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ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第8章:悪役令嬢、世界を降りる

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第2節:聖女即位式、完璧な段取り

(しのぶ視点)


聖女即位式――


それは、一週間後に迫っていた。


「……」


私は、控室で――


白い法衣を見つめていた。


聖女の衣装。


金の刺繍。


ティアラ。


すべてが、完璧に用意されている。


「師匠」


リザが、入ってくる。


「準備は、いかがですか?」


「ええ、問題ないわ」


私は、微笑む。


だが――


心の中では、不安でいっぱいだった。


(枢機卿の言葉……)


(女神とともに邪神は復活する……)


(一体、どういう意味……?)


*  *  *


一週間が、あっという間に過ぎた。


そして――


聖女即位式、当日。


ルミナス大神殿は――


人で、溢れていた。


王族、貴族、騎士、神官――


そして、数千の信者たち。


「すごい人だ……」


ルークが、呟く。


「当然ですわ」


リザが、誇らしげに言う。


「師匠が、聖女として即位するのですから」


「……」


私は、何も言えなかった。


「シルヴィア様」


神官が、私を呼ぶ。


「そろそろ、お時間です」


「……はい」


私は、深呼吸した。


(落ち着いて……)


(これも、演技……)


(ただの、演技……)


控室を出る。


大聖堂へ向かう廊下。


そこには――


リザ、マンディ、セラ、ルークが――


並んで、待っていた。


「師匠」


リザが、前に出る。


「私たちは、ずっと――」


「師匠の味方です」


「ありがとう」


私は、微笑んだ。


「マンディ」


「はい」


「あなたも、ありがとう」


「いえ、師匠こそ――」


マンディが、涙を浮かべる。


「私たちに、すべてを教えてくださって」


「……」


「セラ」


「はい」


「あなたは、これから――」


「皇子として、王国を支えるのよ」


「……分かっています」


セラが、頷く。


「師匠の教えを、胸に」


「そして、ルーク」


「はい」


ルークが、前に出る。


「あなたは――」


私は、ルークを見つめた。


「優しい子ね」


「師匠……」


「これからも、その優しさを――」


「大切にして」


「……はい」


ルークが、涙を流す。


(まるで、別れの言葉みたい……)


私は、心の中で苦笑した。


(でも、本当に――)


(これが、最後かもしれない)


*  *  *


大聖堂の扉が、開いた。


そこには――


荘厳な光景が、広がっていた。


高い天井。


ステンドグラス。


そして――


中央の祭壇。


そこに、金色の玉座が置かれている。


「……」


私は、一歩、踏み出した。


すると――


音楽が、流れ始めた。


聖歌隊が、歌う。


美しい旋律。


だが――


どこか、不穏な感じがする。


(気のせい……?)


私は、ゆっくりと――


祭壇へ向かって、歩く。


信者たちが、一斉に跪く。


「「「聖女様……」」」


その声が、大聖堂に響く。


「……」


私は、無表情を保った。


(演技、演技……)


(これは、ただの儀式……)


祭壇に、着いた。


そこには――


新しい枢機卿が、立っていた。


前の枢機卿が逃亡したため――


新たに選ばれた人物。


「ようこそ、シルヴィア・ド・ノワール」


新枢機卿が、穏やかに微笑む。


「本日、あなたを――」


「聖女として、即位させます」


「……」


私は、頷いた。


「それでは――」


新枢機卿が、聖典を開く。


「儀式を、始めます」


*  *  *


儀式が、進められた。


聖典の朗読。


祈りの言葉。


そして――


香の煙が、立ち上る。


すべてが、完璧に段取りされている。


「シルヴィア・ド・ノワール」


新枢機卿が、私を見る。


「あなたは、ルミナス教の聖女として――」


「民を導く覚悟が、ありますか?」


「……はい」


私は、優雅に答えた。


「ルミナス様の御心のままに」


「よろしい」


新枢機卿が、頷く。


そして――


彼が、冠を手に取った。


金と宝石で飾られた、聖女の冠。


「この冠を授けることで――」


「あなたを、聖女と認めます」


新枢機卿が、私の頭に――


冠を、載せようとする。


その時――


私は、ふと――


祭壇の奥を見た。


そこには――


見覚えのある紋章が、刻まれていた。


(あれは……!)


邪神の紋章。


三ヶ月前に、破壊したはずの――


同じ紋章。


「!」


私は、固まった。


(まさか……)


だが――


もう、遅かった。


新枢機卿が――


冠を、私の頭に載せた。


その瞬間――


紋章が、光り始めた。


「……!」


私は、息を呑んだ。


(罠だった……!)


「師匠!」


ルークが、叫ぶ。


だが――


彼らは、結界に阻まれて――


動けない。


「くっ……!」


リザが、剣を抜くが――


結界は、破れない。


「何が、起きてるんだ!?」


マンディが、叫ぶ。


新枢機卿が――


ゆっくりと、笑った。


「ふふふ……」


その声は――


どこか、聞き覚えがあった。


「あなた……まさか……」


私が、呟いた時――


新枢機卿が、顔を変えた。


禿げ上がった頭。


狂気の笑み。


「枢機卿ツィチェン……!」


「正解だ」


枢機卿が、高笑いする。


「よくぞ、罠にかかってくれた」


「くっ……」


私は、冠を外そうとする。


だが――


外れない。


冠が、頭に吸い付いている。


「無駄だ」


枢機卿が、言う。


「その冠は、邪神復活の触媒」


「お前が被った瞬間――」


「儀式は、始まった」


「!」


私は、絶望した。


「そして――」


枢機卿が、祭壇を指差す。


「お前の高笑いが――」


「儀式を、完成させる」


「やめて……!」


私は、叫んだ。


「私は、笑わない……!」


「ふふふ……」


枢機卿が、笑う。


「お前は、笑う」


「なぜなら――」


彼が、何かを取り出した。


それは――


ルークたちの人形だった。


「これを見れば――」


枢機卿が、人形を握りしめる。


「お前の大切な弟子たちが――」


「苦しむのだ」


「!」


その瞬間――


ルークたちが、苦しみ始めた。


「ぐあああ!」


「師匠……!」


「やめて……!」


彼らの声が、聞こえる。


「やめて……!」


私は、叫んだ。


「彼らに、手を出さないで……!」


「ならば――」


枢機卿が、にやりと笑う。


「高笑いを、しろ」


「それで、儀式は完成する」


「そして――」


「弟子たちは、解放される」


「……」


私は、絶望した。


(どうすれば……)


(どうすれば……)


「師匠……!」


ルークが、苦しみながら――


叫ぶ。


「笑わないで……ください……!」


「僕たちは……大丈夫です……!」


「ルーク……」


だが――


彼らの苦しむ声が――


私の心を、えぐる。


「師匠……!」


リザも、叫ぶ。


「私たちのことは……気にしないで……!」


「リザ……」


「師匠……!」


マンディとセラも――


苦しんでいる。


「……」


私は、涙を流した。


(ごめん……)


(ごめんなさい……)


そして――


私は、決めた。


「分かったわ……」


「師匠!」


ルークが、叫ぶ。


「やめて……!」


だが――


私は、もう――


決めていた。


(彼らを、救うためなら……)


(私は、何でもする)


私は、深呼吸した。


腹式呼吸。


息を、深く吸う。


そして――


――第8章第2節、完。


聖女即位式。


完璧な段取り。


誰も、止められない。


師匠は、舞台に立った。


だが――


それは、罠だった。


新枢機卿は――


枢機卿ツィチェンだった。


変装していた。


冠を被せられた瞬間――


儀式が、始まった。


そして――


弟子たちが、人質に取られた。


「高笑いをしろ」


「さもなくば、弟子たちは苦しみ続ける」


師匠は――


決意した。


弟子たちを、救うために――


高笑いを、する。


次の瞬間――


世界が、変わる。

最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

評価やブックマークを入れてもらえるととても嬉しいです。


反応があると更新速度が上がります(重要)

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それでは次回の更新をお楽しみに

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