表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第2章:溺愛包囲網

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/39

第3節:日常と告白未遂

魔獣討伐の任務まで、一週間の猶予があった。


その間、僕たちは準備と訓練に明け暮れていた。


「セラ、もっと速く詠唱!」


「は、はい……!」


ギルド裏の訓練場。


リザが、厳しい声でセラを指導している。


「魔法の威力はいいが、発動が遅い。実戦では致命的だ」


「す、すみません……!」


セラが、必死に杖を構える。


そして――


「――炎よ、我が手に!《ファイアボール》!」


火球が、的に向かって飛ぶ。


だが――


「遅い!」


リザが、剣で火球を両断した。


「え……」


セラが、呆然とする。


「実戦では、敵も動く。もっと速く、的確に」


「は、はい……」


セラが、うなだれる。


(……リザ、厳しいな)


僕は、少し同情した。


*  *  *


(……皇子様、大丈夫かしら)


私――シルヴィア・ド・ノワールは、訓練場の隅で、セラの様子を見守っていた。


リザとマンディの指導は、確かに厳しい。


だが――それは、セラを鍛えるためだ。

決して、虐めているわけではない。


(……たぶん)


いや、たぶんではなく、確実にそうだ。


二人の瞳には、悪意はない。

むしろ――セラを、仲間として鍛えようとしている。


「師匠」


リザが、私のところにやってきた。


「セラの成長、早いですね」


「そうね」


私は、微笑む。


「元々、素質はあったのでしょう。それが、訓練で開花しているだけよ」


「師匠の教えのおかげです」


リザが、真剣な表情で言う。


(……私、何も教えてないんだけど)


私は、内心でツッコミを入れた。


「それで、師匠」


リザが、少し照れたような表情を浮かべる。


「今夜、少しお時間をいただけませんか?」


「今夜?」


「はい。お話ししたいことがありまして……」


リザの頬が、わずかに赤い。


(……え、これって)


私は、嫌な予感がした。


「あ、あの……大切なお話、です」


リザが、視線を逸らす。


(……やばい)


私の予感は、確信に変わった。

これは――**告白の前触れだ。**


「り、リザ……」


私が、慌てて言葉を探す。


だが――


「師匠! 俺も今夜、話があります!」


マンディが、突然割り込んできた。


「え……」


「俺も、大事な話なんです! 聞いてください!」


マンディの瞳も、真剣だった。


(……二人とも、同じタイミング!?)


私は、内心でパニックになった。


「ちょっと、マンディ! 私が先よ!」


「何言ってんだ、リザ! 俺の方が先に言ったぞ!」


「私の方が、先に師匠に話しかけたわ!」


「そんなの関係ねえ!」


二人が、火花を散らす。


(……どうしよう)


私は、完全に困惑していた。


その時――


「師匠、どうかされましたか?」


ルークが、心配そうに訊ねてきた。


「あ、あの……」


私が、助けを求めるように視線を向ける。


だが――ルークには、状況が理解できていないようだった。


「リザさんとマンディさん、何を言い争ってるんですか?」


「そ、それは……」


私が、言葉を濁す。


そして――


「二人とも、落ち着きなさい」


私は、努めて冷静に告げた。


「今夜は、全員で会議がありますわ。魔獣討伐の作戦会議です」


「……え」


リザとマンディが、固まった。


「ですから、個別のお話は、また後日にしましょう」


私は、優雅に微笑んだ。


(……逃げ切った)


内心で、安堵のため息をついた。


だが――リザとマンディの瞳には、まだ決意の光が宿っていた。


(……後日って、いつまで逃げられるかしら)


私の不安は、尽きなかった。


*  *  *


その夜。


作戦会議は、無事に終わった。


魔獣討伐の計画は、ほぼ固まった。

明後日、北の国境へ出発する。


「それでは、今日は解散ね」


師匠が、優雅に告げる。


「はい!」


僕たちは、それぞれの部屋へと戻ろうとした。


だが――


「師匠、少しだけ……」


リザが、師匠を呼び止める。


「私も……!」


マンディも、続く。


「あ、あの……」


師匠が、困った表情を浮かべる。


その時――


「師匠、明日の準備、手伝ってもらえませんか?」


セラが、絶妙なタイミングで割り込んだ。


「あ、ええ……もちろん」


師匠が、セラに視線を向ける。


「ちょっと、セラ!」


「邪魔するな!」


リザとマンディが、セラを睨む。


「ひっ……!」


セラが、怯える。


だが――


「セラ、行きましょう」


師匠が、セラの手を引いて、部屋を出ていった。


「あ……」


リザとマンディが、呆然とする。


(……師匠、逃げたな)


僕は、苦笑した。


セラを利用して、二人から逃げたのだ。


「……ルーク」


リザが、僕を見る。


「師匠、最近忙しそうだな」


「そうですね……」


僕は、頷く。


「だからこそ、守らなきゃいけない」


マンディが、拳を握る。


「師匠を、支えるんだ」


二人の瞳には、真剣な光が宿っていた。


(……告白は、どうなったんだ?)


僕は、疑問を抱いた。


だが――聞かない方がいいような気がした。


*  *  *


翌日。


師匠は、ギルドの応接間で、一人静かに座っていた。


「……はぁ」


深いため息。


僕は、扉の前で立ち止まった。


(師匠……大丈夫かな)


最近の師匠は、明らかに疲れている。


Sランク認定。

王宮の後援。

魔獣討伐の任務。


そして――リザとマンディからの、重い期待。


(何か、できることは……)


僕は、考えた。

そして――決意した。


「師匠、失礼します」


僕は、扉をノックした。


「あら、ルーク。どうぞ」


師匠が、優雅に微笑む。


「あの……師匠」


僕は、勇気を出して言った。


「もし、疲れたら、休んでください。僕たちは、師匠の味方です」


「……ルーク」


師匠が、目を見開く。


「師匠は、いつも僕たちを支えてくれています。だから、今度は僕たちが、師匠を支えます」


僕の言葉に――

師匠の表情が、ほんの少しだけ、緩んだ。


「ありがとう、ルーク」


師匠が、優しく微笑む。


「あなたのような仲間がいて、私は幸せですわ」


その笑顔は――

今まで見た中で、一番温かかった。


(……よかった)


僕は、胸を撫で下ろした。


だが――


「ルーク、一つ聞いていいかしら」


「はい、何でしょう?」


「静かに暮らすって、難しいわよね」


師匠が、ぽつりと呟いた。


「……え?」


「いえ、独り言よ」


師匠が、苦笑する。


「私、昔は静かな家を持つのが夢だったの。小さな庭があって、花を育てて、のんびり過ごす……そんな生活」


「素敵ですね」


僕は、微笑んだ。


「でも、今は無理ね」


師匠が、窓の外を見る。


「《黒薔薇の園》のクランマスター。Sランク冒険者。王国の公式クラン」


師匠の声は、どこか遠かった。


「静かな家の夢は――もう、叶わないのかもしれないわ」


その言葉に――

僕は、胸が痛んだ。


(師匠……)


僕は、何も言えなかった。


ただ――

静かに、師匠の隣に座った。


そして――二人で、窓の外を眺めた。


聖王都ルミナスの夕焼け。

美しい街並み。


だが――師匠の瞳には、どこか寂しさが宿っていた。


――静かな家計画は、こうして破綻した。


だが――《黒薔薇の園》の物語は、まだ続く。


そして、次の試練が――

すぐそこまで迫っていた。

最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

評価やブックマークを入れてもらえるととても嬉しいです。


反応があると更新速度が上がります(重要)

コメント頂ける方はマナーとして好きな声優さんかVtuberを必ず記入してください(超重要)


それでは次回の更新をお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ