第1節:卒業、そして誤解
(リザ視点)
王立騎士学園の卒業式――それは、華やかな式典だった。
広大な講堂。白い石柱。天井からは、美しいシャンデリアが下がっている。
そして――壇上には、優秀な卒業生たちが並んでいた。
私は――観客席の最前列に、座っていた。マンディとセラも、隣にいる。
(師匠……)
壇上に――師匠が立っている。
黒いドレス。長い黒髪。そして――その立ち姿は、誰よりも優雅だった。
(本当に――)(卒業してしまうんだ……)
私は――少し、寂しかった。
師匠は――学園中で有名だった。黒薔薇の貴婦人。優雅で、強く、そして――誰も近づけない。
でも――私たち三人だけは、知っている。師匠の、本当の姿を。
弟子想いで、優しくて――そして、たまに抜けているところも。
(師匠……)(頑張ってください)
* * *
「それでは――」
学園長が、壇上で言う。
「今年度の主席卒業生を――発表いたします」
会場が――静まり返る。
「シルヴィア・ローゼンベルク!」
「!」
私は――息を呑んだ。
会場が――どよめく。そして――拍手が、鳴り響いた。
師匠が――ゆっくりと、前に出る。
黒いドレス。長い黒髪。そして――その立ち姿は、まるで貴族のよう。
(師匠……!)(やった……!)
私は――嬉しかった。隣では、マンディとセラも――拍手している。
「シルヴィア・ローゼンベルク君」
学園長が、微笑む。
「君は――この学園始まって以来の――最優秀の成績で、卒業します」
「光栄です」
師匠が、優雅に頭を下げる。
(当然だわ……)(師匠は、誰よりも優秀なんだから)
「そして――」
学園長が、続ける。
「その才能を――さらに伸ばしてもらうため」
「王家が――特別な栄誉を、用意しました」
「!」
会場が、ざわめく。
「王家の……?」
「何だ、何だ?」
私も――驚く。
(王家が……!?)
「シルヴィア・ローゼンベルク君」
学園長が、厳かに言う。
「君には――アルトリア辺境伯の屋敷にて」
「課外学習を受けていただきます」
「アルトリア辺境伯……」
会場が――また、ざわめく。
「あそこは――」
「王家の静養地だ……」
「選ばれた者しか、行けない……」
(すごい……!)
私は、感動する。
(師匠が――王家に認められた……!)
「期間は――半年」
学園長が、続ける。
「辺境伯の下で――実戦的な政務と、騎士道を学んでいただきます」
「……光栄です」
師匠が――また、優雅に頭を下げる。
でも――その表情は、少し――こわばっているように、私には見えた。
* * *
(しのぶ視点)
(やばい)
私は――内心、叫んでいた。
(やばい、やばい、やばい!)
王家の静養地? 課外学習? 半年!?
(静かに暮らしたかっただけなのに……!)
(何でこんなことに……!)
でも――表情には、出せない。周りは――私を、見ている。
「光栄です」
私は――優雅に、頭を下げる。
(内心は――)(大パニックなんですけど……!)
* * *
式が終わった後。
中庭で――三人の弟子が、待っていた。
リザ、マンディ、セラ。みんな――嬉しそうな顔で。
「師匠!」
リザが、駆け寄ってくる。
「おめでとうございます!」
「主席卒業だなんて――さすがですわ!」
「師匠、すごいよ!」
マンディも、笑顔で言う。
「王家の静養地だって!」
「選ばれた人しか、行けないんだよね!」
「……おめでとうございます」
セラも――珍しく、微笑んでいる。
「師匠は――やはり、特別な方だ」
「みんな……」
私は、微笑む。
(ありがとう……)
でも――内心では。
(助けて……)(私――ただの声優なのに……)(何で王家とか出てくるの……)
「それで、師匠」
リザが、訊ねる。
「いつ、出発なんですか?」
「明後日よ」
私は、答える。
「すぐですわね……」
リザが、少し寂しそうに言う。
「うん……」
マンディも、頷く。
「半年か……」
「長いな……」
「……」
セラが、黙っている。何か――考えているような、表情。
「でも――」
私は、三人を見る。
「あなたたちも――これから、忙しくなるでしょう?」
「卒業したら――冒険者として、活動するんでしょう?」
「そうですけど……」
リザが、言う。
「でも――師匠がいないと……」
「大丈夫よ」
私は、微笑む。
「あなたたちは――もう、十分強いわ」
「私がいなくても――きっと、やっていける」
「……」
三人が――複雑な表情をする。
「それじゃ――」
私は、言う。
「半年後――また、会いましょう」
「……はい」
三人が――頷いた。
* * *
(リザ視点)
師匠が――去っていった。
私たち三人は――中庭に、残されていた。
「……おかしい」
セラが――突然、言った。
「え?」
私は、振り向く。
「何が、おかしいの?」
「すべてだ」
セラが――真剣な顔で言う。
「主席卒業は――わかる」
「師匠は、優秀だからな」
「でも――」
セラの目が、鋭くなる。
「王家の静養地への派遣――これは、おかしい」
「おかしい……?」
マンディが、首を傾げる。
「だって――すごい名誉なんでしょ?」
「表向きは、な」
セラが、言う。
「でも――考えてみろ」
「半年間――辺境に――一人で」
「これは――」
セラが、低い声で言う。
「追放だ」
「!」
私とマンディが――驚く。
「追放……!?」
「ああ」
セラが、頷く。
「王家の静養地――聞こえはいいが」
「要するに――都から、遠ざけるということだ」
「でも――」
私は、反論する。
「師匠は――何も悪いことしてないわ!」
「それが――問題なんだ」
セラが、言う。
「師匠は――強すぎる」
「優秀すぎる」
「そして――目立ちすぎた」
「……」
「王家や――貴族たちにとって」
セラが、続ける。
「そういう存在は――脅威なんだ」
「だから――」
セラの拳が、握られる。
「遠くに追いやる」
「名誉という名目で」
「そんな……」
私は、愕然とする。
「師匠が――追放されたなんて……」
「僕――」
マンディが、震える声で言う。
「師匠を――守らなきゃ……」
「ああ」
セラが、頷く。
「私たちが――守るんだ」
「でも――」
私は、言う。
「どうやって……?」
「強くなる」
セラが――真っ直ぐに言う。
「私たちが――圧倒的に、強くなる」
「そして――師匠を、迎えに行く」
「!」
「王家だろうが、貴族だろうが――」
セラの目が、燃えている。
「私たちが――力で――師匠を、守る」
「……そうだ」
私も――決意する。
「私――強くなる」
「師匠を――守れるくらい」
「僕も!」
マンディも、拳を握る。
「僕も――強くなる!」
「師匠を――絶対、守る!」
「……よし」
セラが、頷く。
「それじゃ――決めよう」
「私たちは――半年間――それぞれ、別の場所で修行する」
「そして――半年後――必ず、師匠を迎えに行く」
「おう!」
三人の手が――重なった。
* * *
翌日。
私たちは――それぞれの修行先を、決めた。
「私は――王都闘技場に行く」
私は、言う。
「そこには――剣聖エリシアがいる」
「彼女の下で――剣を、極める」
「僕は――ダークフォレスト・ダンジョンだ」
マンディが、言う。
「ドワーフの鍛冶師ギムリに――拳の鍛え方を、学ぶ」
「私は――天空試練の塔に行く」
セラが、言う。
「魔導師アルカナから――魔法と、戦術を学ぶ」
「……よし」
私は、頷く。
「それじゃ――半年後」
「必ず――師匠を、迎えに行こう」
「ああ!」
三人の声が――重なった。
* * *
(しのぶ視点)
明後日。
私は――馬車に乗って、都を出た。
「ふう……」
馬車の中で――私は、ため息をつく。
(半年間……)(辺境で、課外学習……)
(正直――)(面倒くさい……)
でも――仕方ない。断れる雰囲気じゃなかった。
(まあ……)(辺境なら――)(静かかもしれない)
(王都みたいに――)(騒がしくないかも)
(それなら――)(悪くない……かな)
私は――そう思いながら、窓の外を見た。
都が――だんだん、遠くなっていく。
(リザ、マンディ、セラ……)(みんな――)(元気でね)
(半年後――)(また、会いましょう)
私は――そう思いながら、目を閉じた。
(まさか――)(あの三人が――)(とんでもない勘違いをしているなんて――)
(この時の私は――)(知る由も、なかった……)
* * *
――Episode 1、完。
卒業式。主席卒業。そして――王家の静養地への課外学習。
しのぶにとっては――静かな半年のはずだった。
でも――三人の弟子たちは――誤解した。
これは――追放だと。陰謀だと。
そして――三人は、決意する。
強くなって――師匠を、迎えに行く。
リザは、東の王都闘技場へ。剣聖エリシアの下で、剣を極める。
マンディは、南のダークフォレスト・ダンジョンへ。ドワーフの鍛冶師ギムリから、拳の真髄を学ぶ。
セラは、北の天空試練の塔へ。魔導師アルカナから、魔法と戦術を学ぶ。
誤解から始まった――試練の旅。
そして――半年後。
彼らが手にするのは――ルミナスの加護。異常な強さ。
そして――師匠を守るという、覚悟。
物語は――三つに、分かれる。
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