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ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第6章:公務・式典・称賛という名の牢獄

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第4節:リザ、本気で"引退させない"宣言

(ルーク視点)



翌日。



クラン拠点の会議室。



僕は――



決意していた。



(師匠を、助けたい)



師匠の演技を知った僕は――



何かできることはないかと、考え続けていた。



そして――



一つの答えに、たどり着いた。



(まずは、師匠を休ませよう)





会議が、始まる。



「本日の議題は――」



セラが、書類を開く。



「来月の活動計画についてです」



「来月は――」



リザが、別の書類を読み上げる。



「王宮での式典が3回」



「ギルド本部での会議が5回」



「貴族院からの招待が2回」



「教会での祈祷会が4回」



「……」



師匠の顔が――



少しだけ、曇った。



だが――



すぐに、笑顔に戻る。



「分かったわ」



「予定通り、進めましょう」





その時――



僕は、勇気を出して――



手を上げた。



「あの……」



「ん? ルーク?」



セラが、僕を見る。



「何か、意見があるのか?」



「はい」



僕は、頷く。



そして――



真剣に言った。



「師匠――」



「少し、休んだらどうですか?」





会議室が――



静まり返った。



「……え?」



リザが、きょとんとする。



「休む……?」



「はい」



僕は、続ける。



「師匠、最近――」



「すごく忙しそうですから」



「少し、休んだ方がいいんじゃないかと……」





師匠が――



僕を見た。



その目には――



少しだけ、希望の光が――



浮かんでいた。



「ルーク……」



(よし!)



僕は、心の中でガッツポーズをした。



(これで、師匠を――)





だが――



その時。



「却下です」



リザが、きっぱりと言った。



「……え?」



僕は、固まった。



「却下、ですか……?」



「はい」



リザが、真剣な表情で頷く。



「師匠に、休みは必要ありません」



「いや、でも……」



「ルーク」



リザが、僕を見る。



「あなた、分かってますか?」



「何を……?」



「師匠は――」



リザが、真剣に言う。



「王国の宝です」



「……」



「いえ」



リザが、訂正する。



「人類の宝です」



「人類って……」



僕が、呆然とする。



「ですから――」



リザが、続ける。



「師匠に休んでいただくわけには、いきません」



「いや、でも……」



僕が、言いかけた時――



「私も、リザに賛成ですわ」



マンディが、頷いた。



「え……」



「師匠は――」



マンディが、真剣な表情で言う。



「みんなの希望です」



「師匠が休んだら――」



「みんな、不安になります」



「不安って……」



「ですから」



マンディが、きっぱりと言う。



「師匠には、休んでいただけません」



「……」



僕は、絶句した。





    





「ちょ、ちょっと待ってください……」



僕は、必死に説明する。



「師匠だって、人間ですよ?」



「休みが、必要です」



「必要ありません」



リザが、即答した。



「いや、あります!」



僕が、反論する。



「師匠、毎日――」



「式典、会議、表彰……」



「休む暇もないじゃないですか!」



「それが――」



リザが、真剣に言う。



「師匠の使命です」



「使命って……」



「師匠は――」



リザが、目を輝かせる。



「選ばれた方です」



「聖典にも、記されています」



「『光を纏いし者、民を導く』と」



「いや、それ……」



僕が、言いかけた時――



「その通りですわ」



マンディが、頷く。



「師匠は、導く者」



「ですから、休むことは――」



「許されません」



「許されないって……」



僕は、頭を抱えた。



(これ……どうすれば……)





「あの」



セラが、口を挟む。



「僕は、ルークの意見も――」



「一理あると思う」



「セラ!」



僕は、希望を見出した。



「師匠も、人間だ」



セラが、冷静に言う。



「適度な休息は、必要だろう」



「そうです!」



僕は、セラに同意する。



「だから――」



「しかし」



セラが、続ける。



「今は、休むタイミングではない」



「え……」



「師匠の影響力は――」



セラが、真剣に言う。



「王国の安定に、直結している」



「今、休んだら――」



「政治的に、問題が生じる」



「政治的……」



僕が、呆然とする。



「ですから――」



セラが、結論を出す。



「休みは、後日――」



「適切なタイミングで、検討しましょう」



「後日って……いつですか?」



「それは――」



セラが、考える。



「半年後、くらいかな」



「半年!?」



僕は、叫んだ。





    





「あの……」



師匠が、小さく手を上げる。



「私の意見は……?」



「師匠!」



リザが、振り向く。



「もし、ご不満があれば――」



「いつでも、おっしゃってください」



「不満、というか……」



師匠が、言いかけた時――



「私たち」



マンディが、目を輝かせる。



「もっと、頑張りますから!」



「え……」



師匠が、困惑する。



「師匠が満足できるよう――」



リザが、拳を握る。



「もっと、サポートを強化します!」



「いや、それ……」



師匠が、言いかけた時――



「具体的には――」



セラが、別の書類を取り出した。



『師匠サポート強化計画』



「……」



師匠の顔が、青ざめた。



「これは――」



セラが、読み上げる。



「師匠の移動時間を短縮するため――」



「専用馬車を、3台に増やします」



「さらに――」



「食事の準備時間を短縮するため――」



「専属シェフを、5名雇います」



「……」



師匠が、完全に固まった。



「これで――」



リザが、満足そうに言う。



「師匠の負担が、減りますわ!」



「負担って……」



師匠が、虚ろな声で呟く。



「増えてる気が……」



「え?」



リザが、きょとんとする。



「何か、おっしゃいましたか?」



「……何でもないわ」



師匠が、力なく微笑んだ。





僕は――



その様子を見て――



絶望した。



(これ……逆効果だ)



師匠を休ませようとしたのに――



逆に、サポートが強化されてしまった。



「……」



(どうすれば……)





    





会議が終わった後。



僕は、廊下で――



師匠に、謝った。



「すみません、師匠……」



「ん?」



師匠が、不思議そうに訊ねる。



「何が?」



「僕……」



僕は、項垂れる。



「師匠を休ませようとしたのに……」



「逆に、負担を増やしてしまって……」



「……」



師匠が、しばらく――



黙っていた。



そして――



小さく、笑った。



「ありがとう、ルーク」



「師匠……?」



「あなたの気持ち――」



師匠が、優しく言う。



「すごく、嬉しかった」



「でも……」



「いいのよ」



師匠が、首を横に振る。



「あの子たちは、悪気ないから」



「……」



「ただ――」



師匠が、苦笑する。



「善意が、重いだけ」



「善意……」



「ええ」



師匠が、頷く。



「あの子たちは、本気で――」



「私のためだと、思ってる」



「だから――」



師匠が、遠い目をする。



「どうしようもないのよ」





僕は――



何も言えなかった。



(善意が、師匠を縛ってる……)



それは――



誰も、悪くない。



でも――



誰も、止められない。



「……」



(これ、どうすれば……)





「ルーク」



師匠が、僕を見る。



「あなたは――」



「十分、頑張ったわ」



「でも、師匠……」



「いいのよ」



師匠が、微笑む。



「あなたが、味方でいてくれるだけで――」



「私、救われるから」



「……」



僕は、涙が出そうになった。





    





その日の夜。



クラン拠点の会議室では――



リザとマンディが――



『師匠サポート強化計画・改訂版』を、作成していた。



「専用馬車を3台から――」



リザが、書き込む。



「5台に、増やしましょう」



「賛成ですわ!」



マンディが、目を輝かせる。



「さらに――」



「専属シェフを5名から――」



「10名に!」



「素晴らしい!」



リザが、拍手する。



「これで、師匠の負担が――」



「もっと、減りますわ!」





セラが――



その様子を見て――



小さく呟いた。



「……これ、逆効果な気がするんだが」



だが――



二人には、聞こえなかった。



「師匠のために!」



「「頑張りましょう!」」





    





翌日。



師匠に――



『師匠サポート強化計画・改訂版』が、提出された。



「……」



師匠は、書類を見て――



完全に、固まった。



「専用馬車、5台……?」



「はい!」



リザが、誇らしげに言う。



「これで、移動が楽になりますわ!」



「専属シェフ、10名……?」



「はい!」



マンディが、頷く。



「これで、いつでも美味しい食事が食べられます!」



「……」



師匠の魂が――



抜けた。



「さらに――」



リザが、続ける。



「専属メイドを20名――」



「ちょっと待って」



師匠が、必死に止める。



「これ以上は……」



「ご安心ください!」



リザが、にこやかに言う。



「全て、王国が費用を負担してくれます!」



「費用の問題じゃなくて……」



「師匠」



マンディが、真剣な表情で言う。



「あなたは、もっと――」



「自分を大切にしてください」



「……」



師匠が、小さく呟いた。



「大切にしてるわよ……」



「だから、静かに暮らしたいの……」



「え?」



リザが、きょとんとする。



「何か、おっしゃいましたか?」



「……何でもないわ」



師匠が、力なく微笑んだ。





僕は――



その様子を見て――



心の中で叫んだ。



(これ、完全に……逆だ!)



師匠を楽にしようとすればするほど――



逆に、師匠を縛ってしまう。



これが――



善意の牢獄。



「……」



(どうすれば、師匠を……)



答えは――



まだ、見つからなかった。





――第6章第4節、完。



ルークは、師匠を休ませようとした。



だが――



リザが、即座に却下した。



「師匠は王国の宝です」



「休ませるわけにはいきません」



マンディも、同意した。



「師匠は、みんなの希望です」



セラも、政治的理由で反対した。



そして――



『師匠サポート強化計画』が、作成された。



専用馬車5台。



専属シェフ10名。



専属メイド20名。



すべて――



善意100%。



だが――



それが、師匠を――



もっと、縛っていく。



ルークの努力は――



完全に、逆効果だった。



善意の牢獄は――



どんどん、強固になっていく。


最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

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それでは次回の更新をお楽しみに

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