間話 ニック
「僕に足りないのは、努力だったんだ……」
難関である官吏の登用試験。その結果通知を両手でしっかりと握りしめ、ニックはつぶやいた。
あの日の陶酔と熱望、そしてその後の不運な出来事を、ニックは抱え込んだまま前に進めずにいた。
会えば何かが変わるかと商会に行ったが、彼女はどこにもいなかった。
どうすれば彼女に会えるのだろう。その答えを持たないニックに、できることはそれほどなかった。
『ローディック男爵家から、息女を傷物にした責任を取るよう連絡があったがどうする』──父であるバルケス伯爵の問いに、ニックは即座に否定を返した。
ローディック商会の悪い噂を耳にしたら打ち消してほしいと、友人たちに頼んだ。
寮長が商会との取り引きを独断で曲げようとしていると、家を通じて学園に申し入れた。
今やれることはやった。けれど光に届く筋道さえも見えなかった。
卒業後の身の振り方を考える時期になり、ニックはようやく『力を持たない自分』を自覚した。
あの眩しい人に並び立つには、今のままではいけないことは明らかだ。
もっと力を、相応しい立場を得なくては──
たまたま受けた官吏登用試験だったが、彼女が王宮にいることをあとから知った。
努力をすれば光は差す。
ニックの胸には、希望と自信が灯っていた。
次話から新章です。
引き続きよろしくお願いします。




