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『50from17』 〜転生先は超高度文明、黒髪少女と経験値で生き抜く方法〜  作者: 五稜 司


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第16話:激突

暗がりの奥から、カチカチと硬質な爪がコンクリートをく音が響いた。

 次の瞬間、換気ダクトを蹴破って、三つの巨体がおどり出た。

 それは、地上のねずみとは似ても似つかぬ異形の獣だった。


 暗闇に適応した結果、眼球がんきゅうは完全に皮膚の下へ退化し、顔には目がない。その代わり、頭部には音を拾うための巨大な耳が異様に長く伸び、鼻先は効率よく匂いをぎ分けるため、花弁かべん状に赤黒い肉が割れ開いている。

 灰褐色はいかっしょくの体毛は針のように硬く、湿った闇の中で鈍い光を反射していた。


「来るわよ! 散って!」

 マイアの鋭い声が響く。

 三匹の獣は、目が見えないとは思えないほど正確な動きで、四人を包囲するように散った。聴覚と嗅覚をフルに使い、連携して獲物を追い詰める――それがこの地下の捕食者の戦法だった。


「速い……っ!」

 マイアが放ったパイプライフルの弾丸を、獣は耳をピクリと動かしただけで、紙一重でかわしてみせる。ナナイが短刀を振るうが、敏捷びんしょうな動きに翻弄ほんろうされ、逆に鋭い爪が彼女の肩をかすめた。

「クソッ、こっちの動きが筒抜けだ……!」

後方に下がった佐藤さとうは、必死に目を凝らした。


 獣たちは、自分たちの足音や呼吸音、さらには衣擦こずれの音までを完全に把握している。だが、その並外れた聴覚こそが弱点になりはしないか。

 佐藤は即座にリュックを降ろすと、前方で敵と対峙してるクロへ大声で指示を出す。


「クロ、少しの間、時間を稼いでくれ! 絶対に一匹もこっちへ通すなよ!」

「言われなくても! アンタはさっさとそれを終わらせなさいよね!」

 クロが鋭い爪をき出しにし、弾かれるように敵へ飛び掛っていく。


 その隙に佐藤は、廃棄場から拾っておいた小型のガスボンベを取り出し、足元に転がっていた空のスチール缶へと無理やり押し込んだ。さらに、手近な石で缶の側面を数箇所激しくたたき、内部に複雑な凹凸おうとつを作る。

 仕上げに、分解したガスライターの発火装置をボンベのノズルに直結し、衝撃しょうげきでガスが噴出ふんしゅつすると同時に引火いんかして破裂はれつする仕掛けを瞬時に組み上げた。


「……よし。全員、耳をふさげ! 目も閉じてろ!」

 佐藤の怒鳴り声に、マイアとナナイ、クロが反射的に動きを止めて耳をおおう。

 佐藤は起爆装置をたたきつけるようにして、三匹の獣が密集する中央へとそれを放り投げた。


 ――カッ!! ズドォォォォン!!


 狭い通路を、ガス爆発のすざまじい衝撃音と、ゆがめた缶が奏でる不規則な金属反響音が蹂躙じゅうりんした。

 聴覚に特化しすぎた獣たちにとって、それは脳を直接粉砕ふんさいされるに等しい暴力だった。


「ギ、ギィィィィィアァァァッ!?」

 方向感覚と平衡感覚へいこうかんかくを完全に失ったネズミたちは、頭を抱えるように地面を転げ回り、壁に激突して悶絶もんぜつする。

「今だ! 仕留めて!」

 マイアの指示が飛ぶ。

 好機を逃さず、マイアの長剣が首をね、ナナイの短刀が心臓を貫き、そしてクロの爪が残る一匹の喉笛のどぶえを深々と切り裂いた。

 静寂が戻った廃墟に、獣たちの生臭い匂いだけが立ち込める。


「……助かったわ、サトウ。あのガラクタ、ただのゴミじゃなかったのね」

 マイアが剣の血を拭いながら、驚きと感心の混じった視線を佐藤に向けた。

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