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ただの悪役令嬢"声優"は静かに暮らしたい ― 超有能な勘違い弟子令嬢から溺愛されて逃げられません ―  作者: 荒瀬 維人
第4章:弟子たちの試練と覚醒

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第2節:リザの試練

(リザ視点)


師匠を――守らなければ。


私は――そう決めた。


あの卒業式の日から――もう、三日が経った。


師匠は――王家の静養地という名目で――辺境へ送られた。


(あれは――)(陰謀だ)(追放だ)


セラの言葉が――頭から、離れない。


師匠は――優秀すぎた。強すぎた。目立ちすぎた。


だから――遠ざけられた。


(そんなの――)(許せない)


私は――拳を握る。


(師匠を――)(迎えに行く)(必ず)


そのために――私は、強くならなければならない。


圧倒的に、強く。


王家も、貴族も――誰も、逆らえないほどに。


そして――師匠を、守る。


(だから――)(今は、修行だ)


私は――東へ、向かった。


*  *  *


王都闘技場に到着したのは――その日の夕方だった。


石造りの巨大な円形闘技場。観客席には、数千人が入るだろう。中央の闘技場では――何人もの剣士が、稽古をしていた。


「すごい……」


私は、息を呑んだ。


(ここが――)(剣聖エリシアの、闘技場……)


入口で、受付の男性に声をかける。


「あの――」


「剣聖エリシア様に、お会いしたいのですが」


「エリシア様?」


男性が、私を見る。


「君、新入りか?」


「はい」


私は、頷く。


「修行に、来ました」


「ふむ……」


男性が、私を値踏みする。


「エリシア様は――誰でも教えるわけじゃない」


「まずは――入門試験を受けてもらう」


「入門試験……?」


「ああ」


男性が、闘技場を指す。


「あそこで――試験官と、戦ってもらう」


「勝てば、入門許可」


「負けたら――帰ってもらう」


「……わかりました」


私は、覚悟を決めた。


(師匠――)(見ていてください)


*  *  *


闘技場の中央に、立つ。


観客席には――数十人の剣士たちが、見物している。


「新入りか」


「また、すぐ負けるんだろうな」


「エリシア様の試験は、厳しいからな」


そんな声が、聞こえてくる。


(気にしない――)


私は、剣を構える。


(私は――)(師匠の、弟子)(負けるわけには、いかない)


そして――試験官が、現れた。


「よろしく」


若い女性の剣士だった。


短い銀髪、鋭い目つき。細身だが――その構えには、一切の隙がない。


「あなたが、試験官……?」


「ああ」


女性が、頷く。


「私はセリア」


「エリシア様の、一番弟子だ」


「一番弟子……!」


私は、驚く。


(ということは――)(かなり、強い……?)


「準備はいいか?」


セリアが、訊ねる。


「はい」


私は、剣を構えた。


「では――」


セリアが、動く。


「始める!」


速い。


一瞬で――彼女の剣が、私の目の前にあった。


「――っ!」


私は、咄嗟に剣で受ける。


キィン、と金属音。


「ほう」


セリアが、微笑む。


「反射神経は、悪くない」


「でも――」


彼女の剣が、角度を変える。


「それだけじゃ、足りない!」


下段からの斬り上げ。


私は――師匠の教えを思い出す。


(相手の動きを、読む)(剣先ではなく、肩を見る)


私は、左に跳ぶ。


剣が――私のいた場所を、通過する。


「避けた!?」


セリアが、驚く。


「もらった!」


私は、反撃する。


横薙ぎの一撃。


しかし――セリアは、軽々と跳び上がり――私の頭上を飛び越えた。


「甘い!」


背後から、斬りかかってくる。


「くっ!」


私は、振り向きながら剣で受ける。


ガキィン。


強い衝撃。


腕が、痺れる。


(この人――)(本当に、強い……!)


「お前――」


セリアが、真剣な顔になる。


「誰に、習った?」


「……師匠に」


私は、答える。


「素晴らしい師匠に」


「ほう」


セリアが、ニヤリと笑う。


「なら――本気で、行くぞ!」


彼女の剣が――光った。


「流星剣・一閃!」


無数の斬撃が――私に、降り注ぐ。


「――っ!」


私は、必死に受ける。


ガキン、ガキン、ガキン。


しかし――防ぎきれない。


最後の一撃が――私の剣を、弾き飛ばした。


カラン、と剣が地面に落ちる。


「……終わりだ」


セリアの剣先が――私の喉元に、突きつけられる。


「……負けました」


私は、静かに言った。


*  *  *


観客席から――拍手が、起こった。


「おお、すごい!」


「新入りなのに、あそこまで戦えるとは!」


「セリアの流星剣を、受け切ったぞ!」


私は――呆然としていた。


(負けた……)(また――)(力が、足りなかった……)


「よくやった」


セリアが、手を差し伸べる。


「お前――合格だ」


「……え?」


私は、驚く。


「負けたのに……?」


「負けたが――」


セリアが、微笑む。


「お前の剣は――美しかった」


「誰かを守るための――優しい剣だった」


「……」


「それに――」


セリアが、私の目を見る。


「お前の目には――諦めない光が、ある」


「そんな目をした剣士は――必ず、強くなる」


「……ありがとうございます」


私は、涙が出そうになった。


(師匠……)(私――)(頑張ります)


*  *  *


そして――私は、剣聖エリシアに会った。


「ふむ」


白髪の女性が――私を見ている。


年齢は、六十を超えているだろう。しかし――その目は、若者のように鋭い。


そして――その佇まいには――圧倒的な強さが、滲み出ていた。


「お前が――」


エリシアが、言う。


「新入りの、リザか」


「はい」


私は、緊張しながら答える。


「セリアから、聞いた」


エリシアが、立ち上がる。


「お前は――守るための剣を、持っている」


「それは――良いことだ」


「しかし――」


エリシアが、私の目を見る。


「お前の剣は――まだ、迷っている」


「迷って……?」


「ああ」


エリシアが、頷く。


「お前は――誰を守りたいのか――まだ、わかっていない」


「!」


私は、ハッとした。


(誰を……守りたい……?)(師匠……?)(仲間……?)(それとも……)


「それを見つけるのが――」


エリシアが、言う。


「お前の、修行だ」


「……はい」


私は、頷いた。


*  *  *


それから――三ヶ月が、過ぎた。


毎日――朝から晩まで、剣の稽古。


エリシア様は、厳しかった。


「違う!」


「もっと、腰を落とせ!」


「剣は、心の延長だ!」


「迷いがあれば、剣も迷う!」


何度も――何度も――叱られた。


でも――その厳しさの裏には――優しさが、あった。


「よくやった」


「少し、休め」


「お前は――強くなっている」


そんな言葉が――私を、支えてくれた。


そして――私は、気づいた。


(エリシア様は――)(師匠と、似ている)(厳しいけど――)(誰よりも、弟子を思っている)


(だから――)(私も――)(頑張れる)


*  *  *


そして――ある日。


闘技場に――異変が起きた。


「大変だ!」


セリアが、走ってくる。


「魔獣の群れが――闘技場に、向かってきてる!」


「何!?」


エリシア様が、立ち上がる。


「数は?」


「五十体以上!」


「しかも――」


セリアが、焦った様子で言う。


「A級魔獣も、混じってます!」


「……厄介だな」


エリシア様が、剣を取る。


「弟子たちを、避難させろ」


「私が、食い止める」


「待ってください!」


私が、叫ぶ。


「私も、戦います!」


「お前は――」


エリシア様が、私を見る。


「まだ、早い」


「いいえ!」


私は、剣を構える。


「私は――もう、逃げません!」


「誰かを守るために――戦います!」


「……」


エリシア様が、微笑んだ。


「よかろう」


「ただし――無理はするな」


「はい!」


私は、頷いた。


*  *  *


闘技場の外。


魔獣の群れが――押し寄せてきた。


狼型、熊型、蛇型。様々な魔獣が――咆哮を上げている。


「来るぞ!」


エリシア様が、叫ぶ。


「構えろ!」


私たちは――剣を構えた。


そして――魔獣が、襲いかかってくる。


「はあっ!」


私は、斬りかかる。


一体、二体、三体。師匠の教えを――エリシア様の教えを――思い出しながら、戦う。


(動きを、読む)(無駄な動作を、しない)(呼吸を、整える)


次々と――魔獣を、倒していく。


「やるな、リザ!」


セリアが、叫ぶ。


「成長したな!」


「ありがとうございます!」


私は、笑顔で答えた。


しかし――その時。


「きゃあっ!」


若い女性の悲鳴が、聞こえた。


振り向くと――闘技場の新入りの少女が――A級魔獣に、襲われていた。


巨大な熊型の魔獣。その爪が――少女に、振り下ろされようとしている。


「――っ!」


私は――考えるより先に、動いていた。


全速力で、走る。


(間に合え!)(間に合え!)


「はあああっ!」


私は、少女の前に飛び込み――剣で、魔獣の爪を受け止めた。


ガギィィィン。


凄まじい衝撃。腕が、軋む。


「逃げて!」


私は、少女に叫ぶ。


「早く!」


「は、はい!」


少女が、逃げる。


(よかった……)


しかし――その隙に。


魔獣の、もう一方の爪が――私の脇腹に、突き刺さった。


「――っ!!」


激痛。血が、溢れる。


(ああ……)(やっぱり……)(私は……)(まだ……弱い……)


視界が――霞んでいく。体が――崩れ落ちる。


(師匠……)(ごめんなさい……)(私……)(まだ……)(強くなれなかった……)


そして――意識が、途切れかけた、その時。


光が――


降り注いだ。


「――!?」


私の体が――光に、包まれる。


温かい。優しい。それでいて――圧倒的な力を、感じる。


『よくやった、子よ』


声が――聞こえた。女性の、優しい声。


『あなたは――』


『誰かを守るために――』


『自分を犠牲にした』


『それは――』


『尊い行い』


『だから――』


『私の加護を、授けよう』


「あなたは……?」


私は、訊ねた。


『私は――』


『女神ルミナス』


「ルミナス……!?」


『そう』


光が、さらに強くなる。


『あなたに――』


『光の加護を』


『守護の力を』


『授ける』


「……ありがとうございます」


私は、涙を流した。


(私……)(守れたんだ……)(あの子を……)


光が――私の傷を、癒していく。


そして――私の剣が――光り輝いた。


*  *  *


「――っ!」


私は、立ち上がった。


傷は――完全に、治っていた。それどころか――体が、軽い。力が、溢れてくる。


「これが……」


私は、剣を見る。


剣が――淡い光を、纏っている。


「ルミナスの、加護……」


「リザ!?」


セリアが、驚いた顔で駆け寄る。


「お前、傷は!?」


「大丈夫です」


私は、微笑む。


「それより――」


私は、A級魔獣を見る。


「あの魔獣を――倒さないと」


「でも、A級は――」


「大丈夫です」


私は、剣を構える。


(この力なら――)(守れる)(みんなを)


「はあああっ!!」


私は、魔獣に斬りかかる。


剣が――光の軌跡を描く。


「聖光剣・断罪!」


一閃。


光の剣が――魔獣を、両断した。


「――!?」


魔獣が――光に包まれ――消滅する。


「すごい……」


セリアが、呟く。


「A級魔獣を――一撃で……!?」


私は――自分でも、驚いていた。


(これが――)(ルミナスの、加護……)(こんなに――)(強くなれるなんて……)


「リザ!」


エリシア様が、駆け寄ってくる。


「お前――今の、力は……」


「女神ルミナスの、加護です」


私は、答える。


「私――誰かを守ることが――できました」


「だから――力を、いただきました」


「……そうか」


エリシア様が、微笑む。


「お前は――本当の強さを、見つけたんだな」


「はい」


私は、頷いた。


(私の強さは――)(誰かを守ること)(そして――)(その力は――)(師匠が、教えてくれた)


(だから――)(私は――)(もっと強くなる)(師匠のために)(みんなのために)


光が――私を、包んでいた。


*  *  *


それから――私は、さらに修行を続けた。


ルミナスの加護を受けた私は――日に日に、強くなった。


エリシア様も、驚いていた。


「お前――もう、私が教えることは、ない」


「いえ」


私は、首を振る。


「まだまだ、学びたいです」


「エリシア様――あなたは、私の技の師匠です」


「でも――」


私は、微笑む。


「心の師匠は――別にいます」


「……そうか」


エリシア様が、頷く。


「その師匠は――幸せ者だな」


「お前のような弟子を、持てて」


「いいえ」


私は、首を振る。


「私が――幸せ者です」


「師匠に、出会えて」


*  *  *


そして――半年が、経った。


別れの日。


「エリシア様」


私は、深く頭を下げる。


「ありがとうございました」


「礼には及ばん」


エリシア様が、言う。


「お前は――立派な剣士になった」


「胸を張って――師匠の元へ、戻れ」


「はい!」


私は、涙を流した。


(師匠――)(私――)(強くなりました)(必ず――)(会いに行きます)


光の剣を、背に――私は、歩き出した。


師匠の元へ。仲間の元へ。新しい力を携えて。

最後までありがとうございました!


楽しんでいただけたら、

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それでは次回の更新をお楽しみに

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