表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第2章:溺愛包囲網

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/39

第4節:魔獣討伐と新たな伝説

北の国境。


荒涼とした大地が、地平線まで続いていた。


「……すごい数だ」


僕は、息を呑んだ。


目の前には――数百の魔獣が、群れをなしていた。


狼に似た姿。だが、その体躯は人間の二倍以上。


牙は鋭く、瞳は赤く光っている。


「ダイアウルフの群れ……しかも、これほどの数」


リザが、剣を構える。


「報告通りだな。いや、報告以上かもしれない」


マンディが、拳を握る。


「ひっ……」


セラが、怯える。


「大丈夫よ、セラ」


師匠が、優しく声をかける。


「私たちの作戦を、信じなさい」


「は、はい……!」


セラが、杖を握りしめる。


「それでは――作戦を実行しますわ」


師匠が、優雅に告げた。


「リザ、マンディ。群れの動きを観察なさい。中心となる個体を見つけるのよ」


「了解!」


二人が、頷く。


「セラ、あなたは魔法で支援。ルーク、あなたは私の護衛」


「はい!」


僕とセラが、同時に答えた。


そして――戦闘が、始まった。


リザが、群れの中に飛び込む。


剣が、一閃。ダイアウルフ三体が、同時に倒れる。


「こっちだ!」


マンディが、拳を振るう。


地面が揺れ、衝撃波が広がる。


魔獣たちが、怯む。


「セラ、今よ!」


師匠の声。


「は、はい! ――風よ、刃となれ!《ウィンドカッター》!」


セラの魔法が、魔獣の群れを切り裂く。


「やった……!」


セラが、小さく叫ぶ。


だが――魔獣の数は、減らない。


倒しても、倒しても――次々と、襲いかかってくる。


「きりがないな……!」


マンディが、苦笑する。


「ええ。だから――中心を見つけるのよ」


師匠が、冷静に告げた。


僕は、師匠の言葉を思い出した。


「群衆劇では、中心となる役者がいる。その役者を見極めれば、全体の流れが見える」


(中心……指揮者……)


僕は、魔獣の群れを見回した。


そして――気づいた。


群れの奥、小高い丘の上に――一体だけ、異様に大きなダイアウルフがいた。


その魔獣は、動かない。


ただ、群れを見下ろしている。


(あれが……指揮者!?)


「師匠! あそこです!」


僕は、指さした。


「丘の上! あの大きなダイアウルフが、群れを統率しているんじゃ……!」


「……よく見つけたわね、ルーク」


師匠が、微笑む。


「リザ、マンディ。目標確認。丘の上の大型個体よ」


「了解!」


二人が、同時に動いた。


リザが、群れを切り裂きながら進む。


マンディが、道を開く。


そして――二人が、丘の上へと辿り着いた。


大型ダイアウルフが、咆哮する。


「グオオオオオ!」


その咆哮に、群れ全体が呼応した。


「これが……ボスか!」


リザが、剣を構える。


「任せろ!」


マンディが、拳を構える。


二人の攻撃が、同時に炸裂した。


リザの剣が、ボスの左側を斬る。


マンディの拳が、ボスの右側を砕く。


「グアアアアア!」


ボスが、倒れる。


そして――群れの動きが、止まった。


魔獣たちが、戸惑ったように立ち尽くす。


「今よ、セラ!」


師匠が、叫ぶ。


「は、はい! ――炎よ、嵐となれ!《フレイムストーム》!」


セラの大魔法が、群れを包んだ。


炎の嵐。魔獣たちが、次々と倒れていく。


そして――静寂が、訪れた。


数百の魔獣は、すべて倒れていた。


「……終わった」


僕は、呆然と呟いた。


「お疲れ様」


師匠が、優雅に微笑む。


「完璧な連携でしたわ」


「師匠の作戦のおかげです!」


リザが、笑顔で答える。


「ああ、師匠の教え通りだった!」


マンディが、拳を突き上げる。


「私……やれました……!」


セラが、涙目で喜ぶ。


(すごい……)


僕は、ただただ圧倒されていた。


数百の魔獣を、わずか五人で――しかも、完璧に倒した。


これが――《黒薔薇の園》の実力。


*  *  *


(……また、やっちゃった)


私――シルヴィア・ド・ノワールは、内心で頭を抱えていた。


作戦は、成功した。魔獣は、全滅した。


だが――これで、また伝説が増える。


評価が上がる。注目が集まる。


(静かに暮らしたい……)


私の願いは、また遠ざかった。


だが――リザ、マンディ、セラ、ルーク――四人の笑顔を見ると――悪い気はしなかった。


(……まあ、いいか)


私は、小さくため息をついた。


そして――


「おーっほほほほほっ!」


高笑いが、大地に響いた。


四人が、私を見つめる。


その瞳には――尊敬と、信頼の光が宿っていた。


(……ありがとう、みんな)


私は、心の中で呟いた。


表には出さないけれど――あなたたちがいるから、頑張れる。


そして――私たちは、聖王都ルミナスへと帰還した。


*  *  *


ギルド本部前。


帰還した僕たちを、信じられない光景が待っていた。


「《黒薔薇の園》が帰ってきたぞ!」


「魔獣討伐、成功したのか!?」


「数百の魔獣を、たった五人で!?」


ギルド前の広場は、人で埋め尽くされていた。


冒険者、商人、市民――皆、僕たちを一目見ようと集まっている。


「すごい……」


僕は、圧倒された。


「《黒薔薇の園》万歳!」


誰かが、叫んだ。


そして――拍手と歓声が、爆発した。


「シルヴィア様万歳!」


「聖典の化身に栄光あれ!」


「王国の守護者だ!」


人々が、口々に叫ぶ。


そして――広場の中央に、道が開かれた。


そこには――国王陛下が、立っていた。


「え……」


僕は、目を疑った。


国王陛下が、わざわざギルドまで――。


「よくやった、《黒薔薇の園》」


国王が、満面の笑みで告げる。


「数百の魔獣を、わずか一日で討伐。しかも、被害ゼロ。まさに奇跡だ」


「恐れ入ります、陛下」


師匠が、優雅に一礼する。


「これより、《黒薔薇の園》を――王国騎士団に準ずる地位に任命する」


「……え?」


師匠の表情が、一瞬だけ固まった。


「王国の危機に際し、常に最前線で戦う者たち。その功績を讃え、王国騎士の称号を授ける」


国王の言葉に、広場がどよめいた。


「騎士……!」


「《黒薔薇の園》が、騎士団に!?」


「すごい……!」


人々の歓声が、さらに大きくなる。


「ありがとうございます……」


師匠が、小さく呟いた。


その表情は――笑顔だが、どこか虚ろだった。


(……師匠)


僕は、胸が痛んだ。


師匠は、また――望まない栄光を、背負わされたのだ。


だが――その栄光こそが、《黒薔薇の園》を伝説へと押し上げていく。


*  *  *


その夜。


師匠は、一人で応接間にいた。


僕は、扉の前で立ち止まった。

そして――そっと、ノックした。


「師匠、入ってもいいですか?」


「……どうぞ」


僕は、部屋に入った。


師匠は、窓辺に立ち、夜空を見上げていた。


「ルーク、どうしたの?」


「あの……師匠、大丈夫ですか?」


僕の言葉に――師匠は、苦笑した。


「大丈夫よ。ただ――少し、疲れただけ」


「そうですか……」


僕は、師匠の隣に立った。


そして――二人で、夜空を見上げた。


「ルーク」


師匠が、ぽつりと呟く。


「星って、綺麗ね」


「はい」


「静かで、穏やかで……遠くから、ただ輝いている」


師匠の声は、優しかった。


「私も、あんな風に――静かに、輝けたらよかったのに」


その言葉に――僕は、何も言えなかった。


ただ――静かに、隣に立っていた。


そして――夜は、静かに更けていった。


――第2章、完。


《黒薔薇の園》の伝説は、さらに広がった。


だが、その裏で――一人の声優の、小さな願いは――また一つ、遠ざかっていった。


最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

評価やブックマークを入れてもらえるととても嬉しいです。


反応があると更新速度が上がります(重要)

コメント頂ける方はマナーとして好きな声優さんかVtuberを必ず記入してください(超重要)


それでは次回の更新をお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ