第4話 秘密のありか
「……非論理的ですが、その主張を検討する価値はあります。破壊による証拠滅失は、私の管理指数を著しく損なうためです」
管理官の女性が、背後のロボットに「待機」の信号を送った。
「ちょっと! なによノイズって! あんたこそ、そんなカチコチの顔して、潤滑油が足りないんじゃないの!?」
後ろでクロがプリプリと怒っているが、佐藤はそれを手で制しながら、管理官に問いかけた。
「お姉さん、一つ教えてくれ。ここはどこだ?」
管理官は感情のない瞳で佐藤を見つめ、淡々と答えた。
「ここは『居住セクター09』です。……あなたたちは、西の廃棄区画から紛れ込んだのですか?」
「……ほう、西の廃棄区画か」
佐藤はその言葉を逃さなかった。彼女が無意識に口にしたその場所こそが、自分たちのような「所属不明」が存在し得る唯一の場所なのだろう。
「……これ以上の回答は無用です。直ちに、あなたたちを一時拘束施設へ移送します。動かないでください」
彼女の瞳から、一瞬の揺らぎが消え、再び冷徹な管理官の顔に戻った。どうやら、これ以上の深追いは無理だと佐藤の直感が告げる。
佐藤は隣のクロに短く目配せをした。
「クロ……走れるか」
「……当たり前でしょ! アンタより私のほうが、ずっと身軽なんだから!」
佐藤は管理官に、もう一度だけ爽やかな笑顔を向けた。
「ありがとうお姉さん。また縁があれば会いましょう!」
管理官が「反逆行為を確認!」と声を上げるより早く、佐藤はクロの手を強く握り、無機質な部屋を飛び出した。




