第4節:セラの試練
(セラ視点)
師匠を――守らなければならない。
私は――そう決めた。
あの卒業式から――もう、一週間が経った。
師匠は――王家の静養地という名目で――辺境へ追いやられた。
(これは――)(間違いなく、陰謀だ)
私は――皇子として、宮廷の裏側を知っている。
優秀すぎる者は――恐れられる。
強すぎる者は――排除される。
師匠は――その両方だった。
(だから――)(私が、守る)
私は――拳を握る。
師匠は――私の、恩人だ。
声の演技を――魔法だと勘違いして。でも――それでも、私は学んだ。
本当に大切なことを。
(師匠を――)(迎えに行く)(必ず)
そのために――私は、強くならなければならない。
誰にも、負けないほどに。
王族の権力ではなく――自分の力で。
(だから――)(今は、修行だ)
私は――北へ、向かった。
* * *
天空試練の塔に到着したのは――その日の夜だった。
雲を突き抜ける、巨大な塔。白い石でできた、美しい建造物。頂上は――見えないほど、高い。
「ここが……」
私は、息を呑んだ。
(すごい魔力だ……)
塔全体から――濃密な魔力が、溢れ出している。
「お前が――」
突然、声がした。
振り向くと――一人の女性が、立っていた。
年齢は――三十代くらいだろうか。長い銀髪。鋭い青い瞳。そして――全身から、圧倒的な魔力を放っていた。
「新しい挑戦者か?」
女性が、私を見る。
「あの――」
私は、答える。
「魔導師アルカナ様を、探しています」
「修行を――お願いしたくて」
「アルカナ?」
女性が、微笑む。
「それは、私だ」
「え!?」
私は、驚く。
「あなたが、アルカナ様!?」
「ああ」
アルカナが、頷く。
「天空試練の塔の管理人――魔導師アルカナだ」
「よろしく、お願いします!」
私は、深く頭を下げた。
「ふむ……」
アルカナが、私を値踏みする。
「礼儀は、悪くない」
「だが――」
「この塔に来る者は――みな、試練を受けなければならない」
「試練……?」
「ああ」
アルカナが、塔を指す。
「この塔は――百層ある」
「それぞれの階に――試練が待っている」
「頂上まで、辿り着けたら――私が、教えてやろう」
「……わかりました」
私は、覚悟を決めた。
(師匠――)(見ていてください)(私――)(必ず、登ります)
* * *
塔の中は――広かった。
白い石の壁。高い天井。そして――中央には、上へと続く階段があった。
「では――」
アルカナが、言う。
「始めろ」
「第一層から――頂上を、目指せ」
「はい!」
私は、階段を登り始めた。
第一層。そこには――魔法陣が、あった。
床に描かれた、複雑な紋様。
「これは……」
私が、近づくと――魔法陣が、光った。
そして――火球が、現れた。
「!」
私は、咄嗟に横に跳ぶ。
火球が――私のいた場所を、通過する。
(魔法の試練……!)
私は、魔法を唱える。
「氷槍よ、貫け!」
氷の槍が――火球に、向かっていく。
ガキィン。火球が、砕ける。
「やった……」
私は、息を整える。
(師匠の教え――)(思い出せ)(冷静に、対処する)
そして――私は、次の階へ進んだ。
* * *
第十層。第二十層。第三十層。
試練は――どんどん、難しくなっていった。
魔法陣の数が、増える。魔法の威力が、強くなる。
そして――第五十層では――魔獣まで、現れた。
「くっ……」
私は、必死に戦う。魔法を、唱える。剣を、振るう。師匠から学んだ――戦術を、駆使する。
そして――なんとか、突破した。
「ふう……」
私は、疲れていた。
(まだ、半分……)(でも――)(諦めない)(師匠が――)(見ているから)
そう思いながら――私は、さらに登った。
* * *
第七十層に到着したのは――三日後だった。
途中――何度も休んだ。でも――諦めなかった。
そして――第七十層で――意外なものが、あった。
「人……?」
部屋の中央に――一人の少女が、倒れていた。
年齢は――十歳くらいだろうか。傷だらけで――意識を失っている。
「大丈夫ですか!」
私は、駆け寄る。
「しっかりして!」
少女を、抱き起こす。
「う……」
少女が、うめく。
「助けて……」
「大丈夫です」
私は、言う。
「今、治癒魔法を――」
その時――部屋の奥から、気配がした。
振り向くと――巨大な魔獣が、いた。
狼型の魔獣。高さは、三メートル以上。その目は――赤く光り――殺気を放っていた。
「グルルルル……」
魔獣が、唸る。
(この子を――)(襲ったのは……!)
私は、少女を安全な場所に移す。
「待っていてください」
「すぐに――助けますから」
私は、魔獣を見た。
(この魔獣を――)(倒さないと)
魔獣が――襲いかかってくる。巨大な爪が――私に迫る。
「はっ!」
私は、横に跳ぶ。
爪が――床に、叩きつけられる。
ドガァ。床が、砕ける。
(速い……!)(そして、強い……!)
私は、反撃する。
「氷槍よ、貫け!」
氷の槍が――魔獣に、向かっていく。
しかし――魔獣は、それを避けた。
「くっ!」
(避けられた……!)
再び――魔獣が、襲いかかってくる。私は、剣で受ける。
ガキィィン。しかし――力が、違いすぎた。
ドガァァン。私は、吹き飛ばされた。
「がはっ!」
壁に、叩きつけられる。全身が、痛い。
(ああ……)(このままじゃ――)(あの子が……!)
魔獣が――少女に、近づいていく。その爪が――少女に、振り下ろされようとする。
「やめて!」
少女が、叫んだ。その声に――私は、立ち上がった。
(守らないと……)(あの子を……)
「やめろおおおっ!!」
私は――考えるより先に、動いていた。全速力で、走る。少女の前に――飛び込む。
そして――魔獣の爪が――私を、直撃した。
ドガァァァン。激痛。全身の骨が、軋む。血が――溢れる。
(ああ……)(でも――)(守れた……)(あの子を……)
意識が――遠のいていく。
(師匠……)(ごめんなさい……)(私……)(まだ……弱かった……)
そして――意識が、途切れかけた、その時。
光が――
降り注いだ。
「――!?」
私の体が――光に、包まれる。
温かい。優しい。でも――圧倒的な力を、感じる。
『よくやった、子よ』
声が――聞こえた。女性の、優しい声。
『あなたは――』
『幼き者を守るために――』
『自分を犠牲にした』
『それは――』
『高潔な行い』
『だから――』
『私の加護を、授けよう』
「あなたは……?」
私は、訊ねた。
『私は――』
『女神ルミナス』
「ルミナス……!」
私は、驚く。
『そう』
光が、さらに強くなる。
『あなたに――』
『知恵の加護を』
『予知の力を』
『授ける』
「ありがとうございます……」
私は、涙を流した。
(私……)(力を、いただいたんだ……)
光が――私の傷を、癒していく。
そして――私の額に――光の紋章が、浮かび上がった。
* * *
「――っ!」
私は、立ち上がった。
傷は――完全に、治っていた。それどころか――頭が、クリアになる。力が、溢れてくる。
「これが……」
私は、額を触る。額には――淡い光の紋章が、浮かんでいる。
「ルミナスの、加護……」
「すごい……」
少女が、呟く。
「あなた……」
「大丈夫です」
私は、微笑む。
「もう――負けません」
私は、魔獣を見る。
(この力なら――)(守れる)(この子を)
「下がっていてください」
私は、魔獣に向かった。
魔獣が――再び、襲いかかってくる。
「――!」
その瞬間――私の頭に、映像が流れた。
魔獣の、次の動き。右から、爪を振るう。そして、左足で――蹴りを、放つ。
(これが――)(予知の力……!)
私は、その映像通りに動いた。右の爪を、避ける。左足の蹴りを、かわす。
「氷槍よ、貫け!」
魔獣の動きが止まった瞬間――氷の槍を、放つ。
ドガァン。氷の槍が――魔獣の胸に、直撃した。
「グオオオオッ!」
魔獣が、吠える。しかし――まだ、倒れない。
(もう一撃……!)
私は、魔法を唱える。
「凍てつく大地よ――」
「万物を、氷結せよ!」
「氷結牢獄!」
巨大な氷の檻が――魔獣を、包み込む。
そして――魔獣は――氷の中に、閉じ込められた。
ガキィ、ガキィ、ガキィ。氷が――魔獣を、締め付ける。
そして――魔獣は――動かなくなった。
「やった……」
私は、呟く。
(倒せた……)(ルミナスの加護で……)
「すごい!」
少女が、駆け寄ってくる。
「ありがとうございます!」
「命を、救ってくれて!」
「いえ」
私は、首を振る。
「これは――当然のことです」
「あなたは……?」
少女が、訊ねる。
「私は――」
私は、答える。
「……セラです」
「ただの、修行者です」
(皇子だなんて――)(言えない)
「セラさん……」
少女が、微笑む。
「私、エミリアって言います」
「ありがとうございました」
「エミリアさん」
私も、微笑んだ。
(守れた……)(誰かを……)
光の紋章が――静かに、輝いていた。
* * *
それから――私は、さらに塔を登った。
ルミナスの加護を受けた私は――日に日に、強くなった。予知の力で――敵の動きが、見える。知恵の加護で――最適な戦術が、わかる。
そして――第百層。頂上に、到着した。
「よく来た」
アルカナが、待っていた。
「お前――百層すべてを、突破したか」
「はい」
私は、頷く。
「そして――」
アルカナが、私の額を見る。
「ルミナス様の、加護まで受けたのか」
「知恵の加護……」
「素晴らしい」
「ありがとうございます」
私は、頭を下げた。
「さて――」
アルカナが、言う。
「約束通り――お前を、教えよう」
「魔法と、戦術を」
「よろしく、お願いします!」
私は、力強く頷いた。
* * *
それから――私は、アルカナの下で修行を続けた。
毎日――朝から晩まで、魔法の訓練。高等魔法。複合魔法。戦術魔法。すべてを、学んだ。
「いいぞ、セラ」
アルカナが、言う。
「お前――センスがある」
「ルミナス様の加護もあって――驚くほど、成長が早い」
「ありがとうございます」
私は、微笑む。
(師匠――)(私――)(少しずつ、強くなってます)
そして――三ヶ月が、過ぎた。
ある日。アルカナが、言った。
「セラ」
「お前は――もう、私が教えることはない」
「え……」
私は、驚く。
「もう……いいんですか?」
「ああ」
アルカナが、頷く。
「お前は――すでに、一流の魔導師だ」
「いや――」
アルカナが、微笑む。
「賢者だな」
「賢者……」
私は、その言葉を噛み締める。
(賢者……)(私が……?)
「ああ」
アルカナが、頷く。
「お前の知恵と、魔法は――誰にも、負けない」
「それに――」
アルカナが、私の額を指す。
「ルミナス様の加護がある」
「お前は――必ず、偉大な賢者になる」
「……ありがとうございます」
私は、涙を流した。
「アルカナ様」
私は、言う。
「あなたは、私の技の師匠です」
「でも――」
私は、微笑む。
「心の師匠は――別にいます」
「……そうか」
アルカナが、頷く。
「その師匠は――幸せ者だな」
「お前のような弟子を、持てて」
「いえ」
私は、首を振る。
「私が――幸せ者です」
「師匠に、出会えて」
* * *
そして――半年が、経った。
別れの日。
「アルカナ様」
私は、深く頭を下げる。
「ありがとうございました」
「礼には及ばん」
アルカナが、言う。
「お前は――立派な魔導師になった」
「いや――賢者だ」
「胸を張って――師匠の元へ、戻れ」
「はい!」
私は、涙を流した。
(師匠――)(私――)(強くなりました)(賢者に――)(なれました)(必ず――)(会いに行きます)
光の紋章を、額に――私は、歩き出した。
師匠の元へ。仲間の元へ。新しい力を携えて。
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