再会2
本日3話更新です。よろしくお願いします。
サーシャは驚いていた。
最初見かけた時には平民のような格好だった少年が、次に会った時には上等な服を着ており、さらに今日は貴族の子息が通う学園で再会するなどと、誰が想像できるだろうか。
「ニックあなた、貴族のご子息様だったの?」
サーシャの言葉に驚いたのは番頭だ。
隣から小声で「様をつけるんですよ!」と聞こえる。
それはもちろんニックにも聞こえていて、彼は苦笑いをこぼした。
「ニックでいいよ。僕もサーシャって呼ばせてもらうから。それより、何があったんだ? 寮長からネチネチやられてるって友達が教えてくれたんだけど」
「いえ、それはうちの不手際だからお叱りを受けるのは当然なの。……です」
また番頭の視線を感じ慌てて言い直すが、あまり意味はなかった。
「そうなのか。仕事のことは僕にはわからないけどさ、学園長が出てきてないってことは、きっとそんなに問題視されてないってことだから。元気出してよ」
屈託なく笑うニックの笑みと言葉に、サーシャは涙が出そうになる。
『あなたは悪くない』でもなく、『頑張って』でもない。飾り気のない、『元気出してよ』というそのたった一言が、今のサーシャにはとても温かく響いた。
「寮長さ、ものすごくしつこかっただろう? あいつ寮生100人中120人から嫌われててさ。ほんと気にしない方がいいよ」
「ふふっ、なあにそれ」
思わず笑ってしまったサーシャを見て、ニックは眩しそうな顔をした。
それから車寄せまで歩きながらニックと話をした。番頭は3歩ほど後ろをついてきている。
話し方も前のままでいいとニックに言われたが、背後から時々咳払いが聞こえるため、サーシャは番頭に聞こえないように小さな声で話すことにした。
ニックの方へ体を傾けて近づくと、彼は少し驚いた様子で頬を赤くする。
「ニックはどうしてあの日お忍びの格好をしていたの?」
「先輩から言われたんだ。女の子を見に行くのに貴族とわかる格好をしていたら恥ずかしいぞって」
「あら、そうなの? 別に気にしなくても良さそうなのにね」
「うん、僕もそう思う。いつもの服を着ていたらきっとあんなふうになることは──」
そこまで言うと、ニックは寄せていた眉をハッと戻した。
「でも膝を擦りむいたおかげでサーシャと知り合えたんだから、先輩には感謝しないとな!」
ニックは気持ちを切り替えるようにははっと笑った。
商会の馬車に乗り込むと、番頭がほうっと息を吐いた。
「サーシャさん、余計なお世話かもしれませんが、令息との距離にもう少し気をつけるべきです」
「そんなに近かったかしら? でもニック…様が畏まってほしくないって言うのよ?」
番頭は頭を振る。いかにも嘆かわしいと言わんばかりの仕草だ。
「あの方のカフスを見ましたか? バルケス伯爵家の紋章でした。かの伯爵家は王家にも連なる古い名家です。万一おかしな噂でも立てば、商会はただでは済みませんよ」
「そんな、大丈夫よ。疑われるようなことなんてしないもの」
ニックの明るさに上向いた心が、少し重くなった気がした。




