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6、天空竜との戦い

 華の都パパリに着いた。

 ようやく、本格的な商売が始まる。呼び子のぼくも大忙しだ。

 働き、働き、ただ、働いた。時計と靴は、順調に売れていく。半月もすれば、完売するだろう。

 だが、これでいいのだろうか。ぼくは思い悩む。

 ぼくは父に相談してみた。

「ねえ、父さん、ぼく、冒険者ギルドに加盟しようかと思うんだけど」

「冒険者ギルド? 何だ、それは。聞いたこともないぞ」

「だから、魔物を倒す仕事を請け負って、報酬をもらうところだよ。ぼくは冒険者になろうかと思うんだ」

「チート、おまえは疲れているんだ。冒険者ギルドなんてあるわけないだろ」

 ぼくは、もちろん、わかっていた。この世に冒険者ギルドなんてものはなくて、そもそも魔物がいないことに。

 だいたい、魔物を倒しているだけで日々の生活の糧が稼げるなら苦労はしない。

 そんな、都合のよいものは存在しない。


 ぼくは失意のままに、夜、テントを抜け出し、王様の宮殿へと向かってみた。夜、散歩に来ている人がけっこういるようだった。

 ぼくは、剣を携えた身なりの確かな人物に話しかけてみた。

「その剣は、なんのために抜くんだい?」

 それを聞いた剣士は、ぼくと同い年ぐらいの少年だった。

「わかっている。わたしが剣を抜いて人を斬り殺すことなど一生ないだろうことは」

 ぼくと少年は、松明の下で、背中合わせにして座った。

「静かだね」

「ああ。派手な事件など、めったになく、あるのは貴族王族の私利私欲にまかせた他国遠征だけだ。そんなものに命を投げ出し、鍛錬した武術の技を披露するのを恥ずかしく思う。わたしは、この剣を何のために使えばいいのだろうか。非力な貧しい民を惨殺するためだろうか。わたしにはわからない。何のために、剣術など、修行して来たのか」

「それでも、うらやましいよ。ぼくは、剣を買うことさえできはしない。剣が買えたら、盗賊にも勝てるし、悪いやつらに負けたりなんかしないのに」

 少年は寂しそうにいった。

「わたしも、盗賊や追いはぎから身を守るために剣を帯びているにすぎない。もし、きみが」

 少年がぼくの前に立ち、顔に指を指していった。

「もし、きみが剣を手に入れたなら、きっときみは一年とたたないうちに盗賊になり、罪もない農家を襲うだろう。もし、そんなことがないというのなら」

「そんなことはしないよ」

「もし、そんなことがないというのなら、この剣を差し上げよう」

「本当かい!」

「この剣は、魔法の剣だ。きみがまちがったことに剣を使えば、剣はきみ自身を滅ぼす」

 少年の目は本気だった。

「剣を受けとります。決して、まちがったことに剣を使わないことを誓います」

 ぼくはひざまずいて剣を請うた。

「よし、汝に剣を授けよう。剣の名は、聖剣サンジュバ」

 そして、ぼくは剣を手に入れた。


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