7、決戦魔王城
聖剣を受けとったぼくは、そのあまりの軽さにびっくりした。こんな上質な金属でできた剣を本当にタダでもらっていいのだろうか。
疑問に思ったぼくは少年に聞いてみた。
「きみの名は?」
少年はそれを聞かれるのが嫌だったのがありありとわかる表情を顔に見せた。
「わたしの素性を聞いてどうする?」
「いつか剣をもらったお礼をするために」
「礼などいらない。わたしは、正体を知られると少し都合が悪いのだ」
「それでも、名前だけでも教えてくれよ」
「無理だ」
少年は、顔をうつむけた。
「いつか必ず、この剣の恩を返しにくるよ」
「そろそろ時間だ。わたしはいかなければ、付き人が来る」
「付き人? きみって、そんなに偉い人なのかい?」
「ああ、どちらかといえばね」
すると、豪華な衣装を身にまとった騎士が二人、やってきた。
「こんなところにおいででしたか。そろそろお城に帰らないと」
付き人の騎士がいう。
「わかっている。行く。それじゃあ。もう会うこともないだろう」
「ご友人ですか」
「そうだ、あったばかりだが」
騎士に連れられて、少年は行かざるを得ない顔をしていた。本当は行きたくないのだろう。あの少年もまた不自由なのだ。
「きみの名は?」
もう一度、声をかけると、少年は答えた。
「わたしはこの国の王子だ」
フラランスの王族の構成など聞いたこともないぼくだが、一度でも出会えたことが幸運であると思わなければならない運命であることを思い知った。
王子と行商人の息子が二人きりで歓談することなど、まずとうてい許されるとは思えない。まして、剣をもらうなど。
今日は運がよかったのだ。お城へ帰らなければならない王子の姿を眺めながら、もらい受けた聖剣サンジュバの価値を思案した。
庶民が剣を手にするなど、とんでもない幸運だ。この剣はあまり目立たないように隠し持つ方がよいだろう。
果たして、ぼくの人生で、剣を使う機会など訪れるのだろうか。
ぼくは思い悩みながら、父と母のもとへ帰っていった。
ちょっと話がご都合主義的かなあ。もっと別の剣の入手展開を考えるべきだった。反省している。