見つかった敷布
商会に着くと、荷運び用の馬車が停まっていた。
父の馬が戻っているのを確認して、サーシャは廊下を急いだ。
執務室に駆け込んだサーシャが目にしたのは、苦い顔をした両親と、ゆったりとお茶を飲むミカエラの姿だった。
「おかえりサーシャ。だいぶ学園で時間がかかったようだね。敷布は無事見つかった。お前には大変な役目をさせてしまってすまない」
スタンリーの言葉にミカエラが目を剥いた。
「まあスタンリー! サーシャを学園へ行かせたの? それなら私が納品に行っても構わないじゃない! この子が良くて私はダメなんて納得できないわ!」
騒ぎ出したミカエラに母は呆れ顔だ。
父はサーシャに退室するよう促した。
それから1時間ほどが経ち、ミカエラはけたたましい足音とともに帰っていった。
すっかり疲れ果てた両親から聞かされた内容に、サーシャは呆気にとられる。
父は捜索のために、敷布を製造している男爵領の機織場に向かったそうだ。荷馬車の通り道を逆にたどるためにそうしたところ、途中で馬車道を歩く人物に遭遇したという。
「それがなんと、機織場の運搬担当者だったんだ。まわりを見ても荷馬車の影もなくて、まさか強盗かと思ったのだがね」
その担当者の話によると、機織場で敷布を荷馬車に積み込みさあ出発という段になって、視察に来ていたミカエラが、荷馬車に同乗すると言ったそうだ。
「ミカエラは自分も商会に行くからと言って乗り込んだらしい。機織場の人たちにとったら彼女は領主夫人だからね。断れないのも無理はない」
そしてしばらくは大人しく乗っていたミカエラだったが、このまま学園に納品に行くと言い始め、反対する担当者は途中で降ろされてしまった。
機転の利く御者がミカエラの指示を聞くふりをしながら回り道をして、最終的に学園ではなく商会にたどり着いて事なきを得たということだった。
「ミカエラは手伝いのつもりで申し出たと言っているがね。納品前の検品のことを知らないわけではないだろうに、参ったよ」
「ミカエラ様はどうしてそんなに学園に行きたかったのかしら。そんなに行きたいなら私の代わりに行ってもらえば良かったわ」
「おいおい、うちをつぶす気か。おおかた製造元として感謝でもされたかったんじゃないか。彼女の突拍子のなさは昔からだが、困ったものだよ。まったく……」
商会が貴族社会で立ち回るためには、ローディック男爵である叔父モリスの協力が欠かせない。
また、ローディック姉妹としてメリンダにも大いに貢献してもらっている。そのため、スタンリーはミカエラに強く出ることができないのだ。
「彼女の機嫌を損ねないようどうにかやってきたが、そろそろ正面から向き合うべきかもしれないな」
固い表情の父に、母が心配そうに寄り添っている。
何も起きなければいいけれど──サーシャは胸元に手を当ててざわつく心をなだめた。
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