると同時に、少年はあたりが喧騒に満ちていることに気がついた。


 こだまする銃声。悲痛な叫び声を上げる者。建物が崩れていく破壊音。


 だが、そんなことよりも一層。少年には気になることがあった。それは、


「とう、さん......?」


 激しく震える幻素げんそ。魔術の発動に使われるはずのそれは、いま。ある者の意志で操られているかのごとく働いていた。ただ単に幻素げんそに指令を与える魔術師では、絶対に成し得ないことだった。


 それゆえに、少年は思い、叫ぶ。暗黒に吸い込まれてゆく恐怖から解放されるために。


「とおさぁぁぁぁああああん」


 彼の知っている範囲。その小さな世界の中で、そんなことができるのは彼の父親だけだったから。

 優しくて、起こると怖い。だけど、本当に強くていつも彼を守ってくれる。そんな父親以外に考えることは出来なかった。


 だが、現実は違った。


「やあ、少年。やっと起きたようだね」


 そんな言葉と同時に、部屋に明かりが灯される。いきなりの光に少年は顔をしかめ、すぐに声のした方を見た。

 そこにいたのは壮年の男性。病的なまでに細い体をしていて、その青白い顔に引きつった笑みを浮かべて少年を見ていた。そして怯える少年にその口の端をさらに醜く歪めて言う。


「君の言っている『とおさん』っていうのは、あれのことかなぁ?」


 次の瞬間。少年は惹きつけられるようにそっちを向いた。病気男の指差す先を。


「とう、さん?......と、とうさぁあああああん!!!!」


 そこにいたのは、右腕左足を失い、その他無数の傷を負いながらも、微笑みをたたえて少年を見つめる父親の姿だった。それでも、血だらけになってもその目には光が灯り、少年を見守る表情は暖かさに満ちていた。最後に散る一厘の花のように。


「君のお父さんは頑張ったと思うよ」


 男が再び口を開く。


「どこにいるのかもわからないか弱い息子を守りながら、私の部下を何百人と倒した。だが、それも終りだ。お前の父は、これから死ぬ」


「えっ?」

 

 それ以上、少年は何も言えなかった。どうすることも出来なかった。唇を噛み締め、ゆっくりと青白い肌をした右腕が上がっていく光景を、瞳に涙を浮かべて見ることしかできなかった。父はこちらを向いている。「お前のせいじゃない」と言っているようだった。胸が苦しくなり、暑くなって、叫びたくなった。喉が張り裂けてそのまま朽ち果てるほどに。


 男の腕が完全に少年の父親へと向けられた。刹那。突如として男の手の平から黒い影が現れた。太く、どす黒い、憎悪に満ちた大蛇のような影だった。


 それが。


 とうさんの胸を............

























 け、、、、ぃ、、、、、す、、


 け、、、、い、、、、、、、、、す、、、け


「けいすけっ!!」


「ああああああああああああああっ!!!!」


 布団から飛び起きた少年は全身に汗をかき、肩で息をしていた。


「ちょっと、こっちがびっくりするじゃない」


 焦点の定まらない目をこすって声のした方をみると、その本人はもう部屋から出ようとしていた。


「ほら、どうせまた夜更かししてたんでしょ? 一緒に行くんだったら早く起きるために何すればいいのかくらい考えなさいよ」


 起きてそうそうに制服に身を包んだ少女がいることは全く気にせず、少年はそのことを素直に謝罪した。少女が出て行ったのを確認して服を着替える。それが終わると昨日の夕飯をおかずに朝食を食べて歯を磨き、荷物を取りに自分の部屋へ戻る。


「あの夢をみたのは、何年ぶりかな」


 そんなことを呟くと、少年は悪いイメージを振り払うように頭を左右に振ると、荷物をもって玄関へ行った。


「どうした?」


 そこで待っていた少女がうつむいてるのを見て、少年は尋ねる。


「いや、ほんとについてきてもらってもいいのかなって」

「さっきまであんなこと言ってたのによく言うよ」

「あれはっ!」

「わかってるって。お前が行くんだったら俺だって一緒に行く。理由はそれだけだから心配はいらないって」

「うそばっかり」


 ため息混じりのその言葉を無視スルーして、少年はドアを開ける。


「そんな浮かない顔はしないしない。今日は、記念すべき新しい日なんだから」






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