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サリシャの光 〜商会の娘が紡ぐ夢〜  作者: ねるね
王宮へ
22/42

糸をつなぐ

本日3話更新です。よろしくお願いします。

 ローラが手を差し伸べてくれた日からさほどの間もなく、サーシャは王女宮に出仕した。



 サーシャを表舞台から遠ざけたことにやりきれなさを感じていた両親は、商会を離れる娘に一切反対することはなかった。


「自慢の娘です。私どものもとで芽を枯らせてしまうにはあまりにも惜しい。どうか、新たな場所で伸ばしてやってください」


 そう言ってローラに深く頭を下げるスタンリーの姿が胸に残る。父に今でも期待されている──それは、サーシャの心を何よりも強く引き上げた。




 出仕するとまず、王女宮の一室へと通される。一卓の執務机と小さな応接セットがあるだけの簡素な部屋だ。ここがサーシャの仕事部屋になるそうだ。

 そこでローラから、サーシャの仕事について説明があった。

 王女宮の侍女たちの衣装を管理及び調達する。

 それがサーシャに課せられた業務だった。


「部門責任者としてお役人がつくのよ。一応この部屋の主なんだけど……あら、噂をすればやっと来たみたいね」


 そこに特に急ぐ様子もなく現れたのは、中肉中背の地味な格好をした、おそらくは年若い男だった。

 おそらく、というのはその人物の顔が見えないからだ。彼はボサボサの頭で、さらに大きな眼鏡をかけている。サーシャは思わず顔を覗き込みそうになったが、それはさすがに不躾すぎるととどまった。


「カイ君? あなたねえ、遅れたのに無言はダメよ。今日からあなたにも部下ができるんですからね。きちんと挨拶してくださいな」


「……カイ……ス………す。よろしく……」


 あまりに声が小さすぎて、サーシャは聞き取れなかった。だからつい一歩近づいて「もう一度お願いします」と言ってしまったのは、仕方がないことだろう。


 彼は一瞬体を硬くしてからふいと横を向き、先ほどよりは少しだけ聞こえる声で名乗った。


「カイ・スタックです。……よろしく」



「じゃ、あとのことはカイ君に聞いてね。彼、こう見えて優秀だから」


 ローラが去り、二人だけとなった室内は沈黙したまま時が流れた。

 しびれを切らしたサーシャがカイに話しかける。


「カイ様。まず、今現在ドレスがどのように管理されているか教えていただけますか。貸与でしょうか? それともそのままお下げ渡しになるのですか?」


「……ていい……」


「え?」


「様なんてつけなくていいって言ったんだ。俺は平民だし、歳だって多分あんたとそう変わらない」


 サーシャは頭を抱えたくなった。

 カイが話すたびに聞き返していたのでは、この先が思いやられる。失礼を承知で、サーシャは物申すことにした。


「私も平民ですし、お仕事をするうえでの礼儀として『さん』だけはつけさせてもらいます。それでカイさん、さっそくひとつお願いがあります。話すときは顔をこちらに向けてもらえますか。目を見ろとまでは言いませんので」


 カイは口をぽかんと開けている。おそらくあの前髪の下の目は丸くなっているのだろう。

 サーシャは自身の言葉が彼に届いたと判断して、にこりと笑んでから話を戻した。



 カイの話を聞くうちに、王宮の衣装管理には問題が山積していることがわかってきた。

 まず、ローラが集めて修繕を済ませたドレスは、サイズの合う者に都度そのまま渡しているらしい。誰に何を渡したのかは、今のところローラの記憶に頼っているという。だがそれも、いつまで持つかは分からない。

 そして、それが貸与なのか下げ渡しなのかも、明確には定められていないそうだ。ある者はもらったと思い、別の者は借り物だと思っている。手入れについて何も知らされていないのは両者に共通していた。



 様々な問題が一本の糸のようにつながり、サーシャの中にはただひとつの、けれど最善と思われる解決策が浮かんでいた。


「お仕着せを作りましょう!」

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