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ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第7章:皇子の正体バレと"聖女認定"の加速

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第3節:しのぶ、限界寸前(高笑いが止まらない)

(しのぶ視点)



ポスター騒動から、一週間が経った。



私の生活は――



完全に崩壊した。



外出は、不可能。



プライバシーは、ゼロ。



毎日、式典。



毎日、会議。



毎日、表彰。



「……」



私は、もう――



限界だった。





今日は――



王国貴族院での、晩餐会。



「シルヴィア様、こちらへ」



侍従が、私を案内する。



「……はい」



私は、優雅に歩く。



(演技、演技……)



だが――



最近、演技と現実の――



境目が、分からなくなってきた。



「……」



(私、誰だっけ)



声優の、しのぶ?



それとも――



聖女の、シルヴィア?



(分からない……)





    





晩餐会が、始まった。



貴族たちが――



次々と、話しかけてくる。



「シルヴィア様」



「皇子を導かれるとは、素晴らしい」



「ありがとうございます」



私は、優雅に答える。



笑顔を、作る。



(笑って、笑って……)





「シルヴィア様」



別の貴族が、近づく。



「あなたの教えを――」



「ぜひ、我が家の子にも」



「光栄です」



私は、微笑む。



(もう、何人目……?)





「シルヴィア様」



また、別の貴族。



「ポスター、拝見しました」



「美しかったです」



「ありがとうございます」



笑顔、笑顔。



(笑って……)





だが――



その時。



何かが――



切れた。





「あ……」



私の口が――



勝手に、動いた。



「おーっほっほっほっ!」



高笑いが――



出てしまった。



「!」



私は、慌てて――



口を押さえる。



(やば……)



貴族が、不思議そうに見ている。



「シルヴィア様……?」



「あ、いえ……」



私は、ごまかす。



「ちょっと、嬉しくて……」



「そうですか」



貴族が、微笑む。



「それは、良かった」





貴族が、去る。



「……」



私は、冷や汗をかいた。



(危ない……)



(高笑い、出ちゃった……)



だが――



それは、始まりだった。





    





その後も――



晩餐会は、続いた。



貴族たちと、会話。



笑顔で、応対。



優雅に、振る舞う。



だが――



また。



「おーっほっほっ……」



笑いが、出た。



「!」



私は、慌てて止める。



(また……)





そして――



また。



「おーっほっほっほっ……」



「……」



(止まらない……)





貴族が、微笑む。



「シルヴィア様、ご機嫌ですね」



「あ、ええ……」



私は、ごまかす。



「今日は、楽しくて……」



「それは、良かった」





だが――



私の心の中では――



警告音が鳴り響いていた。



(やばい……)



(高笑いが、止まらない……)





    





晩餐会の後半。



私は――



壇上に、立たされた。



「それでは――」



司会が、声を上げる。



「シルヴィア様より――」



「一言、お願いします」



「……」



私は、深呼吸する。



(落ち着いて……)



(ちゃんと、話すのよ……)





「皆様」



私の声が――



ホールに、響く。



「本日は――」



「お招きいただき――」



「あり――」





その時。



また――



切れた。



「おーっほっほっほっほっほっ!」



高笑いが――



止まらなくなった。



「!」



私は、必死に――



止めようとする。



だが――



「おーっほっほっほっほっほっほっ!」



「おーっほっほっほっほっほっほっ!」



30秒以上――



笑い続けた。



「……」



ホールが――



静まり返る。





(やばい……)



(これ、やばい……)



私は、心の中で叫んだ。



(壊れてる……)



(私、壊れてる……)



だが――



笑いは、止まらない。



「おーっほっほっほっほっ……」





そして――



ようやく――



笑いが、止まった。



「……」



ホールが――



静寂に、包まれる。



(終わった……)



私は、絶望した。



(これで、完全に……)





だが――



その時。



誰かが――



拍手した。



パチパチパチ……



「素晴らしい……」



「シルヴィア様、喜んでおられる……」



「あの高笑い……」



「まさに、気品そのもの……」





拍手が――



広がっていく。



「聖女様の笑い声……」



「美しい……」



「感動した……」





「……」



私は、完全に――



理解不能になった。



(え……)



(これ、おかしいでしょ……)



(明らかに、壊れてたのに……)





だが――



貴族たちは――



本気で、感動している。



「シルヴィア様の笑い声――」



「初めて、聞きました……」



「幸せです……」





「……」



私は、小さく――



呟いた。



「もう……何もかも……おかしい」





だが――



その声は――



拍手に、かき消された。





    





晩餐会が終わった後。



控室で――



私は、ソファに――



倒れ込んだ。



「……」



「師匠、お疲れ様でした」



リザが、お茶を差し出す。



「ありがとう……」



私は、力なくお茶を受け取る。





「師匠」



マンディが、目を輝かせる。



「今日の高笑い――」



「素晴らしかったですわ!」



「……」



私は、何も言えなかった。



「あの笑い声――」



リザも、頷く。



「まさに、気品そのもの」



「貴族たちも、感動していましたわ」



「……」



(違う……)



私は、心の中で叫んだ。



(あれは、壊れてただけ……)



(笑いが、止まらなかっただけ……)





だが――



それを、言葉にすることは――



できなかった。



「師匠?」



リザが、心配そうに訊ねる。



「顔色が、悪いですが……」



「……大丈夫」



私は、嘘をつく。



「ちょっと、疲れただけ」



「そうですか」



リザが、頷く。



「では、早めに――」



「お休みください」



「……うん」





    





その夜。



私は――



一人、自室にいた。



ベッドに、座る。



鏡を、見る。



そこには――



疲れ切った、私がいた。



「……」



私は、小さく――



呟いた。



「もう……限界」





そして――



また――



笑いが、出た。



「おーっほっほっ……」



一人で――



笑っている。



「おーっほっほっほっ……」



止まらない。



「……」



私は、枕に――



顔を、埋めた。



「やめて……」



「もう……やめて……」





だが――



笑いは、止まらない。



「おーっほっほっ……」



枕越しに――



笑い声が、漏れる。



「……」



私は、泣いた。



笑いながら――



泣いた。



「やめて……」



「もう……やめて……」





だが――



誰も、聞いていない。



誰も、気づかない。



私は――



一人で――



壊れていく。





    





翌朝。



王都の新聞には――



『聖女の高笑い、貴族たちを魅了』



という見出しで――



昨日の晩餐会の記事が、掲載された。





記事には――



「シルヴィア様の美しい笑い声」



「気品溢れる高笑い」



「貴族たちが感動」



と、書かれていた。





「……」



私は、新聞を見て――



笑った。



「おーっほっほっ……」



また――



止まらない。



「おーっほっほっほっ……」





リザが、部屋に入ってくる。



「師匠、今日も――」



「おはようございま――」



リザが、固まった。



「師匠……?」



「おーっほっほっほっ……」



私は、笑い続ける。



「し、師匠!?」



リザが、慌てる。



「大丈夫ですか!?」



「おーっほっほっ……」



「師匠!」





だが――



私は、笑い続けた。



止まらない。



もう――



止められない。





「ルーク! マンディ!」



リザが、叫ぶ。



「師匠が……!」



「どうしたの!?」



ルークたちが、駆け込んでくる。



「師匠が――」



リザが、泣きそうになる。



「笑いが、止まらないの……」



「え……」



ルークが、私を見る。



「師匠……?」





私は――



ルークを見つめた。



そして――



小さく――



助けを求める声を――



出した。



「たすけ……て……」



だが――



その声は――



笑い声に――



かき消された。



「おーっほっほっほっほっ……」





――第7章第3節、完。



師匠は――



壊れかけていた。



高笑いが――



止まらなくなった。



晩餐会で、30秒以上。



自室で、一人で。



翌朝も、また。



止まらない。



だが――



周囲は、気づかない。



「聖女様、喜んでおられる」



「美しい高笑い」



誰も――



壊れていることに、気づかない。



師匠は――



助けを求めた。



「助けて……」



だが――



その声は――



笑い声に――



かき消された。



「おーっほっほっほっ……」



もう――



止まらない。


最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

評価やブックマークを入れてもらえるととても嬉しいです。


反応があると更新速度が上がります(重要)

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それでは次回の更新をお楽しみに

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